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虜になる人続出…“魔性”のガンプラ『Zガンダム』の魅力 2人のモデラーが表現した“正反対”の作風へのこだわり
『機動戦士Zガンダム』のヒロイン、エマ・シーンがZガンダムに搭乗
「ネットで検索すると、『アムロ専用』や『シャア(クワトロ)専用』のZガンダムの作例をいくつもあったのですが、他人と同じ物は作りたくなかったので、ざっと調べた限り作例のなかった『エマ中尉専用機』を考えて作ることにしました」
他のモデラーとは異なるオリジナル機をという想いから、『機動戦士Zガンダム』のヒロイン、エマ・シーンの専用機としてのZガンダムを構想。『リック・ディアス』『ガンダムMk-II』搭乗のイメージが強いエマが、Zガンダムに乗る設定を考えた。
「アナハイムがZガンダム量産化へのデータ取りのために修理用予備パーツを利用して機体を制作。クワトロは『金色じゃないから』、アポリーは「リックディアスの方に誇りを感じる」という理由で固辞したため、エマの搭乗機となりました。
カミーユ機のフライングアーマーが破壊されて予備パーツが欠品したため急遽Gデイフェンサーをバックパックとして流用。整備・修理・データ共有などの点からアーガマでの運用が効率的であるとアストナージが進言するが、ヘンケンがゴネたためにラーディッシュの艦載機となる。という設定を考えました。ガンプラを作るときにいろいろ妄想するの好きなんですよね(笑)」
『機動戦士Zガンダム』の登場人物の心境まで反映させた『エマ・シーン専用機』だが、Zガンダム特有の“変形”には苦労が多かった。
「Gデイフェンサーと融合させたのですが、旧キットだったのでヒケ処理や合わせ目消しが大変でした。近くで見るとかなり雑です(笑)。ただ、Zガンダムと言えば変形なので、差し替えで強引ではありますが変形できるようにしたところはこだわりました。恐らくMS形態だけで作品を発表していたら、ここまでの反響はなかったと思います」
エマのイメージを投影したるりさんの完成作は、発表すると多くの人たちから「やめないで欲しい」「次の作品が見たい」といった声も上がった。
「たくさんの人に温かい言葉を頂き感謝しています。それらの声をいただき、やめるのやめようかなぁなんて思ったりもしています(笑)。この先どうなるか分かりませんが、生活が落ち着いたらまた何か作りたいですね」
カスタムではなく“ガンプラらしい”リアルさを追求したZガンダム
「小学校の高学年のころに、近所の模型屋のガラスケースに飾ってあった地元の名人の作例がかっこよかったんです。ガンダムMk2やZガンダムだったのですが、マーキングや墨入れや汚し塗装がバッチリ決まってリアルに感じました。以来、『いつか再現したい』とずっと思っていました。現在の模型誌に掲載されるような現代のSF考証のもとのキレイなガンプラはなく、ガンプラブーム当時のような、派手なハゲョロ(銀の塗料をパーツのエッジになすりつけて、金属の下地が見えているような塗装技法)やマーキング・汚しによる“懐かしいリアルさ”を再現するには旧キットが最適と考えました。値段が安いというのも制作者にとってはうれしい点です」
そんなht5518さんが制作したZガンダムは、ツイッターで「すっごい!めちゃくちゃカッコいい!」「あーコレコレ。リアルタイムでZガンダム見てた私にはこのプロポーションが至高。素晴らしい仕上がりです」といった賞賛のコメントが寄せられた。
「実は、「Zガンダム」は本作で2作目なんです。1作目は自由に改造したため設定から外れてしまい、今回はなるべく設定のプロポーション近づけようとしました。旧キットのマッシブな迫力を残したまま、アニメ設定画に近づけるようにイメージして制作しました」
設定のプロポーションに近づけるために、必要な作業にとても苦労したという。
「ほぼすべてパーツを切り刻み、細かく組み立てて、スマートにしました。ここが最も苦労した点ですね。旧キットは、どうしてもパーツが太目で、スタイルが悪く見えるんです。なので、肩、腕、胸、足などをノコギリで切断して幅を詰めました。巾爪をすることによりスマートになり見栄えが良くなります」
カスタムが主流となり、設定と異なる“カッコイイ想像”を具現化するモデラーが増えるなか、ht5518さんは自身の美学を貫く。
「(ガンプラにおける信念は)自分の考えるカッコ良さにこだわることですかね。他のモデラーさんとは違うんですが、汚し塗装で現実とは異なる“ガンプラらしい”リアルさを追求しています。その根底には、80〜90年代のガンプラブームの頃の熱気の再現という思いがあるからでしょうか。これからも自分らしく作風で制作していきたいと思います」