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SNSで賞賛された“細かすぎる”“派手すぎる”キュベレイ 「どんなカスタムも受け入れる度量の広いガンプラ」

 ガンプラモデラーのなかでも人気の高いキュベレイ。独特の曲線美があるフォルムや、ほかのモビルスーツと比較して広い“面”があることで「個性が出しやすい」ことなどから、多くのモデラーがさまざまな作品が発表している。凜パパ(@RikuRuri33)さんは、実に4000以上ものパーツを手作りして、キットに組み込む手法で“細かすぎる”キュベレイを表現。一方、Kシェパード(@syunkan715)さんは徹底して塗装にこだわり、“派手すぎる”キュベレイを作り上げ、どちらもSNSで賞賛された。「キュベレイに魅せられた」という2人のスゴ腕モデラーに“好対照なオリジナリティー”を持つキュベレイへのこだわりを聞いた。

『面』を活かした美しさを主張する作例と逆を進んで怖さと妖艶さを表現

 「幼少期から生粋のキュベレイ好き」という凜パパさんは、昨年『MG 1/100 キュベレイ・アンベリール』発売というニュースをきっかけに、本作制作を決意したという。

「(発売前のイメージ)写真を見た時に、自分の目には、この姿(完成形)が写りました。キュベレイの作例を見ると、『面』を活かした美しさを主張する作品が数多く見られました。でもそれと真逆に進むことで、キュベレイが持つ、怖さと妖艶さを表現できないかと考えました」

 制作の背景で想像した物語は、キュベレイのパイロットであるハマーン・カーンの理想型。「『機動戦士ガンダムZZ』の最後で敗れたハマーンが、もし命をつなぎ止めていたら」という設定を発想の原点にイメージを膨らませていった。

「療養・静養期間を影で過ごすハマーンが、理想を現実にするために開発を進めていたのが今回制作した『キュベレイ unknown』です。戦場でこの機体を見た者はデータを転送する間も与えられず息絶える、故に詳細不明、不詳といった意味を与えました」

 キュベレイの不気味さをより際立たせ、“unknown”のイメージにぴったりとハマるデザイン、配色が印象的だが、特筆すべきはパーツの多さ。

「ひとつひとつ設計し、プラ板やプラ棒からデザインナイフで切り出したパーツ枚数は4000個を超え、ジャンクパーツから加工したもの、もとのキットもパーツを全部合わせると5500個を超えていると思います。時間をかけて制作しました」

 この驚くべき量のパーツだが、すべてが計算されてハマっているため、雑多な印象は一切なく、驚くほど精緻。そこには見え方にもこだわった、モデラーとしての矜持があった。

「パーツを増やすなど、情報量を増やしていくと、ある一定のラインを超えた途端に急にしつこさが出てしまうんです。そのラインをギリギリまで上げるために、同じパーツを複製し使うことはできるだけ避け、形が同じでも大きさが違うものを制作したりして単調にならないようにこだわりました。
 例えば、フロントビューでも見上げの視点では基盤などの本当に細かいゴチャゴチャしたところを減らし、シルエットを主張。見下げの視点ではこれでもかと細分化した部分が見えるように組み込むことでディテールを主張する。リアも同様です。
 今は左右対称のデザインが主流ですが、自分はシンメトリー崩しをして要所にアシンメトリーを取り入れた作品にしてあります。これによりサイドビューでも右から見るのと左から見るので違って見えて、360度どの視点から見ても新しい発見がある。少しでも長く楽しんでいただきたいと言う想いを込めています」

 実に完成まで7ヵ月半かかったという本作。これだけの大作となると、部屋にこもってじっくり…と思いがちだが、凜パパさんは違う。

「私は家庭持ちのリビングモデラーなのですが、毎日家族とリビングで話しながら制作していて。子どもたちも一緒にやったり、『家族の会話の時間が増えるいい趣味だね』と妻にも言われたりしています。また、家族以外にもSNSを通して、たくさんの方に出会えましたた。『ガンプラ』は、笑って過ごせる時間を増やしてくれる最高のコミュニケーションツールだと思っています」

キュベレイの広く優雅な曲面は塗装を魅せる作品に仕上げやすい

 一方、「昔から機体デザインが好きで愛着もあり、これまでにキュベレイだけで100体弱ほど制作した」というKシェパードさんは、「塗装」にこだわるモデラー。キュベレイの制作が多い理由も、好きなモビルスーツであること以外に、「広く優雅な曲面は塗装を魅せる作品に仕上げやすいので自然と作る機会が多くなっていました」と話すほど。その言葉通り、SNSには、実に色とりどりのカラーリングが施されたキュベレイほか、さまざまなモビルスーツが並ぶ。

 数ある作品のなかでも、特に印象的なのが、艶やかかつ見る角度で色の出方が異なる「究極レインボー」を施したキュベレイ。

「虹色に反射する新作塗料が発売すると聞き、これを使って何か面白い作品を作りたいと思いました。ただ塗料をそのまま塗るのではなく、いかに自分色を加えて他にはない作品を作り出すか…考えたときにパッと浮かんだイメージを形にしています。これも直感的で背景のストーリーは持たせていません。」

 新作塗料も積極的に取り入れ、そのまま塗るのではなく、自分色を出す。そこがモデラーとして評価されるところだろう。ただ、そこにもたくさん苦労はあるよう。

「扱ったことのない未知の塗料で、ぶっつけ本番だったのでとにかく慎重に進めました。ラッカー系塗料やウレタン系塗料の重ね塗りは、思わぬトラブルの原因になります。塗装がうまくいっても乾燥の際にボロボロに割れたり…なんてトラブルもあり過去何度も泣かされてきたもので…」

 こうしたトライ&エラーを重ねていくことで、モデラーとしての引き出しを増やしていく。そんなKシェパードさんの一番のこだわりは、「ツヤ」だという。

「ツヤを美しく仕上げることです。クリアの薄め方やスプレーの吹き方などわずかな違いでツヤの仕上がりが左右されます。作品の最終工程なので、どれだけ手をかけた作品でもここで油断するとすべて台無しになります。なので毎回、最も丁寧に、こだわる部分になります」

 Kシェパードさんにとって、「塗装」は、ガンプラを作るうえでの単なる制作の一工程ではないようだ。

「自分にとっての「塗装」は無限の表現ができる手段です。色・質感・組み合わせ、少しの違いでさまざまなアピールができる。『塗装』という手段を自在に扱えると、作品の幅が大きく広がり模型作りが楽しくなります。『こうしたらこうなる、この組み合わせならどうなる』と、塗装だけでも次々にアイデアが出てきて尽きないです」

 話の最後に、Kシェパードさんにとって「ガンプラとは?」と聞くと、塗装にこだわる同氏らしい答えが返ってきた。

「アイデアを自由に表現できるキャンバス。どう仕上げるも人それぞれあって、作る側だけでなく見る側に立っても同じで楽しいものです」

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