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「量産は鍛錬」「量産はからくり」異なる手法でガンプラを“量産”した2人のモデラー「1機だけでは、表現しづらい躍動感が伝えられるのが魅力」

  • 写真上/『質量を持った残像』 制作・画像提供/赤い瞳のシャア・アズナブル氏 写真下/『ジオン驚異のメカニズム ズゴック・アッガイの超量産計画』 制作・画像提供/ハイドラ氏 (C)創通・サンライズ

    写真上/『質量を持った残像』 制作・画像提供/赤い瞳のシャア・アズナブル氏 写真下/『ジオン驚異のメカニズム ズゴック・アッガイの超量産計画』 制作・画像提供/ハイドラ氏 (C)創通・サンライズ

 モビルスーツ(MS)が何体も登場するガンプラジオラマの魅力は、アニメの臨場感、躍動感を表現できること。1機をモデル立ちさせる作品とは異なる趣があり、SNSでも人気を博している。一方で、同じガンプラをひたすら制作するなど、その過酷な制作現場さから“苦行”ととらえるモデラーも少なくない。今回紹介するモデラーは、そんな“量産”を制作した2人。ただしそのやり方は全く異なるアプローチだという。それぞれのやり方で作り上げたガンプラ“量産”の世界とは?

ガンプラ作りは鍛錬「完成の見えない作業に身を投じることで、諦めない気持ちや忍耐力を鍛えています」

 赤い瞳のシャア・アズナブルさん(@iynhfgPFRr3yRwP)は、量産機に魅せられたモデラーのひとり。過去には、「アクシズ・ショック」を表現すべく、3種25体のガンプラを一気に制作。SNS大絶賛の圧巻の光景を、“パワープレイ”で実現した。そんな同氏が、近作として発表したのが、5体のガンダムF91が並んだ作品。なぜ、こんなにガンダムF91を量産したのだろうか?

「そもそも『機動戦士ガンダムF91』という作品自体が好きなんです。小さいのに出力が高く、機動性も良いので。そんなF91は最大稼動状態に移行すると、機体冷却のために高熱を帯びた装甲表面を剥離させる『MEPE』という現象が発生します。それによって、装甲そのもので強制冷却を開始するんです。劇中では、その剥がれた装甲が残像のように見え、MSが大量に発生するような演出になっており、今回はそれを再現してみよう!と思いました」

  5体のF91の“残像”をガンプラの“量産”で表現。1体1体微妙に色味が異なっており、後ろに行くほど色が淡く、透明度を増していく細かなこだわりで丁寧に仕上げた本作は、カロッゾロナの名言を引用した『質量を持った残像』という作品名もぴったりと言えるだろう。

「後ろから3機が残像で、その次が通常色、1番前をチタニウムフィニッシュにすることで段々と輝きが増すような見え方になればと思い、並べました」

 「アクシズ・ショック」の同様、本作もとにかくガンプラを量産。本人いわく「こだわりは、バリなどが残らないようにきれいに仕上げたところ」というほど、1体1体の完成度も高い。しかも今回は、制作も大変な大きめのガンプラ(1/100スケール)で表現。「ただひたすらに作ることがつらかったですね(笑)。HGUC(1/144)でさえずっと同じ機体を作るのはキツイのに、MG(1/100)F91ばかり作っていましたから、途中で挫けそうになりました」と話しながらも、完成までもっていくタフな制作を行える原動力は一体なんなのだろうか?

「劇中のシーンを再現するというロマンもありますが、自分を鍛えることが目的ですね。永遠に続くようなヤスリがけや塗装、完成の見えない作業に身を投じることで、諦めない気持ちや忍耐力を鍛えています。遠回りでも目標に辿り着こうとする、日々の努力にやり甲斐を感じています。とは言っても、ちゃんと完成は目指してますよ!」

 ガンプラ量産という“鍛錬”によって、自分を磨き続けるストイックな同氏。最後に改めて、“量産”の魅力を聞いた。

「今回の“残像”や、量産機などのガンプラを複数作ると、見栄えが良く、並べると壮観です。1機だけでは、表現しづらい躍動感が伝えられるのが魅力だと思います。最近は大量に同じものを作る魅力に気付いたモデラーが増えてきたようで、個人的にとてもうれしいです(笑)。私もこれからも変わらず量産機や複数のプラモを作り続けると思います」

“量産”だけど、作ったのは1/4機を2体「ズゴックとアッガイは、『合わせ鏡』で量産するのにぴったり」

 一方、モデラーのハイドラさん(@hydra43046721)が作り上げた“量産”ジオラマは、見渡す限り一面に量産されたズゴックとアッガイが、闇に紛れながら、今や遅しと出番を待っている様子を描いた『ジオン驚異のメカニズム ズゴック・アッガイの超量産計画』。赤い瞳のシャア・アズナブルさん同様、ガンプラを作り続けたのかと思いきや…。

「(タイトルに)“超量産”とありますが、あるからくりを使っているので、制作期間は短くて、20日間くらいです」

 そのあるからくりというのが「合わせ鏡」を使ったトリックだ。まず、HGUC 量産型ズゴック と HGUC アッガイ を1機ずつ、いや正確には1/4カットを1機ずつ用意。続いて、左右と奥を鏡、正面はハーフミラーで囲んだ箱の中に前後左右に1/4カットしたズゴックとアッガイを配置するというもの。だが、鏡の反射で撮影の裏側までばれてしまわないのだろうか?

「そこでマジックミラーやハーフミラーに目を付けました。ただ次にそれらのミラーを使って合わせ鏡をしてもMSの背面が映ってしまいます。そこでズゴックとアッガイの出番です。これらの機体は正面から見ると、背面にある物は何も映りません。しかも左右対称でもあります。そして何より量産機ということで、合わせ鏡で量産するのにぴったりです。前後左右対称のゾックが最適解と言う方もいると思いますが、いや鏡の箱の中に放り込んで『はい完成』では、流石につまらない。作っていても楽しくありません」

 赤い瞳のシャア・アズナブルさんのように、同じようなガンプラを繰り返し制作し続けることも“鍛錬”だが、ハイドラさんのように、1機のモビルスーツを1/4カットにするのもまた至難の業。これも“鍛錬”といえるだろう。

「特にズゴックのツメは苦労しました。ただでさえ薄い爪を、さらに真っ二つしたので」

 4000件近いいいねが寄せられるなど絶賛された本作。実はこのトリックや作品名『ジオン驚異のメカニズム(ズゴック・アッガイの超量産計画)』には、ある秘密があるという。

「タイトル『ジオン驚異のメカニズム』というコピーは、40年ほど前のガンダムのプラモデルのCMの一部で使われた言葉だったそうです。これは、後から分かったことなのですが、後日そのCMを見て、イメージにぴったりでした。また、鏡のトリックは、同じく約40年前のマンガ『3D甲子園 プラコン大作』でも似たようなものが使われていたそうです。
 この“懐かしい×懐かしい”の相乗効果もあり、今回大きな反響になったのだと思います。どちらも、自分は生まれていない頃のものなので、何も知らずに制作していましたが(笑)」

 40年前の技法やタイトルが、令和の今新しい形でよみがえる。“ガンプラ温故知新”である本作。今後も、さまざまなアイデアを使って“量産ガンプラ”を作って行きたいか聞いてみた。

「手品と同じで、トリックは何度も使うと飽きられてきます。なので、似たような作品をどんどんは作れないのですが、予定ではクロスボーンガンダムのラスボス的存在であるディビニダドを鏡で増やし、主人公が絶望しかける瞬間を再現してみたいと思います。量産機の分類に入るかわかりませんが(笑)。今後も“ガンプラ心形流”のように、“ハイドラ流”的な、自分の個性的な作品をこの世に周知できればいいなぁと思います」

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