【contents】
・熱燗とは？
・熱燗の作り方
・熱燗を美味しくする日本酒グッズ4選
・熱燗におすすめの日本酒の選び方
・熱燗のおすすめの飲み方
・まとめ

寒い季節に恋しくなるのが熱燗である。

熱燗は単に体を温めるための日本酒の飲み方ではない。温度によって変化する日本酒の多様な味わいと香りを楽しむための、奥深い飲み方である。
熱燗の世界を存分に楽しむためには、いくつかのコツを抑えることが重要だ。

そこで今回の記事では、熱燗の基本からツウ好みの楽しみ方までを詳しく解説する。
自宅でレンジを使って簡単に美味しい熱燗をつくる方法や温度の違い、熱燗をつくるためのグッズも紹介するので、日本酒好きはぜひ最後までご覧いただきたい。

熱燗とは？

熱燗は寒い季節に欠かせない日本酒の飲み方だが、熱燗は適温かご存じだろうか？

ここでは、熱燗の定義や美味しい温度帯について詳しく紹介していこう。

熱燗は燗酒のうちの一つ

「燗酒」とは温めたお酒のことであり、熱燗はそのうちの一つだ。

日本酒の飲み方は冷酒、常温、ぬる燗、熱燗などが世間一般に知られているが、ぬる燗と熱燗は燗酒にカテゴライズされる。

熱燗は50度前後に温めたもので、この温度帯では日本酒の香りがシャープになり、甘味が引き締まった辛口な味わいとなるのが特徴だ。

熱燗は燗酒というカテゴリの中の一つであることを頭に入れておこう。

温度で変わる燗酒の種類

燗酒は温度によって味わいや香りが大きく変化する。

以下の表で、主な燗酒の種類と特徴を見てみよう。

燗酒の種類	温度	特徴
日向燗	約30度	香りやほのかな甘味が引き立つ
人肌燗	約35度	米や麹の香りが強調される
ぬる燗	約40度	甘味やコクが増す
上燗	約45度	引き締まった香りがする
熱燗	約50度	辛口で切れの良い味わい
とびきり燗	約55度	シャープな辛味とアルコールを感じる

このように、燗酒の味わいや香りは温度に大きく左右され、温度が上がるにつれて香りや甘味が徐々に強まっていく。しかし、ぬる燗から上燗に移り変わる40〜45度付近で、キレの良いシャープな飲み口に切り替わるのが特徴だ。

日本酒の温度を少しずつ上げながら、自分好みの温度を見つけていくのも一つの楽しみ方だろう。季節や気分、料理との相性なども考慮しながら、さまざまな温度帯の燗酒を試してみてはいかがだろうか。

熱燗の作り方

画像著作者：freepik（外部サイト）

熱燗は自宅でも簡単につくることができる。

熱燗の作り方はさまざまあるが、ここではシンプルで家庭でも再現しやすい湯煎と電子レンジを使った2つの方法を紹介しよう。

湯煎で温める

湯煎は美味しい熱燗をつくるのに適している。

日本酒を均一に温めることができるため、日本酒の持つ香りや旨味を引き出すことができる。以下が湯煎で熱燗をつくる手順だ。

【必要な道具】
・徳利
・鍋

【手順】
1.徳利に日本酒を八分目まで注ぐ。
2.鍋に水を張り、徳利が肩まで浸かるようにする。
3.火をかけて水を沸騰させ、火を止める。
4.徳利を熱湯の中で2〜3分温める。
5.徳利の底を触って温度を確認する。

ここでポイントとなるのは、鍋の火を止めてからじっくり温めるところだ。急激な温度上昇を避けることで、日本酒の風味を損なわないようにする。

鍋や徳利の素材によって温める時間は変わるので、好みの温度が再現できるよう何度か試していただきたい。

湯煎でつくる熱燗は、やわらかな飲み口と心地よい香りに仕上がるのが魅力だ。後述する電子レンジでつくった熱燗と飲み比べることで、その違いがわかるだろう。

温度にこだわりたい人は、温度計を購入することをおすすめする。また、湯煎するお湯の温度は80度前後にできるとベストだ。

電子レンジで温める

熱燗は電子レンジでもつくることができる。

湯煎よりも手間がかからず、より手軽だ。

【必要な道具】
・徳利
・ラップ

【手順】
1.徳利に日本酒を入れ、口をラップで覆う。
2.500ワットで約40秒加熱する。
3.一度取り出して徳利を振り、温度を均一にする。
4.再度加熱し、好みの温度に調整する。

電子レンジでつくる熱燗は、電子レンジの性能によって温度の上昇のばらつきが大きい。慣れないうちは10秒ずつ加熱してみるとよいだろう。

また、電子レンジは温度ムラが出やすいため、加熱後に徳利を振って温度を均一にすることをおすすめする。加熱によって香りが飛ぶことを防ぐために、徳利の口をラップで覆うこともポイントだ。

熱めの燗酒を電子レンジでつくり、常温の日本酒を加えることで温度調節するという手法もある。この手法は温度を調節できるほか、加熱によって失われた日本酒の香りを補強することもできる。少し手間はかかるが実践する価値はあるだろう。

徳利が無いときの代用品

熱燗を楽しみたいのに徳利がない。そんなときでも、身近なアイテムを使うことで熱燗をつくることは可能だ。

ここでは徳利の代用品として使えるものを紹介しよう。

マグカップなどの耐熱容器

マグカップなどの耐熱容器は徳利の代わりとして最適だ。

おちょこなどのほかの器に注ぐ必要が無く、そのまま熱燗を飲める点もメリットだろう。

これらの容器を使う際は、電子レンジでの熱燗づくりが手軽でおすすめだ。加熱する場合は500ワットで約40秒が目安となる。徳利よりも口が広く香りが飛びやすいため、必ず口をラップで覆ってから加熱してほしい。

湯煎の場合はお湯の温度を80度程度に保ち、2〜3分浸けることで「ぬる燗」や「熱燗」を調整できる。ただし、グラスそのものが熱くなり鍋から取り出しにくくなるので、注意が必要となる。

マグカップのほかには、湯呑茶碗や耐熱グラス、ミルクピッチャーなどでも代用可能だ。

カップ酒や小瓶の日本酒

カップ酒や小瓶の日本酒は容器のまま熱燗にすることができる。

湯煎と電子レンジのいずれも対応可能だが、カップ酒や小瓶の場合は湯煎をおすすめする。

湯煎の場合は徳利を温めるのと同じ要領となるが、必ず栓を外してから加熱しよう。日本酒は温めることでアルコールが膨張し、酒の容量が増える。瓶が破裂する可能性もゼロではないので、栓を外すことを忘れないでほしい。

電子レンジで熱燗をつくる場合も、同様に栓を外してから温めてほしい。特にワンカップは内蓋が金属になっているため、必ず蓋を外す必要がある。

電子レンジの加熱目安はワンカップで500ワット 1分以内だ。小瓶はワンカップよりも容量が大きいため追加の加熱が必要となる。温度ムラを防ぐために瓶を適宜振りながら、数回に分けて加熱するとよいだろう。

熱燗を美味しくする日本酒グッズ4選

熱燗をより美味しく楽しむためのグッズがある。

ここでは、4つのアイテムを紹介しよう。

徳利

徳利は日本酒を注ぐための伝統的な器だ。

ひょうたん型の形状は日本酒を注ぎやすいつくりとなっており、熱燗をつくるためにもぜひ用意しておきたいグッズである。

徳利は陶磁器製のものが多く、熱伝導率が低いのが特徴だ。湯煎することで日本酒はゆっくりと温められ、お湯から引き上げた後も温度が下がりにくい。

家庭で熱燗を楽しみたい場合は、まず徳利から揃えることをおすすめする。徳利と合わせておちょこも購入するとよいだろう。

ちろり

ちろりは江戸時代から使われ始めた、金属でつくられた筒型の容器だ。

使い方は徳利と同様で、ちろりに入れた日本酒を湯煎して燗酒をつくる。ちろりの素材であるスズや銅は、熱伝導率が高く素早く日本酒を温めることができる点が最大のメリットだ。

また、ちろりを使うと酒がまろやかになるといわれている。これはちろりに使われる金属の種類や厚みによって変わるのだが、特にスズ製のちろりはまろやかで旨い燗酒に仕上がる。

こだわりの熱燗をつくりたい方は、スズ製のちろりの購入を検討してみてはいかがだろうか。スズ製のちろりは高価なので、アルミやステンレスなど安価なものから試すのもよいだろう。

酒燗計

酒燗計は日本酒の温度を正確に測るためのツールだ。

日本酒を好みの温度に調整しやすく、一貫した味わいを楽しめる。また、酒燗計をちろりや徳利の中でかき回すことで、酒の温度を均一にする使い方もできる。

熱燗を本格的に楽しみたい人には欠かせないアイテムだ。

酒燗器

酒燗器は日本酒を簡単に温めるための専用機器だ。電気式とお湯で温めるタイプがあり、温度調節が可能なものもある。

毎日の晩酌で手軽に熱燗を楽しみたい人におすすめのアイテムだ。

熱燗におすすめの日本酒の選び方

熱燗を楽しむなら、日本酒の種類にもこだわりたいところだ。

ここでは熱燗に適した日本酒の種類と、避けるべき種類について解説しよう。

ぬる燗におすすめ：【純米酒】

純米酒は、ぬる燗（40度前後）におすすめだ。

純米酒は米と米麹のみを使用して醸造されるため、米の自然な風味が豊かに感じられる。ぬる燗にすることで米の甘みと旨味がさらに引き立ち、ふくよかな味わいを楽しむことができる。

特に、生もと（きもと）造りや山廃（やまはい）仕込みの純米酒はぜひ温めて飲んでいただきたい。これらの日本酒はアミノ酸や乳酸を豊富に持ち、複雑で奥深い旨味を持っている。

温めることで甘味・酸味・苦味・旨味のバランスが整い、その芳醇な味わいが一層際立つだろう。煮込み料理や肉料理、チーズなどと合わせることで、素晴らしいペアリングを楽しめるはずだ。

熱燗におすすめ：【本醸造酒】

本醸造酒は上燗や熱燗に適している。

本醸造酒には醸造アルコールが加えられているため、すっきりとした飲み口が特徴だ。その魅力を燗酒で生かすには、50度前後の高めの温度がよいだろう。

熱燗にすることで引き締まった甘味とアルコールの刺激がドライな味わいを生み出し、体全身が温まる感覚を楽しめる。

その辛口な味わいから料理との相性も抜群だ。刺身や焼き物、揚げ物、鍋物、珍味まで幅広く合わせることができる。

熱燗にNGなもの：【吟醸酒】【大吟醸酒】

吟醸酒や大吟醸酒は基本的に熱燗に不向きとされている。

これらの酒は繊細な香りが特徴で、冷やして楽しむのが一般的だ。「吟醸香」と呼ばれるフルーティーな香りは熱に弱く、燗酒にすることで吟醸酒本来の味わいを損なってしまう可能性がある。

しかし、吟醸系の日本酒は絶対に冷やして飲まなければならないものでもない。中には温めることでフルーティーな香りが増幅される吟醸酒もある。

ぬる燗程度であれば吟醸酒も燗酒で楽しめるので、興味のある方は試してみてほしい。

熱燗のおすすめの飲み方

日本酒にはただ温めて飲むだけでなく、熱燗から派生した飲み方があることをご存じだろうか。

ここでは、日本酒ツウも愛用する熱燗の楽しみ方を3つ紹介しよう。

ヒレ酒・骨酒

ヒレ酒と骨酒は、魚の旨味や風味を日本酒に移し込んだ独特な飲み方だ。

ヒレ酒は乾燥させたフグのヒレを香ばしく炙り、熱燗の日本酒を注いで楽しむ。火をつけることでヒレの香ばしい香りと旨味が引き立つのだ。

骨酒は焼いた魚の骨を熱燗に加えると、魚の旨味が日本酒に溶け出し、まるで出汁スープのような味わいを楽しめるのだ。骨には鯛や鮎など淡白な白身魚が向いている。

これらの飲み方は、戦後の日本で安価な日本酒を美味しく飲む方法として、漁師の間で親しまれていた。現在ひれ酒と骨酒は、日本酒を楽しむユニークな飲み方として認知されている。

使用する日本酒は高級酒ではなく、香りや味が控えめな普通酒や本醸造がおすすめだ。

出汁割り

出汁割りは日本酒を出汁で割って飲むスタイルだ。

一般的に、日本酒と出汁を1:2または1:3の割合で混ぜる。出汁には鰹節や昆布から取ったものが多く使われ、日本酒の持つ旨味成分との相乗効果を発揮する。

出汁割りに使う出汁はおでんはもちろん、鍋などのスープ料理でも代用可能だ。おでんや鍋と日本酒を楽しんだ後には、出汁割りで締めてみてはいかがだろうか。

燗冷まし

燗冷ましとは、熱燗程度まで温めた日本酒をぬる燗や常温にまで温度を下げて飲む特殊な飲み方である。

日本酒は温めることで雑味やアルコール、香りなどの成分が徐々に抜けていく。そのため燗冷ましの日本酒は、一度も温めていない状態よりもマイルドでまろやかな味わいを楽しむことができるのだ。

しかし、燗冷ましはどんな日本酒でも美味しく飲めるというわけではない。温度を上げることで、雑味のほかに日本酒のよい成分も同時に失われてしまうからだ。

燗冷ましが美味しい日本酒は、もともとの味わいがしっかりしているものに限られてくる。そのため日本酒ツウの間では、「燗冷ましが旨い酒は本当によい良い酒である」と考えられているのだ。

熱燗を飲む際には、ぜひ冷めた状態にして、燗冷ましと常温の飲み比べをしてみてほしい。

まとめ

熱燗は日本酒を楽しむ伝統的な方法であり、その魅力は奥深い。

この記事では、熱燗の基本からレンジで美味しくつくる方法、楽しみ方まで幅広く解説してきた。

熱燗は単に体を温めるためではなく、温度によって変化する日本酒の奥深い飲み方でもある。

この記事を参考に、自分好みの熱燗スタイルを見つけ、日本酒の奥深さを堪能してほしい。

著者プロフィール

クマクラ
JSA認定 SAKE DIPLOMA。業務用酒販店勤務の元営業。酒どころ新潟県出身。地元酒蔵の杜氏の口から出た「酒はロマンですよ」との言葉に胸を打たれる。
発酵や蒸留など理系的な側面と、歴史や宗教など文化的な側面から酒を楽しんでいる。酒販店勤務の経験と、趣味で得たお酒の知識を活かしてライターとして活動中。大衆酒場と大瓶ビールをこよなく愛する。

飲酒は20歳を過ぎてから。飲酒運転は法律で禁止されています。妊娠中や授乳期の飲酒は、胎児・乳児に悪影響を与える恐れがあります。

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