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モビルスーツの生みの親・大河原邦男デザインのザクをガンプラで再現「まっすぐにこちらを睨む釣り目のザクは鮮烈な印象」

 メカニックデザイナーとして、ガンダムに登場するさまざまなモビルスーツ(MS)を生み出してきた大河原邦男氏。ガンダム誕生から40年が経過した今なお、同氏が手がけたイラストは多くのガンダムファンから愛されている。モデラーの聖なるおでんさん(@holy_oden)もそんな“大河原デザイン”に魅せられたひとり。近作で、大河原氏の代表作のひとつ“ザク”をガンプラで再現した。モデラーに影響を与える“大河原デザイン”の魅力とは?

「タツノコプロ」での経験からくるバリエーションの豊富さが魅力

――モビルスーツの生みの親である大河原邦男氏の手がけた「ザク」をモチーフにした『1/100 MGリアルタイプザク Ver.2(大河原イラストイメージ)』を制作され、SNSで話題になりました。大河原氏デザインのMSとの出会いについてお教えください。
聖なるおでん劇場版の1が公開された前後くらいにガンダムを知り、自分も再放送や劇場版を見てMSのかっこよさと、そのドラマ性にハマりました。特に、劇場版のアートワークについては当時からセンスが良くて、アニメとは違うマーキングやリアルな色で彩色されたモビルスーツは、自分の目にとてもカッコよく映りました。大河原先生、安彦先生(安彦良和氏=『機動戦士ガンダム』のキャラクターデザインなどを担当)は、やはり自分のようなファースト世代、ガンプラブーム世代にとっては神のような存在です。

――「タツノコプロ」出身である大河原氏デザインのMSの魅力はどんなところですか?
聖なるおでん経験とノウハウからくるバリエーションの豊富さではないでしょうか?タツノコ時代に多くの“やられメカ”やコミカルな“面白メカ”をデザインしてきた経験、そしてプロダクトデザイナーとして立体として意識されたものを考え、描ける力。さらにミリタリーへの造詣の深さなど、アニメだけを見たり、頭で考えただけのものではない、さまざまな経験を積まれてきたからこそ生み出せるバリエーションが大河原先生のデザインの魅力ではないかと思います。

――今回手がけられた“大河原ザク”とはどのように出会われたのですか?
聖なるおでん劇場版のアートワークの中でも一番好きなのがこのザクのイラストでした。マシンガンを握ってこちらにコブシを向けている力強いポーズと、まっすぐにこちらを睨む釣り目のザクの鮮烈な印象がずっと自分の中に残りました。
 大河原先生のイラストは結構イラストによって顔やプロポーションの表現にバラツキがあって、ある意味作画が安定していないのが“味”だと思うのですが、そのなかでもこのザクのイラストはすべてがバランスよく、最高にカッコいいものになっていると思います。

3回作り直したダクト…徹底した「顔」へのこだわり

――“大河原ザク”制作のきっかけは?
聖なるおでん「ガンダムEXPO」で限定の「1/100 MGザクII Ver.2(リアルタイプ)」を手に入れたのですが、箱を開けたら成型色が旧リアルタイプと似ても似つかないような鮮やかな緑で…。これは塗装しないとそのまま作れない…。と思ってしばらく放置していました。
 そんな時に、オリコンさんのガンプラの記事で、n兄さんが制作された大河原先生のイラストをモチーフにしたザクを見ました。まるでフィギュアのように旧キットが作られていて、大河原先生のイラストが見事に再現されていたのが印象的でした。
 MGリアルタイプザクを持っていること、MGでこのイラストを再現している人はあまり見かけなかったこと、せっかく塗装もするならn兄さんとは違うアプローチで改造もしてみたいと思ったこと、が重なって制作することにしました。

――弊社記事を参考がきっかけになったのですね。久しぶりのガンプラ制作だったとツイッターにも書き込みがありましたが、制作の際に苦労した部分はどんなところですか?
聖なるおでんほぼ10年ぶりに改造、全塗装でプラモデルを作っていたので、必要なマテリアルや工具を都度買ったり、10年分のブランクを取り戻しながら、失敗を重ねてなんとか完成に持って行った、と言う感じです。改造自体は難しいことはしていないのですが、色んなマテリアルを使っていたりしたために、表面処理や塗装で苦労をしました。
――やはりブランクに苦労されたのですね。でも完成品はイラストを見事に再現されており、こだわりが詰まっているように感じました。
聖なるおでんそうですね。やはりイラストのイメージをどう再現するのか、という点でこだわりました。一番は顔です。睨んでいるような釣り目、そして正面を向いたダクト。これを再現するために3回ダクトを作り直しました。釣り目も最後の最後にひさしの真ん中にプラ板を貼って再現しました。
 また、イラストは下から煽っている構図であごをひいて睨んでいますが、通常のザクの首の長さではいくらあごを引かせてもどうしてもそうならないんです。このために、イラスト構図の写真専用でスペーサーとなるパーツを、使わないザクマシンガンのマガジンを改造して作り、イラスト構図の写真の時だけかませています。

――すごいこだわりですね。
聖なるおでんありがとうございます。でもこだわりは、顔だけではありません。ふんどしとフロントスカートの間のつながり部分の「えぐれ」をどうしても再現したかったのでやっています。
 また、イラストに合わせたマシンガンの大きさにもこだわりました。キットについているマシンガンを持たせてもまったくイラストの通りになりません。なので、オーバースケールとなる1/72のメカニックザクを手に入れ、そのマシンガンを流用しました。
 塗装も、旧リアルタイプザクの色がやはり良かったのでそれに準じました。あとは、イラストのテイストをどこまで入れていくのか、と言う部分で筆塗りも考えましたが、あまりにもイラストチックにするのも違うかな、と思い、缶スプレー塗装をした上に、フィルタリングとウェザリング、ドライブラシを併用して、筆跡もところどころ感じるベタッとした1色にならないように仕上げてみました。

元の作品へのリスペクトを忘れず、楽しむことが大事

――本作制作後の反響はいかがでしたか?
聖なるおでんこの作品を載せて以降、一気にフォローしていただく方が増えました。n兄さんや、尊敬するモデラーさんからRTや言葉をいただいたりしたことも嬉しかったです。こうやって感想やいいね、RTをいただけると、「作っていく上での大きなモチベーションになるな」と思いました。同時に「自分ももっと声掛けていこう」と思いましたね。

――ガンプラを制作する上で大切にしていることはどんなことですか?
聖なるおでんプラモデルを作るうえで一番なのは「楽しむこと」だと思います。あとは、「元の作品へのリスペクトを忘れないこと」と「そのMSに対しての自分の中のイメージをどれだけ再現」できるのか、ですね。

――聖なるおでんさんにとってガンプラとは?
聖なるおでんガンプラは自分にとって「最高の暇つぶしであり、一生付き合える趣味」だと思います。ガンプラと向き合うと無心になって制作に没頭できます。作っている間はなにか心に引っかかることや嫌なことがあっても、すべてを忘れてその世界に入り込めるんです。こんなに集中できる趣味は、自分にはほかにありません。これからもこの趣味を大事にしていきたいと思います。

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