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どちらがイラスト? “脳がバグる”ガンプラ第一人者の“色えんぴつ風”作品「アイデアの源泉は“転用”」

 三次元のガンプラが立体感を失い、平面的に見てしまう“脳がバグる”イラスト風作品。ガンプラシーンではすっかり定着した手法だが、そのシーンを引っ張り続けてきたのが、モデラーの今日さん(@kyo512a)。アニメ風、箱絵風、水彩画風など、豊かな発想から作品を次々と発表し、シーン定着に一役買った。今回紹介する“色えんぴつ風”塗装の作品も、まだイラスト風が黎明期だった2018年に発表し、絶賛されたもの。なぜ同氏は、次々と斬新な作品を生み出すことができるのか? 本作制作の裏側と合わせて、同氏に話を聞いた。

実物作品と実際の絵を並べて「どちらがプラモでしょう?」というアイデアから制作

――昨年11月に、ガンダムキャリバーンをおそらく世界初(?)の“水彩画”風塗装で仕上げた『水彩の魔女』を取材させていただき、ありがとうございました。
今日こちらこそ、ありがとうございました。おかげさまでとても好評で、「イラスト風塗装は数あれど、“水彩画風”は今まで見た事がない!」「凄い!」との声をいただき、とてもうれしかったです。

――その余韻も冷めぬなか、ジェガンをモデルにした“色えんぴつ風”作品を拝見しました。
今日実は、本作は2018年に制作したもので、作品名は『ジェ画ン』。プレミアムバンダイ限定の「HGジェガン F91版ノーマルタイプ」を使用して制作しました。

――本作はどういうきっかけで制作されたのですか?
今日2018年当時、某量販店のガンプラコンテスト用に「HGUCリ・ガズィ」を使用して、こちらの前作にあたる『リ画ズィ』を制作しました。本作もその要領で制作したのですが、実物作品と実際の絵を並べて「どちらがプラモでしょう?」というアイデアを思いつき、一発ネタ作品にしました(笑)。

――ご自身は、ジェガンになにか特別な思い入れでもあったのですか?
今日ジェガンは量産機の中でも、シンプルさとスタイリッシュさを兼ね備えたデザインがとても好みです。アニメでも『機動戦士ガンダム逆襲のシャア』から『機動戦士ガンダムF91』と、劇中で30年の時が空いているにも関わらず現役で稼働している、という設定も好きですね。マイナーチェンジされ『機動戦士ガンダムUC』『機動戦士ガンダムNT』『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』など新規アニメにより、出番が大幅に増えたのがうれしかったです。

ジェガンがモデルなのは、前作「リ画ズィ」同様、「ガ(画)」が入っているから

――色えんぴつで描いたような「イラスト風塗装」もあまり見たことがないのですが、なぜ、ジェガンをベースにしようと思われたのですか?
今日「イラスト風塗装」といいつつも、2018年当時は「アニメ塗り」くらいしか表立ったバリエーションがなかったため、別のアプローチが出来ないかと試行錯誤し、アナログイラストの塗りに使っていた色鉛筆をガンプラに用いてみました。どうせならと絵画で使っていた画用紙と額縁も用意し、“色えんぴつ画風”作品としました。モチーフがジェガンなのは、先述の私の好みと、前作の「リ画ズィ」同様『逆襲のシャア』つながり、デザインがシンプル、そして一番重要な名前に『ガ(画)』が入っているところです(笑)。

――本作を作る際に一番こだわったところ・苦労した部分をそれぞれお教えください?
今日「どちらがプラモでしょう?」というネタをやりたかったので、プラモの方はペンでエッジに線を引いてから色えんぴつにて塗装。隣の絵はプラモの写真をトレースし、同様の手順で質感も合わせるためにプラペーパーの上に描きました。本体後ろの影も描いています。自分の画力が至らなくて、両方見比べたらすぐにバレてしまうのが悔しいですが(笑)。

――発表されたときは、驚きの声が多かったのではないですか?
今日ちょっとしたエンタメのつもりで発表しましたが、乗ってくださる方が多くて、なかには戸惑う方もいらっしゃり、目論見通りになってうれしかったです。当時、どちらがプラモに見えるのかアンケートを取ったら9割の方に見抜かれました(笑)。

――目が肥えたフォロワーさんが多いですね(笑)。発表されて以降、さまざまな手法がSNSで拡散し、「イラスト風塗装」も今ではメジャーなガンプラの手法として浸透してきました。「イラスト風塗装」作品を生み出すとき、どんなところに注意すればいいのでしょうか?
今日二次元に見せたいのであれば、模型単体の擬似的な輪郭線であるエッジへの線入れ、1枚絵のように見せたいのであれば、背景があると“二次元風”に見せられる度合いが高まると思います。僕もなかなか上手くいかないのですが、写真に撮る際に模型にできる「落ち影」を見えなく出来れば、立体感がなくなりいわゆる“脳がバグる”状態を生み出せるでしょう。

斬新、奇抜と言われるアイデア「僕としては、イラストの技法を模型に転用しているだけ」

――ご自身は、セル画風(アニメ塗り)や、箱絵風はもちろん、先日の“水彩画風”など、“脳がバグる”作品の可能性を追求されています。斬新かつ奇抜なそのアイデアは、どのように湧き上がっているのですか?
今日よくそう言われますし、非常にありがたいのですが、僕としては、イラストの技法を横展開して模型に転用しているだけなんですよね。「枯れた技術の水平思考」ではないですが、模型とは別ジャンルのイラストの世界で定着している表現技法を使っているので、模型畑の方からはなじみがなく、奇抜そうに見えるのだと思います。

――「枯れた技術の水平思考」?
今日イラスト・絵画の技法は、すでに先人の方々によって膨大な量が研究されています。僕は手法を生み出すというよりも、その技法のなかからどんなものが模型に使えそうかチョイスしているだけ。それを見つけていく楽しみが(多くの手法で作品を生み出す)原動力になっています。

――ちなみに、今転用できないかと考えている手法はありますか?
今日最近は、模型の塗装に「グリザイユ画法」を取り入れています。これはもともと、15世紀頃からある油絵の技法で、陰影を白と黒の濃淡のみで表現し、その上から薄いカラーを重ねて塗っていく技法です。現在でもデジタルイラストの塗りで使われることが多いです。

――15世紀の手法が現代のデジタルイラストにも通じているんですね。ちなみに最近の他のモデラーさんの作品はご覧になっていますか?
今日はい、現在はイラスト風作品を制作される方も増え、そのモデラーさんのさまざまな技術や視点・アプローチに驚かされるばかりです。

――イラスト風作品をけん引する立場でありつつ、新たなモデラーさんからも刺激を受けているんですね。それでは、最後に今年のモデラーとしての目標を教えてください。
今日昨年、あまり活動しきれなかったので、今年はその分を取り返す勢いで制作活動をしていきたいと思っています。イラスト風作品の新たな表現方法も開拓、またイラスト風に興味を持ったモデラーさんの手助けも出来ればなと思っています。

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