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“リアル志向”と“癒やし系”、『ジオング』を作ったモデラーのこだわり「同じモビルスーツには見えないけど、どちらもスゴイ」

(写真左)『80%の完成』 制作・写真提供/DON-GURI氏 (写真右)『羊毛ジオング』(もふジオング) 制作・画像提供/takebon氏 (C)創通・サンライズ

(写真左)『80%の完成』 制作・写真提供/DON-GURI氏 (写真右)『羊毛ジオング』(もふジオング) 制作・画像提供/takebon氏 (C)創通・サンライズ

 他を圧倒する規格外の大きさを誇り、脚部がない“80%”の状態で戦場に駆り出され、ガンダムと死闘を繰り広げたジオン公国のモビルスーツ(MS)・ジオング。その特異な存在感でガンプラモデラーからも人気を集めている。DON-GURIさん(@ten10kozo)は、ジオングの内部のハイディティ―ルなメカをメインに細かく表現し、CGやイラストにも見える“リアル志向”なジオングを作り上げた。一方プラモデルではなく、“羊毛フェルト”でガンダムを表現しているtakebonさん(@takebon11)も、特有のやわらかなフォルムを生かした優しく“癒やし系”なジオングを発表。それぞれが作り上げたジオングへのこだわりとは?

写真撮影したとき、モビルスーツがどれだけ生き生きしているかが重要

 DON-GURIさんは、昨年11月に東京で開催された『ガンダムEXPO』で『1/144 RGジオング』を購入。すぐに制作に取り掛からず、さまざまな作例を見てキットの特徴をとらえたうえで、自分でどう作るのかを決めて制作に入った。

「せっかく内部のメカがハイディテールなのに、それを活かした作例がないことに気づき、自分は“内部の構造”をメインにしようと思いました。そして、ジオングといえば完成を前にして『80%の完成』の状態で出陣していったことが有名ですが、そのエピソードを1枚の写真にすることをゴールとして決めました」

 ガンプラの完成をゴールとするモデラーが多い中、DON-GURIさんは「写真作品」をゴールに定め、その写真を撮影するために細部にわたってこだわりぬいた。特にメインと話す“内部の構造”は配色が印象的だ。

「やはりメカ部分の密度をあげるために配色に一番気遣いましたし、色の配分が悩みどころでした。どこを金色、どこを銀色、差し色の赤はどこに使うのか、など作りながら考えて、その場で塗っていきました。
 金色と銀色を主に使い、一部赤や緑のメタリックを使用しています。ガンプラでは、内部フレームやメカ部分に金色や銀色使った作品は多いので、そういった過去の作例の影響を受けた配色かもしれません。構造物としての重なりや情報量を増やすといった意図をもって、一つの部品でも複数の色を使って塗り分けたりしています。とにかくできる限り情報量を増やして、“メカ感”を出すことを意識しました」

 驚くべきことに、この細かい配色はすべてガンダムマーカー(扱いやすく、細かいところまで色が届くので初心者にも人気のペンタイプの塗料)で塗られたもの。「エアブラシを使える制作環境ではないため」と話すが、ここまでのクオリティーに仕上げられたのは、DON-GURIさんのモデラーとしての力量の高さと言えるだろう。ツイッターでも国内から大きな反響が寄せられた。

「正直な気持ち、『なぜこんなに?』という思いがありました。でも、自分の最高のパフォーマンスを出せた作品が、これだけ大きな反響をいただいた。これは、自分の感覚が、人の感性に刺激を与えられるものなのだということ、そして自身の感性の方向性が間違っていないという自信にもつながる結果となりました。
 私の場合は作品完成後の写真撮影がゴールになりますので、写真となったときにそのMSがどれだけ生き生きとしているのかが伝わるように、ガンプラ表現をしているつもりです。できるだけ平面的でなく立体に見えるように作るなどの工夫を模型の段階で行い、写真撮影ではポージングやライティングに徹底的にこだわって、アニメの世界のイメージが投影された作品にすることを心がけています」

「ガンダム表現者」の“羊毛担当”として頑張らねば、という思い

 一方、羊毛フェルトを使って優しい“癒やし系”なジオングを制作したtakebonさん。羊毛フェルトは、リアルな動物や可愛いマスコットなどを思い浮かべるが、やってみるとその扱いやすさに驚いたという。

「思った以上に角も付けられ自由に造形できます。失敗しても『ハサミで切ってやり直し』ができるので、実は結構優秀な素材だと感じています」

 スーパーマリオの1UPキノコから始まった羊毛フェルト作品は、3作目にハロ、さらにザクヘッド、グフと徐々に難易度を上げていった。そして試行錯誤しながら生まれたのが、“羊毛ジオング”だった。

「『もふジオング』とも呼んでいます(笑)、芯材に『ニードルわたわた』という羊毛フェルト専用の素材を使い、表面には羊毛の他『アクレーヌ』というアクリル素材も使っています。また、頭,肩,腕,腰を動かせるよう、針金や磁石を仕込んだ手のかかった作品です」

 その素材ゆえにかわいく見えてしまうが、ファーストガンダムのジオングに忠実に作ろうと心がけたという本作。実際、細かいところにまでこだわりが詰まっている。

「二の腕のメカの露出した部分と、腕の着脱構造を作るのは苦労しました。羊毛フェルトは外側から針を刺して固めていくため、中を空洞にしないといけない腕の着脱構造は特に大変でしたね。関節が数ヵ所動かせる他、腕も着脱可能なので、オールレンジ攻撃のシーンも表現できるのがこだわりです」

 多くのガンプラモデラーがSNSで作品を発表しているが、takebonさんも素材が異なるものの“ガンダム表現者”としての自負を持って作品制作に臨んでいる。

「自分で作るようになってから、プラモデルだけでなくペーパークラフトやダンボール、編み物,折り紙,木といったさまざまな素材でガンダムを表現する方々がいることを知りました。そういった方々の作品を見るたび、『自分も羊毛担当(?)として頑張らねば!』と思いますね」

 そんな同氏の表現者としての信念は、「楽しんで作る」こと。

「『信念』というほど強いものは無いですが、あえて言葉を探すなら『楽しんで作る』でしょうか。ガンプラモデラーさんの細部へのこだわりに比べると自分は甘々だと思います。ただ、羊毛フェルトには『多少甘く作っても、かわいいからOK』というゆるさもあり、自分には相性が良かったのだと思います。これからも羊毛フェルトという素材だからできる『もふカッコいい』作品を作っていきたいです」

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