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【ガンプラビフォーアフター】ヤラレ役のボール&ジムを魔改造「ガンプラは妄想を叶える“魔法のキャンバス”」

 今年40周年を迎える『機動戦士ガンダム』シリーズ。世界的にも人気な強力IPだが、その礎のひとつとなったのは1980年代前半のガンプラブームである。そんな「ガンプラ」進化の一翼を担ってきたモデラーの“匠の技術”について、人気モデラーのRIHITOさんにインタビュー。ガンプラの製作過程を公開するようになった理由や緻密なスジボリ技術など、ガンプラ“匠の技術”の舞台裏を聞いた。
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ガンプラ製作過程で「魅せる」ことの重要性

――RIHITOさんがガンプラにのめり込んだ理由はなんでしょうか。
RIHITO『GBWC(ガンプラW杯)』世界チャンピオンのシュンさんのニューガンダムを直接見た事で刺激を受け、自分自身でガンプラの製作をするようになりました。

――シュンさんは、日本人として初めて『ガンプラW杯』世界一になった方ですね。
RIHITOニューガンダムとはあまりにも突然の出会いであり、視界に入ったその瞬間に呼吸が止まり、周囲の雑音が聞こえなくなったのと同時に、「なんて精密で正確な工作技術なんだろう!」と感動しました。その感動に刺激され、自分でも製作してみようと決めました。

――RIHITOさんのInstagramでは、製作過程の画像を投稿しています。その意図を教えてください。
RIHITO製作中の部品を眺めてはニヤニヤと一人の世界を楽しんでいる時、妻が「何それ?綺麗だね!」と興味を示してくれた事に嬉しさを覚えました。話を聞いてみると綺麗に塗装された小さな部品が整然としていて、なんだかアクセサリーのように輝いて見えたようです。製作途中のガンプラはその部品の一つひとつに魅力があると感じ、アルバムを作ればこの魅力を共有できるのではないかと考え、製作過程を公開するようになりました。

――RIHITOさんのインスタは海外の方のフォロワーも多いです。海外の方の反応はどうでしょうか。
RIHITO海外モデラーにはこの観点が新鮮なようで、「(いい意味で)クレイジーだ!完成が見たくてもう待てないよ!」との声を頂く事がありました。また、国内モデラーの間では主流となっている特殊なツールや塗料でも海外では流通していない場合もあるようで、「どうやったらそんな工作ができるの?どんなツールを使っているの?」という質問もよく寄せられます。

――モデラーにとってSNSの活用は主流になると思いますか?
RIHITOすでに主流になっていると思います。この世界に足を踏み入れて日の浅い私が言及するのも恐縮ですが、以前は専門誌媒体や展示会などでしか作品を披露する事ができなかったと思います。しかし、今やSNSではリアルタイムに高品質な画像を誰でも自由に投稿してシェアする事ができます。模型製作を生業にしていらっしゃる方々にとっても、自身の作品を披露あるいはアピールできる絶好のフィールドとなっていると思います。

――海外モデラーの技術進歩をどう感じていますか?
RIHITO見る人の視線を誘導するようなダイナミックな躍動感と色使い、精密な工作に加えてストーリー性も重視しているように感じます。ガンプラとは関係ないですが、ヨーロッパの芸術家は彫刻のように無駄を削ぎ落してデザインし、日本人は形になるよう盛ってくっつけてデザインするという話を聞いた事があります。文化や伝統の影響やデザインに対するアプローチが異なる事が、作風の違いに関係しているのかもしれませんね。

ジムやボールは工業的な視点で観ても“無駄がなくカッコイイ”

――あえてガンダムを作らず、脇役であるジムやボールをメインにする理由は?
RIHITOジムやボールはシンプルなデザインで余計な装備も無く、兵器としてはちょっと心もとない雰囲気がありますが、工業デザイン的な視点で観ると洗練された無駄のないデザイン、つまりカッコいいと解釈できるのではないかと私は考えます。ガンプラをカッコよく強そうに仕上げるという目標は誰もが目指すと思いますが、シンプルな脇役だからこそ、自分の手でカッコよく育てられるという魅力があるのだと感じます。

――RIHITOさんのジムやボールは、精密で美しいスジボリのデザインが特長です。スジボリの難しさはどこにありますか?
RIHITO大きく2点あります。1点目はタガネなどを駆使した線を綺麗に彫る技術力。タガネの力の入れ具合、刃を入れる角度や彫るスピードなど正確に行うところが難しいです。2点目はパネルラインや線の組合せのデザイン力。カッコよく線を引く法則みたいなものは『ガンプラW杯』でも確認する事はできますが、対象の部品に合うようにアレンジする必要があります。果たしてこれはカッコいいのか?と常に自問自答の繰り返しで洗練させていきます。あと、私は必ず実物を観察するようにしてきました。特にお台場のGBT(ガンダムベース東京)がオープンした当初は、毎週のようにお気に入りのプロの作品をじっと観察し、彫る深さや刃の入れ方、角度などを入念に調べる事に注力しました。この点は紙媒体やモニターを通して理解する事はとても難しいと思います。

――他の人とのスジボリテクの違いはどこでしょうか。
RIHITO私はなるべくユニークなデザインにする事を心がけています。兵器としての魅力を維持しつつ、独特のキーデザインを全身に彫り込んでいく事で、“STUDIO RIHITO”の作品であると一目でわかるように意識しています。並行する直線を互い違いに斜めに横切るラインを組合わせた「ROD LINE」など自分で勝手に命名して楽しんでおります。

――RIHITOさんにとってガンプラとは?
RIHITOガンプラをきっかけに全国に私の製作を強力にサポートしてくれる多くの仲間とリアルで出会い繋がる事ができました。それは模型作りの枠を超えて仕事やプライベートなどのライフスタイルに鮮やかな彩りを与えてくれるコミュニケーションツールであり、妄想・理想や技術力を手軽に表現できる魔法のキャンバスのような存在です。

(C)創通・サンライズ
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