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【プラモデル】戦艦、航空機、戦車など“神作”まとめ
「あ、赤い彗星だ…に、逃げろー」連邦軍が感じた『シャアザク』の“恐怖”と“絶望”をジオラマで追体験
人間の視点から見た巨大モビルスーツの存在感を表現
【あわくし】物語を考えて、それを情景に織り込んでいけるように配慮しています。単体の作品に比べて色々と仕込みやすいので、分かる人だけが気づくようなポイントを作るのが楽しいですね。作品を見た人が細かい仕込みに気づいて、それについて質問されたりするとすごく嬉しくなります。
――2013年ごろからガンプラ制作に復帰されたそうですが、自身が「成長したな」と感じられたターニングポイントを教えてください。
【あわくし】もともとディテールにこだわるのは好きでしたが、なんでもかんでも詰め込みすぎて逆にカッコ悪いと感じたことがありました。ディテールを詰めるところと、あえて詰めないところのメリハリをつけて全体のバランスをとったほうがカッコよくなると気づいたんです。それが、自分の中に新しい価値観が生まれた瞬間です。
――なるほど。では、ガンプラを制作してカタルシスを感じる瞬間は?
【あわくし】塗装終了後のウェザリング作業は、プラモ制作における最後のディテールアップだと思っています。そのウェザリングによって世界観やスケール感がアップする瞬間が堪らなく好きですね。
――今回紹介しているジオラマ『赤い彗星の恐怖』のコンセプトを教えてください。
【あわくし】圧倒的な強さを誇る巨大なモビルスーツが目の前に現れ、絶望感につつまれたサラミス艦橋の様子を表現しました。1/48 MS-06S シャア・アズナブル専用 ザクIIのキットを使用して細かいところまで作り込むことで、「人間の視点から見た巨大モビルスーツの存在感」を表現できないかと考えました。手前のサラミス艦橋からシャア専用ザクを見上げることで、その恐怖を追体験できるようなジオラマを目指しました。
――1/48というメガサイズならではの苦労もあったのでしょうか。
【あわくし】メガサイズはHG(1/144)と比べると面積比で9倍、体積比では27倍にもなります。工作ではディテールを作っても作っても空間が埋まりませんし、塗装でもすぐにエアブラシのカップの塗料がなくなりました(苦笑)。
――当キットにはバズーカがついていませんね。
【あわくし】はい。このキットには付属のバズーカがついていないため、配管などに使う塩ビパイプで作成しました。ほぼフルスクラッチだったので大変でした。完成した後、量産型ザクのキットには付属のバズーカがついていたことを知り、愕然としました(笑)。
シャアザクの凄さは、機体の性能よりも「シャア」という人間の性能に起因
【あわくし】手前のサラミス艦橋の表現は色々と迷いました。艦橋を全部作ってしまうとザクが見えなくなってしまうため、フロアだけを作ることにしました。チープにならないか不安でしたが、艦橋内の小物や人物のディテールにこだわることでチープ感が出ないよう気を配りました。
――この作品で最もこだわったポイントを教えてください。
【あわくし】せっかく大きなキットを作っているので、モノアイが動いたら面白くないか?と考えました。そこで、やったことのない電子工作をネットで調べて、マイコンボードやサーボモータを購入して見よう見まねで仕込みました。幸いにも仕事の関係でプログラミングはできたのでモノアイの移動速度の制御はこだわっていて、左右に動いたあとLEDの光量を制御することで「ぐぽーん」と光らせています。展示会で作品を見ている人が、急にモノアイが左右に“きゅるきゅる”っと動いて驚く姿を見ると、仕込んでよかったなと思います(笑)。
――あわくしさんにとってシャア・アズナブルはどんな存在ですか?
【あわくし】圧倒的な能力でパーフェクトな存在と思いきや、時に迷いや弱さを見せる“人間らしさ”が魅力的です。自分は「量産兵器」が好きで、名も無き兵士が駆る機体を作ることが多いのですが、映画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』でルウム戦役の戦場を疾駆するシャアザクのカッコよさを見て、この機体を作らずにはいられなくなりました。
――シャア専用ザクの魅力を教えてください。
【あわくし】この機体を作る時に「シャアザクはなぜ3倍なのか」を自分なりに考えました。『THE ORIGIN』の中でもそれは描かれている気がして参考にしました。それで、機体の性能というよりはシャアという人間の性能なんだろう、という考えに至りました。シャア以外には操れないピーキーな機体、それこそがシャア専用ザクの魅力だと思います。
――今後、どんなジオラマを制作したいですか?
【あわくし】この『赤い彗星の恐怖』は劇中のシーン再現を意識した作品ですが、次はガンダムの世界観を自分なりに拡張して、妄想全開のジオラマを作りたいです。多くの人に愛されているガンダムの世界観を守りつつ、誰も見たことないものを作り出せたら嬉しいです。
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