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大人になって見えてきた「ガンダム」の“背景” 大破・荒廃した「ギャン」「アムロ搭乗ガンダム」に込めたモデラーの願い

(写真左)制作・画像提供/林氏 (写真右)制作・画像提供/のうちの模型部屋氏 (C)創通・サンライズ

(写真左)制作・画像提供/林氏 (写真右)制作・画像提供/のうちの模型部屋氏 (C)創通・サンライズ

 子どもの頃、モビルスーツ(MS)のカッコよさからガンダム、ガンプラにハマり、その後大人になって本格的に制作し始めたというモデラーは多い。その人たちのなかには、「大人になってガンダムの見方、印象が変わった」という話をよく聞く。今回紹介する2人も、子どもの時とはことなる考察を持って、大破・荒廃したガンプラを制作。これらの作品に込められた思いとは?

ガンダムの世界と現実と重なる部分が多くある

 ウェザリングを施し、ニュータイプとして覚醒したアムロ・レイを擁したガンダムを相手に善戦したマ・クベ大佐の専用機ギャン。その敗れる寸前の様子を制作したのは、モデラーの林さん。もともと「戦場で大破したMSを表現しよう」という発想から、ギャンとガンダムの戦闘シーンを思い描き、制作したという。

「このギャンは、この後本当のトドメを刺されるのですが、それではつまらないと思い、野に横たわり、自分の運命を悟りながらも、最後の力を振り絞って抵抗しようとしている姿にしました」

 林さんにとって、「せっかくまたプラモ制作を始めたんだから、今度こそジオラマに挑戦しよう」と思い立った本作が、ガンプラ復帰の第1作。制作する際、アニメのシーンを観返したりするなかで、子どもの頃に見た「ガンダム」の印象と、今見る「ガンダム」の印象は違う話す。

「小学生の頃は、単純に面白い、かっこいいという気持ちでガンダムを観ていたのですが、この歳になってあらためてガンダムを観ると、キャラクターひとりひとりの意思を強く感じたり、戦っている時の気持ちなどが細かく描写されていることに気づいたりすることが多くなりました」

 苦境に追い込まれながらも、最期の抵抗を見せるギャン。その様子からは、気高き騎士のプライドとともに、正義と悪を超越し、それぞれの信念のもと、必死に生きる人々の物語であることを考えさせられる。これらを感じ取ることができるようになったのも、ガンダムの背景にあるものを理解し、現実と重ね合わせることで、よりリアルな物語へ昇華しているからだろう。

「ガンダムで描かれる戦争を取り巻く人たちは、いろいろな想いを持っています。例えば、平和を望みながら戦っている人もいれば、ただ戦うことが楽しいと思う快楽主義の人、なかには戦場に出るのが嫌だと考えている人もいる。それらは現実の戦争とリンクすることがあるので、作品と重なる部分は多くあるなと思います。
 私は戦争を体験してはいませんが、話を聞くだけでとても残酷で恐ろしい事だということがわかります。日本では平和に暮らせているので、なかなか実感はわきませんが、すぐそばに紛争などが起きている国があるので、もっと身近にある事と考えて、生活しなければいけないとも思います」

アムロの思いを投影「荒廃してもいつか花が咲く」

 一方、“戦い”後、長い年月を経た後のガンダムモビルスーツの様子を制作したのは、モデラーののうちの模型部屋さん。しかも朽ち果てたのは、大破したジオン軍の敵機ではなく、主役であるガンダムだった。

「ガンダムは主人公側に立って戦うことが多いので、敵軍を圧倒しているイメージを持っている方も多いかと思います。しかし実際はそうではなくて、ガンダムも架空とはいえ兵器の一つなので、形はどうであれ最後はボロボロになってしまって、大破してしまう描写も結構多いんです」

 イメージしたのは、『閃光のハサウェイ』につながる1つ前の作品『逆襲のシャア』。地球に隕石を落として人類を滅ぼそうするシャアと、それを阻むアムロの様子について、劇場版、小説版とも、死んだとも、生きているとも描写されず、消息不明となってしまう。その際、アムロが搭乗していたのが、今回のモチーフとなった「Hi-νガンダム」である。

「話は少し飛ぶのですが、全てのガンダム作品が最終的に辿り着く終着点としてはるか未来の地球が描かれている『∀ガンダム』という作品があります。そこでは、月で冬眠していた人間が地球へ帰還するのですが、地球の人々と争うことになり、またかつての兵器たちが駆り出されます。アムロが人類を信じ、命がけで地球を守ったにも関わらず、人類は変わらずまた争いを引き起こし、歴史を繰り返してしまう。そんな時代に、「もしアムロの乗っていたHi-νガンダムが発掘されたら?」ということを考えてみました。反骨の象徴であるガンダムの、初代パイロットでもあるアムロがはるか未来で見る景色、その目には何が映るのかを想像しながら制作を行いました」

 ウェザリングで風化させるだけでなく、そこには緑が生え、荒廃から再生へ向かっているようにも見えるが、それも同氏のこだわり。そこには本作に込めた想いが詰まっていた。

「発見まで相当な時間が経っていると考えられます。地球のどこかで眠っていれば、ガンダムも樹木化してしまうのではないかと考えました。荒廃した街にもいつかは草木が生えて、花が咲くように。そこには平和への願いも込めています。今回は、アムロの思いを重点的に考えながら制作しました。もう争いの道具にはして欲しくないなと思います。安らかに眠りながら、世界の行く末を見守っていて欲しいと思います」

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