アニメ&ゲーム カテゴリ
ORICON NEWS

「もって春まで」腎臓がんで余命宣告、“人生最後”までガンプラを作り続ける理由「子どもたちと制作することは最高の幸せ」

 もし突然、医師から余命を告げられたら、あなたは残された時間で何をしようと思うだろうか? ガンプラモデラーのPajaさん(@paja7777)は、2021年に47歳という若さで腎臓がんと診断され、昨年余命宣告を受けた。一時は落ち込んだ同氏だが、家族の支えもあって、今では自身の病状などをブログ、YouTube、Xで精力的に発信。また、趣味であるガンプラ制作にも精を出している。体力的にも厳しくなるなか、なぜここまでバイタリティあふれる活動を行えるのか? この背景や子どもたちへの想い、さらに「ガンプラ」が自身にもたらしてくれたものまで、話を聞いた。

「もう子どもたちが成人した姿を見られない」落ち込んでいた日々からの立ち直り

――ご自身のブログやX、YouTubeなどでも公表されている「がん」は、いつ、どういったきっかけで発覚したのでしょうか?
paja2021年5月に突然、左の背中に激痛(内臓を殴られ、握りつぶされているような痛み)が走り、救急搬送されました。CT検査を受けると左腎臓に7センチの腫瘍が見つかりました。さらに後日病院から電話がかかってきて、「この腫瘍が肺に転移している」とのことで、すぐに検査、生検を受け、腎臓がんが発覚しました。この痛みが発生する前は全く無症状でした。また発覚時既に両肺、膵臓、左副腎臓、右腎臓、腹部リンパ節に転移が認められました。

――突然のことに、さぞ驚かれたのではないですか?
pajaショックでした。ですが、告知を受けた時は病状の理解が足りなく「根治するもの」と思い込んでいたので意外と平然としていました。ただ、ネットで自分の病状を調べれば調べるほど、深刻な状況だということに気付きました。自分の現状を調べると、ステージ4だということが分かり、5年生存率の低さに驚きました。治療していくなかで、主治医の先生に私のがんは「根治不能」と言われました。「たとえ、寛解(癌細胞がCT等に映らない状態)したとしても抗がん剤は一生続けなければならない」とも言われました。

――つらいですね…。
paja「もう子どもたちが成人した姿を見られない」。そこから、毎日、毎日泣いてばかりの生活が始まりました。「抗がん剤を続けて仕事は続けられるのか?」「家族をどうやって守っていけば良いのか」「子どもたちはちゃんとした学校に行けるのか」「私はどんな感じに弱っていくのだろう」。そんなことを考えて毎日を過ごしていました。

――そんななか、現在SNSを使って、病状はもちろん、ご自身の日常やガンプラの制作状況を明るく伝えていらっしゃいますが、どのようにその状況を脱したのですか?
pajaある日、くよくよして過ごす24時間と、明るく楽しく過ごす24時間のどっちが良いかということを考えました。現実を、現実として受け止め、何が一番良い行動か、何ができるのかを考えた上で明るく楽しく生活していこうと決めました。

――その陰には奥さまの存在も大きかったと伺いました。
pajaはい。告知を受けたとき、妻は言葉を失ってしまい何も言いませんでした。そして「頑張って治療するしかないよ」と。私のがんが発覚して「先の不安がたくさんあった」と言っていましたが、妻はポジティブな性格なので、「治療を頑張って治していく」という考え方に切り替えました。

自身の病状を積極的に発信「体の異変の始まり方などは情報が存在しない」

――ブログやSNSでの情報発信を行っているのは、どういった思いからだったのですか?
pajaがんが発覚した時、病気の状態や5年生存率という情報は存在するのですが、どんなふうに弱っていくのか、体の異変の始まり方などは情報が存在しないのです。これは、がんという病が十人十色で同じ経過を辿る人がいないから。ですが、自分自身のことは記すことができる。そして、ひとりでも多くの人が、がんを早期発見し、早期治療できることを願って出来る限り細かく記載しています。また、今も闘病しているがんサバイバーの皆さまにとっても、必要な情報になるかと思い情報発信を行っています。

――ご自身のお体のことで手一杯になりそうなところ、他の人のために…。本当に頭がさがります。
pajaありがとうございます。絶望だけじゃない幸せや夢は、どんな状況・状態であっても必ずある。幸せもたくさんあって、心が前向きだとたくさん見つけられる。夢を追うことだって出来る。生きている限り、未来の可能性は無限大だという思いもあり、詳細に記載しています。知らなかったという方も、YouTube、ブログをぜひ一度、見に来てください。
――差し支えなければ、現在の病状と治療の状況を教えていただけますか?
paja原発巣は、左腎臓(左腎臓、左副腎臓全摘出手術済み)。転移巣は、左副腎臓(左腎臓、左副腎臓全摘出手術済み)。右腎臓(抗がん剤治療のみ)。腹部リンパ節(抗がん剤治療のみ)、膵臓(抗がん剤のみ)、右肺2ヵ所の転移巣あり(放射線治療済み:現状維持)、左肺3ヵ所の転移巣あり(放射線治療済み:現状維持)、肝臓10ヵ所以上の転移巣あり(抗がん剤のみ)、第一腰椎転移巣あり(放射線治療済み:現在増大傾向)、第四腰椎転移巣あり(放射線治療済み:現状維持)、第二胸椎転移巣あり(放射線治療済み:現状維持)、第十二胸椎転移巣あり(放射線治療済み:現状維持)、左第三肋骨転移巣あり(抗がん剤治療のみ)、右第三肋骨転移巣あり(抗がん剤治療のみ)、右肩甲骨転移巣あり(抗がん剤治療のみ)、縦隔リンパ節(抗がん剤治療のみ)、前頭葉転移巣あり(経過観察中:大きくなった場合、放射線治療予定)、小脳転移巣あり(放射線治療済み)。

――これらによって、体にはどのような影響が出ているのですか?
paja歩行障害、右足首が動かなくなってしまいました(姿勢の問題、筋肉を柔らかくする薬で対処)。腰から胸にかけての痛み(医療用麻薬にて対処)。胸が締め付けられる痛み(医療用麻薬にて対処)。めまい(対処なし)。抗がん剤治療による倦怠感(対処なし)。左人差し指〜小指にかけて痺れ(対処なし)。右人差し指、中指に痺れ(対処なし)。血痰、肺の転移巣からの出血(出血がひどい場合、止血剤で対処)。ムーンフェイス、ステロイド治療の副作用(対処なし)。

――対処できないこともたくさんあるのですね…。
paja肝不全、肝臓の転移巣が大きくなると肝不全が起きてしまいます。現状、今春までもつかどうかと言われています。少し前までは、2023年内に肝不全が発生すると言われていましたが、11月の緊急入院時に縮小傾向という判定をもらい、延命できると判断されました。ですが、現在使用している抗がん剤の効果を考えると、もって春までと言われています。私の場合、肝臓が最後に転移する臓器だと言われています。このため、肝臓に転移が現れてしまったので余命宣告を受けました。余命の計算は、現在の状況と現在の医学で統計値を元に計算されるものなのでほぼ当たらないとも聞いています。

ガンプラは人生最後の趣味「これからもグロス仕上げの作調を崩さず続けていく」

――余命宣告を受け、体力的には厳しく、体にも不自由があるなかでも、「ガンプラ」の制作を進められています。その原動力は、どこから湧いているのでしょうか?
paja夢や目標を達成させるためなら頑張っていけます。どんなに体がキツイ時でも、クオリティは下げたくないですし、制作したいガンプラは、まだまだたくさんあります。親友との約束や、家族の協力、Xやブログのフォロワーさんの応援のメッセージがあるからこそ頑張っていけます。

――先日投稿されたX・ブログでは、娘さんがプラモデル制作に興味を持って、一緒に塗装したことがつづられていました。一緒にガンプラを作った時間はいかがでしたか?
paja子どもたちとガンプラを一緒に制作することは、最高に幸せなことです。病でなければもっと平然としていたかもしれません。一緒に過ごせる時間が残り少ないので、この時間はかけがえのない大切な宝のような時間でした。

――娘さんは、この時のことをなんておっしゃっていましたか?
paja「とっても楽しかった」と言ってくれました。子どもたちも、私と一緒にいられる時間が残り少ないことは理解しています。なので、私と一緒にガンプラ制作をする時間が特別な時間という感じがしました。また、「もっともっと塗装したい」と言ってくれました。

――娘さんのモデラーしての“筋”はいかがでしょうか?
paja当たり前ですが、技術力はまだまだです(笑)。でも、楽しいと思ってくれて自分からやりたいと言ってくれたので素質はあります。楽しいと思いながら制作した作品は、出来栄えが良いものになる、と私は思うのです。楽しいと思えるからこそ向上心が備わり、さらに上へと登っていく原動力になります。

――素敵なお言葉ですね。ご病気になられたなかで、「ガンプラ」はご自身にどういったものをもたらしてくれましたか?
paja私の趣味は、ガンプラで始まってガンプラで終わると決めていました。人生の最後を迎えようとしている中、人生最後の趣味がガンプラです。ガンプラは、夢(プラモデルを職業にする)を諦める必要はないということを教えてくれました。私の中で、ガンプラは、特別な存在です。小学生の頃に憧れた「ディスプレイされたあっと驚く作品」を作りたいという思いは、今もなお続いています。

――どんな状況におかれても、向上心を持ち続けることは本当にすごいことです。これからもPajaさんの作品をたくさん見ていきたいのですが、今後もガンプラ制作はつづけていきますか?
pajaもちろんです。これからもグロス仕上げの作調を崩さず続けていきます。また、娘たちもプラモデル制作を行います。私がいなくなった後も、娘たちが私の意思を引き継ぎ、制作を続けていくと思います。その時は、皆さん、よろしくお願いいたします。

――では、最後にPajaさんにとって「ガンプラ」とは?
paja夢であり、希望であり、楽しいと思える時間を過ごせる魔法のプラモです。
■pajaさんのX
@paja7777
https://twitter.com/paja7777(外部サイト)

■pajaさんのブログ「癌 ステージ4闘病記」
https://ameblo.jp/rx178-555-333/(外部サイト)

■pajaさんのYouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/@paja-co5ub(外部サイト)

あなたにおすすめの記事

 を検索