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「日本酒の種類」を知る!製法や味の違いをわかりやすく紹介
たしかに「純米大吟醸 無濾過生原酒」のように表示されても何のことかわかりづらいが、日本酒の分け方の基準というのは明確に存在している。
分け方をいったん覚えてしまえばお酒のラベルを見て「あ、これはあんな感じの味なんだな」とイメージすることができ、日本酒がよりいっそう楽しくなるだろう。
今回は製法や味の違いをベースに、日本酒の種類についてわかりやすく紹介する。
日本酒の種類は何パターンも分け方がある!?
なぜなら分け方によって、種類が何パターンも存在するからだ。
たとえばワインも原料という切り口で分ければ赤・白・ロゼという3種類に、味わいで分ければ甘口・辛口の2種類に分けられる。ほかにもビールでは「生か生じゃないか」、ミネラルウォーターなら「炭酸無し・炭酸入り」のような種類分けもできる。
それらを踏まえて、今回は多くの人にとって馴染み深い代表的な切り口から日本酒の種類を紹介していく。参考にしてもらえれば幸いだ。
純米・吟醸などで分ける日本酒の種類
それらは製法の違いによる区分なのだが、実は正式に法律で定められた分け方だ。
ここでは、「純米酒」や「大吟醸」など全部で8種類ある「特定名称酒」について、「普通酒」の存在も引き合いに出しながら紹介する。
特定名称酒と普通酒
まず特定名称酒とは「純米酒」や「大吟醸」のことだと思ってもらうとわかりやすい。
国の清酒の製法品質表示基準という法律によって定められており、この基準をクリアしたお酒しか「純米」や「吟醸」という表記をしてはいけないことになっている。
もちろん万人の好みに合うわけではないが、原料や製法の面で厳格な基準をクリアしたお酒しか特定名称は名乗れないので、その意味では特定名称酒はある程度の品質が保証されたお酒だといえる。
普通酒は特に法律で定められた区分ではなく、慣習的にそう呼ばれているだけである。一般酒とも呼ばれ、廉価なカップ酒などは普通酒であることが多い。
たしかに価格の面でいえば特定名称酒のほうが高級で普通酒は大衆的だが、決して味が劣るというわけではない。
普通酒でもファンの多いものもあるので、自分好みの普通酒を探してみるのも日本酒の楽しみ方のひとつだ。
【出典】「清酒の製法品質表示基準」の概要 | 国税庁(外部サイト)
8種類の特定名称酒一覧
特定名称酒は主に「使用原料」と「精米歩合」を基準に8種類に分けられている。
8種類は以下の通りだ。
特定名称 | 使用原料 | 精米歩合 |
純米大吟醸酒 | 米、米こうじ | 50%以下 |
純米吟醸酒 | 米、米こうじ | 60%以下 |
特別純米酒 | 米、米こうじ | 60%以下又は特別な製造方法(要説明表示) |
純米酒 | 米、米こうじ | ー |
大吟醸酒 | 米、米こうじ、 醸造アルコール | 50%以下 |
吟醸酒 | 米、米こうじ、 醸造アルコール | 60%以下 |
特別本醸造酒 | 米、米こうじ、 醸造アルコール | 60%以下又は特別な製造方法(要説明表示) |
本醸造酒 | 米、米こうじ、 醸造アルコール | 70%以下 |
さらに、そこに精米歩合が関わってくる。
精米歩合とは米をどれだけ削ったかを表す数値で、このパーセントが低いほどたくさん削っていることになる。
この精米歩合の数値が60%を下回ると「吟醸」を名乗れ、さらに削って50%を下回ると「大吟醸」を名乗れるという具合だ。
だから、米と米こうじだけを原料として精米歩合が50%以下ならば純米かつ大吟醸なので「純米大吟醸」となる。醸造アルコールを使用しつつ精米歩合が低ければ「吟醸酒」や「大吟醸酒」を名乗れるわけだ。
吟醸系のお酒は華やかな香りと繊細な味わいが特徴的なので、まだ試したことがないならぜひ味わってみてほしい。
甘口・辛口で分ける日本酒の種類
味わいに注目すると、日本酒もワインと同じように甘口と辛口に分けられる。
しかし、同じ辛口といっても渋みのあるワインの辛口と日本酒の辛口ではちょっとニュアンスが異なる。
ここでは、日本酒の甘口・辛口の違いや数値の見方について紹介する。
甘口・辛口の違い
「精米歩合が〇〇%以下」のように決まっている特定名称酒と違い、公的な基準は存在しない。
だから、どんなお酒に対して甘口や辛口を名乗るかは生産側・販売側の自由である。
そのうえで日本酒の甘口・辛口の違いを紹介すると、その分かれ目はずばり「甘いか・甘くないか」だ。
甘みを感じるお酒ならば「甘口」で、甘みを感じないお酒ならば「辛口」と呼んでいる。辛口だからといって唐辛子のような刺激や胡椒のような痺れる辛さがあるわけではない。そこはワインと同じだ。
ただしお米から作られる日本酒にはそもそも渋みの要素がないため、渋みが大きな特徴であるワインの辛口とはその点が異なる。
お酒を生産したり流通したりする日本酒業界の人たちの間で、「甘くない酒」を指す言葉として「辛い」や「辛口」が自然発生的に使われてきたというのが名称の由来だ。
甘口・辛口の違いは数値でわかる
実は日本酒の甘口・辛口は数値で確認できる場合がある。
日本酒のラベルや居酒屋のメニューの説明書きで「-3」や「+1」などの数値を見たことがないだろうか?
それが日本酒の甘い・辛いの度合いを表す数値で、「日本酒度」と呼ばれている。
甘口だとマイナスで、辛口だとプラスだ。
少しだけ理科の授業のような話になるが、液体に糖分や塩分が多く含まれていると物体はぷかぷかと浮く。その原理で、15°Cの日本酒に目盛りを刻んだ計り(日本酒度計)を浮かべる。甘口だと糖分が多く含まれていて比重が大きいので、計りが浮き、水面の目盛りはマイナスを指す。
逆に、辛口の場合は、計りが沈むので目盛りはプラスに傾く。
そうやって計測された日本酒度の数値によって、そのお酒が甘口なのか辛口なのかの指針となるのだ。
ただしアルコール度数や香りの強さによっても甘い・辛いの感じ方はかなり変わるので、日本酒度はあくまでも甘口・辛口を判断する材料のひとつと考えておくのが賢明だ。
ちなみに日本酒度がマイナス100を超える「極甘」の日本酒も存在しているので、甘いお酒が好きならばぜひ試してみてほしい。
その他の日本酒の種類
たとえばワインなら「スパークリングワイン」があり、ビールなら「生ビール」があるという具合だ。
ここでは、その他の分け方に注目して日本酒の種類を紹介しよう。
無濾過・生・原酒
それは無濾過と生と原酒の3つの要素が含まれており、それぞれ日本酒の製法に由来している。
順番に紹介していこう。
まず無濾過は「濾過していない」という意味だ。通常、日本酒は出荷前にフィルターなどで濾過されるが、その工程を行わないのが無濾過の日本酒である。搾りたてに近い味わいが特徴だ。
次に生は「加熱処理をしていない」という意味だ。その点は生ビールと同じで、非加熱によるフレッシュさを楽しめる強みがある。
そして原酒は「水を加えていない」という意味だ。日本酒造りでは濃度調整のために最後に水を加えることがあるが、その処理を省いたものが原酒と呼ばれる。アルコール度数が高めになり、飲みごたえのあるお酒に仕上がる傾向がある。
日本酒のラベルを見て無濾過や生や原酒と書いてあれば、それぞれこういった意味だと覚えておいてほしい。
スパークリング・にごり酒
まず、ワインでいうところのスパークリングワインのように、日本酒にも「スパークリング日本酒」がある。2011年に発売された宝酒造の「澪」で人気に火が付いた発泡性のある日本酒だ。スパークリングワインと同じように、スパークリング日本酒も自然に瓶内で発泡させたものもあれば、人工的に炭酸ガスを加えているものもある。爽やかで飲みやすく、日本酒の初心者にも人気が高いお酒だ。
また、コクのある濃厚な味わいが特徴の「にごり酒」も代表的な日本酒の種類のひとつといえるだろう。ほんのりと白雪が舞うように濁っている「うすにごり」や「おりがらみ」もあれば、完全に白濁してトロッとしている「どぶろく」もある。なお、製造工程で発酵中のドロドロの液体である醪(もろみ)の状態から酒粕とお酒を分離していない場合は、法律上では「清酒」ではなく「その他の醸造酒」に分類される。
まとめ
著者プロフィール
中村サッシ
元・蔵人の利き酒師。信州で100年以上続く蔵で日本酒を造っていました。飲み比べが趣味で、全国各地のお酒を試したり、同じ酒蔵の何種類かのお酒を試したりして違いを言語化するのをライフワークにしています。夜はビール・ワイン・ウイスキーなども嗜みつつ、昼間はコーヒーのテイスティングも実践中。
中村サッシ
元・蔵人の利き酒師。信州で100年以上続く蔵で日本酒を造っていました。飲み比べが趣味で、全国各地のお酒を試したり、同じ酒蔵の何種類かのお酒を試したりして違いを言語化するのをライフワークにしています。夜はビール・ワイン・ウイスキーなども嗜みつつ、昼間はコーヒーのテイスティングも実践中。
飲酒は20歳を過ぎてから。飲酒運転は法律で禁止されています。
妊娠中や授乳期の飲酒は、胎児・乳児に悪影響を与える恐れがあります。
妊娠中や授乳期の飲酒は、胎児・乳児に悪影響を与える恐れがあります。