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天才・江口寿史が提示した「美人画」の新たな“基準” 革新は「誰の画風にもない“鼻の穴”のある女の子」

 時代を超えて愛される“かわいい女の子”を描き続け、漫画、イラストレーションの世界で圧倒的な存在感を放っている江口寿史氏。先ごろ1992〜2020年に手掛けてきたCDジャケットのイラストを収録した初のジャケットアートワーク集『RECORD』を刊行した。77年に週刊少年ジャンプにて『すすめ!!パイレーツ』で連載デビュー。その後も『ストップ!!ひばりくん!』をはじめ数多くのヒットを飛ばしてきた漫画家は、なぜイラストレーションに軸足を置くようになったのか?「KING OF POP」の名にふさわしい時代の心を捉え続ける画風はいかにして確立されたのか? 漫画家/イラストレーターとしての足跡と現在地、そして今後について聞いた。

"刹那の切なさ"を捉えておきたいというのは絵を描くモチベーションの1つ

──1970年代後半から活躍され、音楽カルチャーと親和性のある江口先生ですが、意外にもLPジャケットのお仕事はされてないと伺いました。
江口寿史そうなんですよ。僕がイラストの仕事をするようになったのは、レコードからCDへの移行期。レコード屋さんからLPが消えつつあった時代ですね。だから(LPジャケットの基本サイズである)31.5cm×31.5cmに描くことにはずっと憧れていて。CDもいいけど、やっぱりLPは、サイズの分だけ見る側に訴えてくるものが強いんですよね。ジャケットの仕事がたまってくるごとに、「いつかこれをLPサイズにしてまとめたい」という気持ちが大きくなっていって。前作の画集『step』を作ってるときに「これが売れたら次はLPサイズの画集を」と担当編集者にアピールしてました。そういう意味で40年くらい仕事してきた中でも、「ついにひとつの夢が実現できた!」という1冊です。

──CDジャケットを手掛けられる際は、どのようにインスピレーションを広げられるのですか?
江口基本はその音楽を聴いてイメージを膨らませる感じですけど、先方から明確なオーダーがある場合もありますよ。最新の仕事だと、SEKAI NO OWARIのシングル「umbrella / Dropout」のジャケットはFukaseさんから「水玉のワンピースを着ている女の子が振り向いている絵を」というオファーがありました。傘を差してるのは僕の付け足しで、それは曲名が「umbrella」だったからなんだけど、傘を差した絵はあまり描いたことなかったからいい機会だな、と。こういう仕事は職人に徹することができてけっこう楽しかったりしますね。
──やはり「江口先生の描く女の子をジャケットに使いたい」という希望は多いのでは?
江口 今回のジャケットアートワーク集の表紙にもなっている、銀杏BOYZのアルバム『君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命』は、峯田(和伸)くんから「『ストップ!!ひばりくん!』連載時の表紙をそのまま使いたい」というオーダーでした。ただ昔のアナログの原稿をデジタルに変換する際に、細かいゴミを処理するのがめちゃくちゃ大変で。結局、ポーズや構図はそのままに新しく描き直したんです。でも今考えるとパンクバンドだしね、むしろ汚いままでもよかったのかなって。まあ、峯田くんはやさしいからキレイになった絵を喜んでくれましたけどね。

──大きな瞳でこちらを見つめてくるひばりくんのなんとも言えない表情が印象的です。
江口今の言葉だと「エモい」って言うのかな。うれしいんだか悲しいんだか、はっきりしない微妙な表情。若い子たちが楽しそうに盛り上がってる中で、ふとそういう表情をする瞬間ってあるじゃないですか。あれってたぶん「今この時間は二度と戻ってこない」ということを、意識的なのか無意識的なのか、でもどこかで気づいてるんだと思う。そのはかなさというか、"刹那の切なさ"みたいなものを捉えておきたいというのは絵を描くモチベーションとして1つあるかもしれないです。

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