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腕立て伏せ(プッシュアップ)の効果的なやり方【プロが教える筋トレ】

腕立て伏せ(プッシュアップ)の効果的なやり方【プロが教える筋トレ】

自宅で行う筋トレの定番といえる「腕立て伏せ」。適切な方法でトレーニングをすれば自宅で立派な胸板と、太い二の腕を作れる種目だ。

この記事では元トレーナーで週2〜3日腕立て伏せを行っている筆者が、腕立て伏せの効果や鍛えられる筋肉の部位、腕立て伏せの種類について解説。そのほかメニューの作り方や初心者が効かせるためのポイントを紹介している。

自宅で立派な胸板を作りたい方や二の腕を引き締めたい方は、最後まで読んで腕立て伏せを日々のトレーニングに取り入れていただきたい。
著者・監修者プロフィール

林本直
元アスレティックトレーナー|サプリメントインストラクター保有
了徳寺大学健康科学部卒 元日本体育協会公認アスレティックトレーナー&NSCA-CSCS。大学日本代表選手(ゴルフ、ビーチバレー)のトレーニングコーチや、ラグビーチームのトレーナーを経験。現在はサプリメントインストラクターを取得し、ライターをしながらオンラインでボディメイクを指導している。

ブログ
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腕立て伏せの効果・腕立て伏せで鍛えられる部位

腕立て伏せは胸や腕を鍛えられる種目と思われているが、実はそれ以外にもさまざまな筋肉が鍛えられる。また、鍛える筋肉を意識することで、より筋トレの効果が高められる。

まず腕立て伏せで鍛えられる筋肉を知ろう。

大胸筋(だいきょうきん)

腕立て伏せで最も鍛えられる筋肉は「大胸筋」だ。大胸筋とはいわゆる胸板を構成する筋肉で、肘を身体の後ろから前に持っていく動作で収縮する。

イメージがつかみにくい人は片手で胸の筋肉を触りながら、もう片方の手で壁を押してみて欲しい。収縮する筋肉が大胸筋だ。

大胸筋は上部・中部・下部に分かれるが、腕立て伏せでは中部を中心に大胸筋全体を鍛えられる。フォームを変えることで、優先的に鍛える部位の変更も可能だ。

大胸筋は、腕立て伏せのような肘を引いた状態から前に押す動きで鍛えられ、胸板の厚さが増す。

大胸筋

上腕三頭筋(じょうわんさんとうきん)

大胸筋と同時に鍛えられる筋肉が「上腕三頭筋」。上腕三頭筋とはいわゆる二の腕にある筋肉で、力こぶを作る「上腕二頭筋」の反対側にある筋肉だ。

上腕三頭筋は肘を伸ばす時に収縮する。イメージ出来ない人は先ほど大胸筋を確かめたのと同じように、片手で上腕三頭筋を触りながら、もう片方の手で壁を押してみてほしい。上腕三頭筋の収縮が分かるはずだ。

上腕三頭筋を鍛えることで、太くたくましい二の腕に近づける。

上腕三頭筋

三角筋前部(さんかくきんぜんぶ)

大胸筋、上腕三頭筋と同時に「三角筋前部」も鍛えられる。三角筋とは肩の筋肉のことで、前部・中部・後部に分かれる。三角筋前部は腕を前に上げるときに収縮する筋肉だ。

イメージしにくい人は片方の手で肩の前を触りながら、もう片方の腕を前にあげてみてほしい。収縮する筋肉が三角筋前部である。

大きな肩を作ったり、肩を引き締めたりするためには、三角筋前部だけでなく三角筋中部や後部も鍛えなければならない。腕立て伏せで三角筋前部を鍛えつつ、他の種目で三角筋中部や後部も鍛えることをおすすめする。

三角筋前部

体幹(たいかん)

腕立て伏せは、体幹トレーニングにもなる。体幹を鍛える種目に「プランク」という種目がある。腕立て伏せと同じような体勢のまま数十秒間、体幹を固定する種目だ。

腕立て伏せもプランクと同じように、トレーニング中は体幹を固定しなければならない。腰を反らしたり曲げたりすると、負荷が逃げて体感を鍛える効果が減る。

体幹を固定することで腹部のインナーマッスルである腹横筋や、6パックを形成する腹直筋、脇腹の腹斜筋を刺激できる。これらの筋肉が肥大するほどの刺激ではないが、腹部の引き締めや体幹の安定性向上が期待できる。

腕立て伏せの種類とやり方


続いて腕立て伏せの種類について紹介しよう。腕立て伏せにはさまざまな種類があり、種類によって鍛えられる筋肉が変わってくる。自分の目的にあった種目を選択していただきたい。

プッシュアップ

プッシュアップとは腕立て伏せのことで、最も一般的なフォームだ。最初はプッシュアップで正しいフォームを覚えよう。できない人は膝をついても大丈夫。

1.手(肩幅)と足を地面につき、膝・腰・背中・肘をまっすぐ伸ばす。

プッシュアップ1

2.膝と腰を伸ばしたまま、ゆっくり身体を落とす。このとき肘を曲げてしっかり胸を張る。

プッシュアップ2

3.胸が地面につくぎりぎりまで下げてから、地面を押して身体を持ち上げる。1のポジションまで上げたらすぐに2へ

プッシュアップ3




リバースプッシュアップ

リバースプッシュアップは、背中側で行う腕立て伏せのこと。大胸筋ではなく、肩甲骨の下についている広背筋を鍛えられる。広背筋は、逆三角形の背中を作るために必要な筋肉だ。上腕三頭筋と三角筋前部はプッシュアップと同様に鍛えられる。

1.椅子を用意して、座面の前端に手をついて肘・背中を伸ばし、足を伸ばしたまま前に出す(座らない)

リバースプッシュアップ1

2.膝を伸ばしたまま、肘を曲げてゆっくり身体を落とす。

リバースプッシュアップ2

3.お尻が地面につくぎりぎりまで下げてから、座面を押して身体を持ち上げる。1のポジションまで上げたらすぐに2へ

リバースプッシュアップ3

ナロープッシュアップ

ナロープッシュアップは、両手の幅を狭めた腕立て伏せ。プッシュアップと比べて、大胸筋への負荷が減り、上腕三頭筋への負荷が増す。上腕三頭筋を重点的に鍛えたい人におすすめだ。一方でプッシュアップよりも難易度が高いため、十分にプッシュアップができるようにならないと難しい。

1.両人差し指と親指をくっつける形で手と足を地面につき、膝・腰・背中・肘をまっすぐ伸ばす。

ナロープッシュアップ1

ナロープッシュアップ1−1

2.膝と腰を伸ばしたまま、肘を曲げてゆっくり身体を落とす。このとき脇は締めたままで、しっかり胸を張る。

ナロープッシュアップ2

3.胸が地面につくぎりぎりまで下げてから、脇を締めたまま地面を押して身体を持ち上げる。1のポジションまで上げたらすぐに2へ。

ナロープッシュアップ3

ワイドプッシュアップ

ワイドプッシュアップとは両手の幅を広げる腕立て伏せ。プッシュアップと比べて、大胸筋への負荷が増して、上腕三頭筋への負荷が減る。そのため大胸筋を重点的に鍛えたい人におすすめだ。ナロープッシュアップと同様に、プッシュアップよりも難しい。

1.手(肩幅より外に開く)と足を地面につき、膝・腰・背中・肘をまっすぐ伸ばす。

ワイドプッシュアップ1

2.膝と腰を伸ばしたまま、肘を曲げてゆっくり身体を落とす。このとき脇を開いたまましっかり胸を張る。

ワイドプッシュアップ2

3.胸が地面につくぎりぎりまで下げてから、脇を開いたまま地面を押して身体を持ち上げる。1のポジションまで上げたらすぐに2へ。

ワイドプッシュアップ3

バックプッシュアップ

バックプッシュアップは腕の位置を下げることで、大胸筋と同時に広背筋も鍛える腕立て伏せ。プッシュアップと比べて、大胸筋への負荷が減り、広背筋も鍛えられる。広背筋を重点的に鍛えたい人におすすめだ。

ただ、バックプッシュアップは数ある腕立て伏せの中でもかなり難しいため、初心者には難しいかもしれない。腕立て伏せに慣れてきたらチャレンジしてみよう

1. 手(みぞおちより低く)と足を地面につき、膝・腰・背中・肘をまっすぐ伸ばす。

バックプッシュアップ1

2. 膝と腰を伸ばしたまま、肘を曲げてゆっくり身体を落とす。このときしっかり胸を張る。

バックプッシュアップ2

3. 胸が地面につくぎりぎりまで下げてから、地面を押して身体を持ち上げる。1のポジションまで上げたらすぐに2へ。

バックプッシュアップ3

ダンベルプッシュアップ

ダンベルプッシュアップは、ダンベルを握りながら行う腕立て伏せ。ダンベルの高さがある分、深く身体を落とせるため、大胸筋により刺激を与えられる。

また、円形のダンベルであればダンベルが転がらないように、バランスをとりながらプッシュアップしなければならないため、肩周りのインナーマッスルや三角筋中部・後部も刺激される。一方で怪我のリスクが高まるため、初心者は行わないようにしよう。

1. ダンベルを握って、ダンベルと足を地面につき、膝・腰・背中・肘をまっすぐ伸ばす。

ダンベルプッシュアップ1

2.膝と腰を伸ばしたまま、肘を曲げてゆっくり身体を落とす。このときしっかり胸を張る。

ダンベルプッシュアップ2

3.胸が地面につくぎりぎりまで下げてから、地面を押して身体を持ち上げる。1のポジションまで上げたらすぐに2へ(この時に片肘を引き上げて広背筋を鍛えるバリエーションもあるが、大胸筋への負荷が逃げるためおすすめしない)

ダンベルプッシュアップ3

パイクプッシュアップ

パイクプッシュアップとは、腰を大きく曲げて行う腕立て伏せ。腰を大きく曲げることで体幹が前に傾くため、大胸筋の上部や三角筋前部や中部への負荷が高くなる。パイクプッシュアップも通常のプッシュアップより難しい。

1. 手(肩幅)と足を地面につき、膝・背中・肘をまっすぐ伸ばして腰を上に上げる。身体をくの字に。

パイクプッシュアップ1

パイクプッシュアップ1−1

2.身体をくの字にしたまま、肘を曲げてゆっくり身体を落とす。このときしっかり胸を張る。

パイクプッシュアップ2

パイクプッシュアップ2−2

3.胸が地面につくぎりぎりまで下げてから、地面を押して身体を持ち上げる。1のポジションまで上げたらすぐに2へ。

パイクプッシュアップ3

デクラインプッシュアップ

デクラインプッシュアップとは、足を台や椅子などに乗せて行う腕立て伏せ。足を高い位置に置くことで、通常の腕立て伏せよりも負荷がかかる種目だ。

また、通常の腕立て伏せより体幹が前に傾くため、より大胸筋上部に負荷がかかる。

1. 手(肩幅)は地面、足は台か椅子にあげる。膝・腰・背中・肘をまっすぐ伸ばす。

デクラインプッシュアップ1

2. 膝と腰を伸ばしたまま、肘を曲げてゆっくり身体を落とす。このときしっかり胸を張る。

デクラインプッシュアップ2

3. 胸が地面につくぎりぎりまで下げてから、地面を押して身体を持ち上げる。1のポジションまで上げたらすぐに2へ。

デクラインプッシュアップ3

腕立て伏せは毎日してもいい?(回数、セット数、頻度)

腕立て伏せの効果を上げるには、他の筋トレと同様に的確な回数とセット数、頻度を設定しなければならない。これらを間違えると、怪我のリスクが高まったり、効果が低下したりする。

回数

筋トレの最適な回数は、実はまだ科学的にはっきりと解明されていない。羽状筋や紡錘状筋などの筋肉の形による違いや、速筋や遅筋といった筋繊維構成の割合によって、最適な回数は異なると数々の研究で指摘されている。

基本的には6〜12回で限界がくる負荷が、筋肥大に効果的と考えて間違いはないだろう。重要なのは「6〜12回で限界がくる」ように設定すること。楽に12回をやっても効果は薄い。腕立て伏せは種類によって負荷が違うので、色々試してみながら6~12回で限界がくる形を探してほしい。

セット数

セット数は初心者から中級者は1セットで十分だ。1セット行った場合と複数セット行った場合を比較した研究で、筋肥大の違いは見られなかったと結論付けられている。*1

そのため6〜12回で限界がくる種目を、1セットだけ限界まで行おう。こうすることで最も効率よく効果を得られる。もし「1セットでは追い込みきれない」となったときには2セットに設定しよう。

【参考文献】
*1Strength training. Single versus multiple sets ー Sports Med. 1998 Aug;26(2):73-84. doi: 10.2165/00007256-199826020-00002.(外部サイト)

頻度

筋肉の成長は、トレーニングなどのストレスに適応する「ストレス応答」によって得られる。与えられたストレスから回復するまでに24〜72時間がかかるため、その間にトレーニングをしても、効果が上がらないどころか逆効果になってしまう。

そのためトレーニングは毎日行ってはいけない。「1日100回を毎日」などの経験を語る人がいるが、毎日行って成長するのであれば、そもそも1日あたりの負荷が足りないと考えられる。また正しいフォームでのトレーニングをゆっくりとしたスピードで行えば、100回行うのはよほどのアスリートでないと難しい。

このことから、すべての筋トレは数日空けて行うのが最適だ。大きい筋肉ほど回復に多くの時間が必要で、小さい筋肉ほど回復に必要な時間が少ない傾向にある。

腕立て伏せは2〜3日空けて行おう。初心者のうちは筋肉痛が長引きがちなので3日間、慣れてくると筋肉痛にもなりにくくなるので、2日間がおすすめだ。筋肉痛が3日間以上たってもとれない場合は、筋肉痛が治るまで休んでから行う。

・月曜:腕立て伏せ
・火曜:休み
・水曜:休み
・木曜:腕立て伏せ
・金曜:休み
・土曜:休み
・日曜:休みor腕立て伏せ(日曜に行ったら次回は水曜以降)

初心者にオススメの腕立て伏せのやり方

初心者の場合、腕立て伏せができない場合がある。しかし、腕立て伏せは思っているより負荷が大きいメニューだ。「できないことは恥」ではなく、最適な方法で行うことが重要だ。

腕立て伏せができない理由
腕立て伏せは体重の60〜70%の負荷がかかると言われており、体重が70kgの人なら42〜49kgを胸・腕・肩の筋肉で支えることになる。そのため初心者が腕立て伏せができなくても仕方のないことだ。

できない場合は、負荷を減らした以下の腕立て伏せをやってみていただきたい。

腕立て伏せができない人におすすめのメニュー

腕立て伏せができない人には以下の2つのメニューをおすすめする。

膝つきプッシュアップ

膝つきプッシュアップは読んで字のごとく、膝をついて行うプッシュアップ。膝をつくことで、通常のプッシュアップより負荷を軽くできる。
  • 膝つきプッシュアップ1

  • 膝つきプッシュアップ2

壁立て伏せ

膝つきプッシュアップよりもさらに負荷が軽いのが壁立て伏せだ。壁から50cm~1mほど離れて立ち、壁に手をあてて腕立て伏せをする。この方法なら筋力に自信がない人でも、行いやすい。
  • 壁立て伏せ1

  • 壁立て伏せ2

効果のない腕立て伏せ

正しいフォームを知らずに効果が少ない腕立て伏せをしている人もいる。

例えばスピードをあげるために、肘を固定してあごを上下させるようなやり方だ。テレビ番組などで腕立て伏せのスピードを競う競技の際よく見られる。全く効果がないとは言わないが、筋肉を成長させる目的では効率が悪いのでやめよう。

他にも腰を反らせたり曲げたりしているなど、正しいフォームで行わないと負荷が逃げて効果は下がってしまう。スピードや回数ではなく、正しいフォームでゆっくり行うことが必要だ。

腕立て伏せの効果を高めるには

初心者は特に正しいフォームでゆっくり行うことを意識してほしい。正しいフォームで行うと、筋肉を効率よく刺激できる。

また、ゆっくり行うことで筋肉を長い時間収縮させられる。急いでやると負荷が逃げてしまいトレーニング効率が落ちることがあるので、とにかくゆっくり行うことが重要だ。怪我の防止にもつながる。1秒かけて上げて、2秒かけて下げるくらいのペースで行おう。

プッシュアップバー、バランスボールなどの器具を使った腕立て伏せ

最後にプッシュアップバーとバランスボールを使った腕立て伏せを紹介する。これらの道具を使うことで、よりトレーニング効果を高められる。

プッシュアップバー

より腕立て伏せの効果が欲しい場合はプッシュアップバーがおすすめ。プッシュアップバーがあると、深く身体を落とせるため、大胸筋をより鍛えられる。ホームセンターやネット通販で、1,000円前後で購入できるので、ぜひ購入を検討してみてほしい。

バランスボール

バランスボールを使って腕立て伏せをするのも有効だ。バランスボールに足を乗せて行うパターンと、腕をついて行うパターンがある。

足を乗せて行うパターンでは、足から体幹にかけて不安定になるため、より体幹に刺激が入る。手をついて行うパターンでは上体や肩周りが不安定になるため、三角筋や肩のインナーマッスルなど、肩周りの筋肉が刺激される。

どちらも初心者には向かないので、腕立て伏せに慣れて新しい刺激が欲しいときに行っていただきたい。特に手をバランスボールに行う方法は怪我のリスクが高いため、慎重に行うようにしよう。

まとめ

ここまで腕立て伏せで鍛えられる筋肉や腕立て伏せの種類を中心に、スケジュールの立て方や初心者のポイント、道具を使ったバリエーションを紹介してきた。

腕立て伏せを正しく行えば胸板も厚くなり、二の腕も太くたくましくなる。腕立て伏せのバリエーションはさまざまで、逆三角形に必要な広背筋も、広い肩幅に必要な肩も鍛えられる。

男らしい厚い胸板やたくましい二の腕、広い肩幅や逆三角形体形にも、腕立て伏せが有効だ。ぜひ今日からのトレーニングメニューに腕立て伏せを組み込んでもらいたい。

理想の身体に、着実に近づくはずだ。
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