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「これがガンプラ?」「どこの寺のご本尊?」“仏”にも多様性の時代? 実力派モデラーたちが異なる手法で仕上げた“仏ガンダム”

(写真上)『ゴッドガンダム(仏像風)』 制作・画像提供/Tacker-01氏 (写真下)不動明王ゴッドガンダム 撮影/模型工房One-Step 作・画像提供/ノールス氏 (C)創通・サンライズ

(写真上)『ゴッドガンダム(仏像風)』 制作・画像提供/Tacker-01氏 (写真下)不動明王ゴッドガンダム 撮影/模型工房One-Step 作・画像提供/ノールス氏 (C)創通・サンライズ

 昨年8月に発売され、多くのモデラーを魅了している『RG 1/144 ゴッドガンダム』。“ゴッド”という神々しい名前に加え、劇中で「ハイパーモード」を発動し全身金色になることもあり、従来のガンプラとは異なるカスタムを手掛けるモデラーも多い。今回紹介する2人は、全く異なる手法を用いながら、このゴッドガンダムを“仏”に転生させSNSで賞賛されたモデラー。海外からも賞賛の声が届いたという、誰にもマネできない唯一無二の作品が誕生した背景を聞いた。

他の人と違う“逆張り”で作りたい「誰かが練った構想から落ちた影を集めたような感じ」

 モデラーのTacker-01さん(@01Tacker)が作り上げたのは、金色にあえて汚しを入れたカスタムを施行し、仏壇にまつられても全く違和感のない“仏像風”のゴッドガンダム。当初「ハイパーモード」のような全身金色にする予定だったが、やめてこの形になったという。

「私が作り始めた頃には、既にたくさんの方々がキレイな『ハイパーモード』を制作されていました。「同じようにやってもつまらんなぁ」と…あまのじゃくなんですよね(笑)。そこからは逆張りの連続です。『キレイな金色?汚してしまおう』『広い可動域?静かに佇ませよう』という具合です。構想を練ったというよりは、誰かが練った構想から落ちた影を集めたような感じがします」

 もともと、「『ゴッドガンダム』のアニメ本編やゲーム内でのイメージが好きすぎて、大幅な色変えや改造をしようと思えなかった」ことに加え、仏像を彫る仏師について「木を手彫りであそこまで仕上げられる技術や精神力を持った職人の方々は尊敬してます」という想いを持っていた同氏。そこに自身の“あまのじゃく”な性格が重なって生まれた本作には、“仏像感”を出すためにさまざまな工夫が施されている。

「『金色が剥がれて下地の黒が見えているような塗装』がひとつです。実際は下地が金で上から塗った黒を部分的に剥がしています。金色の部分はエアブラシで均一に塗ってますが、黒を剥がす際、剥がれ具合にムラができるようにしたかったので、筆塗りで黒を乗せてます。シルエットがボヤけないようにエッジの金色が程よく残るように注意しました。もうひとつは、ポーズですね。誰が見ても一発で『仏像じゃん』と思える立ち姿にしました。そしてそれに合うような仏台のサイズ感も工夫しました」

 「台座部分の皿、アクリルケース、模様(デコシール)は、すべてセリアで売っているものを活用した」というから、その発想力と行動力にも驚かされる。さまざまなこだわりが垣間見られる中でも一番は、立ち姿だという。

「立ち姿は仏像のそれですが、制作したのはあくまでもゴッドガンダムです。格闘戦主体で、拳で語り合うものです。なので仏像にみられる手の形、印相のようにみえて、実は戦う気マンマンの拳法のような構えにしたところはこだわりました」

 作品発表後、SNSには多くのいいねが寄せられたほか、ホビー店で展示されると「展示されている現物を見てきました!」と画像付きで報告してくれた人もおり、その反響の大きさに「多くの人が見てくれることを実感した」という。ガンプラは「いくら作っても積みあげたキットが減らない、一生モノの趣味ですね」と話す同氏の今後の制作にも注目したい。

ガンプラ界の“仏師”の彫りに大反響「神仏を尊崇する日本人の心の琴線に触れたから」

 Tacker-01さんが、仏師についての尊敬を述べていたが、ガンプラ界にも“仏師”と呼ばれるモデラーが存在する。ノールスさん(@chacknoress)は、ガンプラのパーツひとつひとつに“彫り”を入れ、誰もマネできない唯一無二の作品を次々と発表。国内外から高い評価を得ている。そんな同氏が「ゴッドガンダム」をベースに手掛けた作品が『不動明王ゴッドガンダム』だった。

「文様や彫り物見学のために神社や仏閣を見ていたときに、『いっそ仏像モチーフでガンダムを作れば面白いのではないか』と思い付いたのがきっかけです。(制作時)コロナ禍でガンプラが品薄のなか、たまたま立ち寄った店で『ゴッドガンダム』を見つけて。なので、選んだというより『これしかなかった』というか…。逆に“選ばされた感”がありました(笑)。ゴッドガンダムのイメージとしては、日輪や黄金に輝くハイパーモードなど元が仏像みたいな印象を受ける機体ですね」

 偶然なのか必然なのか、導かれるようにゴッドガンダムを手に取った同氏。これまでの作品以上にこだわりをもって“彫り”を進めた

「主に、唐草文様や梵字など仏教色の強いモチーフを彫り込んで、より“仏らしい”イメージで彫りました。特にこだわったところは、バインダーの梵字が不動明王真言になっているところなんですが、誰も気付くくれません。また、背面の火焔光背をプラ版から彫り出すのに、一番時間かかりました」

 「こだわりに気付く人がいない」と嘆く一方で、その作品の完成度と唯一無二の世界観に圧倒される人は続出。多数のいいねを含め、多くの反響があった。

「『心を動かされた』という声や、多くのいいねをいただきうれしかったのですが、やはり神仏を尊崇するという日本人の心の琴線に触れたからではないかなと思っています。といいつつ、ガンプラで人を感動させることは以前からの目標でもあったので、個人的にも非常に喜んでいます」

 以前の記事でも紹介した透かし彫りの「グシオン」をはじめ、ガンプラを彫るという作風で技術的にも進化を遂げてきた同氏。その成長について本人は「あまり実感がない」と謙遜するが、本作が誕生した背景にはひとつひとつの作品を真剣に向き合ってきた結果があると言えるだろう。

「ひとつ制作するごとに、文様のバリエーションを増やしたり新しい彫り方を模索するなど、同じ彫りでも作風が単調にならないよう気を付けました。今後は、神社などでよく見られる龍や虎、鳳凰などの動植物や人物という、より誤魔化しのきかないモチーフの彫り物をガンプラに彫っていきたいと思っています。そして、(彫りという)新しい表現方法として、これからも自分の世界をキットに込めていきます」

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