アニメ&ゲーム カテゴリ
ORICON NEWS

魔境・ロンダルキア誕生の真相とは?ファミコン芸人フジタが語る「“ドラゴンクエスト”シリーズの革新」

RPGの概念を植え付けた「I」、仲間との絆を感じた「II」

ドラゴンクエスト(1986年/エニックス)
 ロールプレイングゲーム(RPG)というものをほとんど誰もやったことがない時代、RPGを知らない人たちに向けて堀井さんが、とにかく「親切に」「わかりやすく」、RPGがどういうものなのかを知らしめた、ということが革新のポイントですね。

 もともと、RPGはパソコンゲームの世界でコアユーザーをターゲットにしていたゲーム。今と違ってパソコンもそんなに普及していない1980年代前半、パソコンでRPGをする人はかなりのコアユーザーで、RPGゲーム自体、不親切なものが多かったと言われています。当時あったパソコンのRPGをそのままファミコンに移植していたら、初心者ユーザーはわからないことだらけだったと思いますし、最初がそんなんだったら、今ゲーム業界におけるRPGの立ち位置も変わっていたと思います。

 例えば、ゲームが始まって、勇者はまず王様に会いますよね。チュートリアル風の展開で、「次どうしろ」とか、進むべき道を示してくれる。それってリアリティはないですけど、そうすることで、絶対的に進まなければならない道を示してくれる。しかも、城の中からスタートするので、城内や街で「はなす」「とる」「とびら」「かいだん」などのコマンドを一通り試してから外に出て冒険に出ることができる。

 前にも話しましたが、「Aで決定」「Bでキャンセル」というルールを定めたり、「呪文」というものがどういうものなのかを、ちびっこにもわかりやすく知らしめた。日本におけるRPGの概念を植え付け、何もわからない人に教えた作品ですね。

 あと、細かいところですけど、敵の強さを橋などのエリアで区切った仕組みもすごかった。ここより先にいくと、すごい強い敵が出てくるとか。そうすることで、境界線を引き、自然な形で主人公の行動範囲を決めていた。一見自由に物語を進んでいるような感覚なんだけど、実はシナリオに沿っているという展開もうまかったと思います。
ドラゴンクエストII 悪霊の神々(1987年/エニックス)
 「ドラクエII」での革新は「ひとりじゃない」というところですかね。パーティを組めるというところ。仲間で冒険を進め、一緒にボスを倒していくということの連帯感ですね。

 「I」では一人旅なので、攻撃も回復もすべて自分でやらなければいけなかった。ところが「II」では、仲間のために回復をしたり、一斉に攻撃をしたり。「I」での、“戦闘の駆け引き”に“仲間への思いやり”が加わった感じです。

 ファミコン版の「II」と言うと、やはり「ロンダルキア」の記憶が強いですよね。ゲームバランスを崩すほどの強敵ばかりが現れる最終盤のまさに魔境。これは聞いた話なのですが、制作サイドが「納得できない」と言っていたらしいです。「制作期間が短すぎる」と。確かに、「I」が出たのが1986年5月27日に対し、「II」は87年1月26日とわずか8カ月後。しかも、当初「II」は1カ月前の12月発売とアナウンスされていたのを1ヵ月後ろ倒した。だから、さらに遅れることは許されなかったみたいです。

「I」の大ヒットを受けて急ピッチで開発され、ギリギリでゲームバランスを調整することもままならなかったというのが、魔境を生んだ真相のようです。もっとも、ロンダルキアの難易度問題があるにしても、物語としてちゃんと成立させ、前作からわずか8ヵ月であそこまでの完成度に持っていくことがすごいです。

あなたにおすすめの記事

 を検索