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震災から12年…“ガンプラ全コンプリート”コレクターが、故郷・福島県浪江町で成し遂げたい夢「ガンプラの力を借りて、人が集まる楽しい町を作りたい」

 『機動戦士ガンダム』に出てくるモビルスーツをベースに、二頭身のかわいいキャラクターにデフォルメ。『武者』や『騎士』などさまざまに派生し、人気を博した『SDガンダム』。浪江町ガンダム専門店(自称)さん(@NamieTownGundam)は、このガンプラである『BB戦士』と『元祖SDガンダム』の全種600キット以上を完全コンプリート。Xで8000件以上のいいねを集めるなど、絶賛された。同氏には、このコレクションを使って故郷・福島県双葉郡浪江町で成し遂げたいという夢があるという。震災から12年、今も現地に住む同氏の故郷への想いとは?

浪江町の現状「望まなければ普通の生活はできますが、娯楽施設などもない」

――『SDガンダム』関連のガンプラを全種コンプリートされたことが、SNSで大きな話題となりました。
浪江町ガンダム専門店(自称)ありがとうございます。「すごい!! 感動と懐かしさで涙が話でそうです」「自分が昔持っていたSDガンダムが並んでいて、胸が熱くなりました」「SDガンダムファンの夢の一つじゃないですか!凄すぎです!」など、多くのSDガンダムファンに喜んでいただき、とてもうれしい気持ちになりました。

――ご自身のアカウント名に「浪江町」と入っていたり、Xのプロフィールにご自身の夢として「東日本大震災で人が戻らない浪江町に人が集まる店を作ること」を掲げています。これにはどのような想いがあるのでしょうか?
浪江町ガンダム専門店(自称)私は、福島県双葉郡浪江町に生まれ、浪江町で育ち、現在も浪江町に在住しています。12年前、2011年の東日本大震災・原発事故によって、浪江町の人口は約21,000人から約15,000人に減りました。現在私は帰還しているのですが、避難解除された浪江町は約2,100人の居住人口となって、望まなければ普通の生活はできますが、娯楽施設などもありません。長期避難もあり町民の「帰る・帰らない・帰れない」がありますが、故郷を持続可能にするため、さまざまな人が集まる夢のある楽しい町を作っていければなと。そこで、ガンプラの力を借りようかと思いました。今後お店がオープンしたら、ぜひ皆様、遊びに来てください。

――ご自身の趣味から派生して、街の復興に寄与したいというのはすばらしいですね。その実現に向けて、現在どういう状況ですか?
浪江町ガンダム専門店(自称)懐かしいものを展示・販売するお店を想定してます。隣町で新品のガンプラを取り扱いながら頑張っている個人店がありますので、そこの競合相手になるつもりはありません。中古のガンプラなどの取り扱うイメージです。実質、ガンプラはあるので、店舗があればいつでもって感じですが、商売として人件費が出てこなさそうなので、ガチャガチャを併用した無人の店舗かなと思ってます。今現在は、浪江町内のイベントなどに出店し、多くの方に懐かしんで頂いてます。

SDガンダムに魅せられた幼少期「(足の長い)リアルな『機動戦士ガンダム』は理解できない」

――SDガンダムの全コンプリートに話を戻しますが、そもそも、なぜ集めようと思われたのですか?
浪江町ガンダム専門店(自称)今42歳なのですが、小学生の頃に『BB戦士』と『元祖SDガンダム』にハマって、集めて作ってブンドド(戦いごっこ)してました。その後、しばらく離れていたのですが、コロナ禍でガンプラが品薄になっているというニュースを見て、懐かしさを感じ、HGを購入しました。そこからMG、RG、PGと進み、合わせ目消しや塗装を覚えていくうちに、単価の安いSDガンダムで練習しようかと思って買ったのが始まりです。後からですが、実はSDガンダムの方が小さく、細かい曲線も多く塗装が難しいことが分かりまして。その中、やはり懐かしさが先行して集め始めました。

――ご自身の思い出とリンクされたんですね。そもそも、ご自身はSDガンダムとどのように出会い、どんなところに惹かれたのですか?
浪江町ガンダム専門店(自称)出会いは、幼少期に愛読していたコミックボンボンですね。そこからガン消し、カードダス、プラモデル、ファミコンのガチャポン戦士、少し大人になってゲームのジージェネレーションですね。幼少期は、リアルな『機動戦士ガンダム』を見ても理解できず…ジージェネレーションでガンダムの物語を知ったので、私にとって教科書になりました(笑)。SDガンダムの魅力は、フォルムがかっこかわいいのと、さまざまなギミックで楽しめ、種類が多くや金額が安いところですね。

――集められたコレクションのなかでも、特に思い入れのあるのは、どのキットですか?
浪江町ガンダム専門店(自称)再度集め始めて最初に作った『BB戦士』の『No.24武者頑駄無摩亜屈』です。たまたま福島県内の中古屋でゲットしました。制作してみて、正直『こんなにしょぼかったかな!?』と思いました。シールは浮くし、塗装しないと色が全然パッケージと違うし。まぁこれも懐かしさの方が勝りましたが(笑)。幼少期は、全部集めたわけではないので、改めて作ると昔の続きをやっているようで、新しい発見もあり楽しいです。

全コンプリートは修羅の道「何十年もコレクターをしてる方には叶わない」

――30年〜40年前に発売されていた昔の商品は、なかなか手に入らないですよね?
浪江町ガンダム専門店(自称)そうですね。なかでも、『元祖SDガンダム』の『旧No.17武者頑駄無活動絵巻付』は苦労しました。すべてを集めるはやる前から修羅の道だと分かっていたので、中古実店舗、ネットオークション&フリマだけでなく、SNSでも情報発信し、コレクターの方とつながって、譲って頂きました。目標に向かって突き進むそれなりのコレクターだと自負していましたが、何十年もコレクターをしてる方には叶わないなと思いました。また、『BB戦士』『No.1〜6のガンダマンシリーズ』や『輝羅鋼(今の再販は輝羅鋼極彩)』、『大箱セット』など、限定品、『元祖SDガンダムシリーズ』は絶版なので、未組立は価値が高く、怖くて組み立てられません。

――総額もすごいことになりそうですね…。ちなみにコンプリートに向けて「最後の1体」は何だったのですか?
浪江町ガンダム専門店(自称)『元祖SDガンダム』の『旧No.106ファイヤーブレーザーのコンテナポッド』です。ガンダム本体というより付属品のようなもので、あまり人気がないのか生産されなかったのか分かりませんが、見つかりませんでした。コンテナポッドA、B、Dは大阪遠征のときに中古実店舗でゲットしたのですが、Cだけ見つからず。これもコレクターの方に『ネットオークションに出品されてるよ』って教えて頂いて、その後落札しまして手に入れることができました。

――総計600キット以上をコンプリートされたときは、どんな思いでしたか?
浪江町ガンダム専門店(自称)「集めきった!」「やり切った!」という達成感と、これで毎日のネットオークション&フリマ確認から解放される喜びがありました。ただその後、立て続けに『コンテナポッドC』が出てきたので、『探し物は探しているときは見つからないんだ』と改めて思いました(笑)。

――ご自身の強い思いが完全コンプリートにつながったわけですから、次は故郷での夢の実現ですね。では最後になりますが、浪江町ガンダム専門店(自称)さんにとって「ガンプラ」とは?
浪江町ガンダム専門店(自称)過去と未来です。過去とは、その時代の最高の技術で作られたガンプラは一世風靡し、ファンの心の中にずっと残っています。時代から淘汰されるのは悲しいので、何かしらの形で残したいものです。未来とはこれからの可能性です。ガンプラはこれからも成長していくと思います。日本の誇れる文化として世界の子どもたちや大きくなった子どもたちに楽しい時間を与え続けてほしいと願います。

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