握力の鍛え方究極ガイド! 効果的なトレーニング方法と日常での鍛え方
和田 拓巳
プロアスリートやアーティスト、オリンピック候補選手などのトレーニング指導やコンディショニング管理を担当。治療サポートの経験も豊富で、ケガの知識を活かしリハビリ指導も行っている。医療系・スポーツ系専門学校での講師や、健康・トレーニングに関する講演会などの講師を務めること多数。テレビや雑誌にて出演・トレーニング監修を行う。現在、様々なメディアで執筆・監修を行い、フィットネスに関する情報を発信している。
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握力とは
握力は、物をつかむ・物を持つなど、生活していくうえで欠かせないもの。また、スポーツや仕事においても重要となる場合が多い。腕の筋力や脚の筋力同様、身体的なパフォーマンスを発揮するために欠かせない力なのだ。
握力の強さは、手指の筋肉、手首、前腕の筋肉によって発揮される。
握力を発揮するために働くのが「深指屈筋(しんしくっきん)・浅指屈筋(せんしくっきん)」と呼ばれる筋肉だ。これらの筋肉は指を曲げる際に力を発揮し、親指を曲げる筋肉「長母指屈筋(ちょうぼしくっきん)」とともに鍛えることで握力を高めることができる。
また、前腕部には、手首の固定や握力をサポートするために力を発揮する筋肉がある。前腕部全体の筋肉を鍛えることで、さらに握力を高めることができるだろう。
握力を鍛えることでどのようなメリットを得られるのだろうか。ここでは握力強化のメリットを確認してみよう。
1.日常生活で活躍する場面は多い
握力の強化は、日常生活のパフォーマンスを向上することができる。
例えば、固いビンのふたを開ける、タオルを絞る、重い荷物やたくさんの買い物袋を手に持って運ぶなど、ちょっとした動作だが、握力が強いことで、できることが増えるだろう。
また、腕を1日使う作業をしていても疲れにくくなるなどのメリットも得ることができる。
2.筋トレやスポーツでのパフォーマンスアップ
筋トレに欠かせないダンベルやバーベル、マシンを使ったエクササイズ。そのエクササイズで高重量を扱う際に握力は欠かせない。
特に、デッドリフトやベントオーバーロウ、ラットプルダウンなど体の背面を鍛えるプル系のエクササイズでは、握力の強さで使用重量が変わってしまうこともある。高重量になればなるほど、握力が必要になるのだ。
また、筋トレだけでなく、スポーツのパフォーマンスにも影響を及ぼす。
スポーツで使う用具にはバットやラケット、ボールなど、競技によって形や大きさ、重さが様々だ。それらの用具を巧みにコントロールし、上手く力を伝達させるには握力が欠かせない。疲労により握力が弱くなると、パフォーマンスの低下につながってしまう。
3.男らしさをアピールできる
握力を鍛えることで前腕を太くすることができる。男性にとっては、腕まくりした際など、前腕を太くすることで男らしさをアピールできるというのもポイントだろう。力を入れた時に見える筋肉の隆起や浮き出た血管など、前腕を見せただけで筋トレをしていることを周囲に知らしめることができ、力が強そうという良い印象を与えることができる。
握力が衰える原因
握力が弱くなる原因にはどのようなものがあるのだろうか。
筋肉量や筋力は、20代をピークに徐々に低下していくとされる。しかし、握力はこれに当てはまらないのだ。握力が最も強くなる年代は、男性の場合35〜39歳、女性の場合は45〜49歳となっている。これは普段から握力を使う場面が多い年代であると予想できる。
握力の平均値は、加齢とともにピークに向かって徐々に強くなっていき、ピークを過ぎても、ほかの筋肉に比べ衰えにくいというのが特徴だ。
加齢が大きな要因とならないのであれば、握力が弱くなる理由は、使わないことだと考えられる。
体の機能は動かさなければ、徐々に衰えていく。特に筋肉は顕著であり、使われない筋肉は必要ないと判断され、自然と痩せて衰えていくのだ。これは「廃用性萎縮(はいようせいいしゅく)」と呼ばれる。
例えば、骨折などでギプス固定を長期間行っていると、筋肉を動かすことができなくなる。そのためギプスを外した後、動かなかった筋肉が細く硬くなっている。これが廃用性委縮だ。
このように、体を動かさないことによって、筋肉量が減り、筋力が低下してしまうのだ。
握力が発揮しにくい原因として、特定の疾患の影響も考えられる。
首や肩回り、手首などの疾患によって、神経が障害され、力が出にくい場合がある。
手のしびれや顕著な握力低下、痛みがある場合は、速やかに医療機関で診察してもらうようにしよう。
握力を鍛えるための基本的なトレーニング方法
ダンベルホールド
2.ダンベルを指側で保持するように意識し、握力が続く限りそのままキープする。
3.握力がなくなったらダンベルを下ろす。この動作を繰り返し行う。
ダンベルを保持するだけのエクササイズ。これも負荷を徐々に増やしていくことが重要だ。ジムに通っている人は高重量のバーベルでも同じエクササイズが可能だ。
ダンベルリストカール
2.ダンベルを指にひっかけ、できるだけ下したところから、前腕部を動かさないように固定したまま、手首を曲げていく。
3.持ち上げられるところまで上げたら、ゆっくりと下ろしていく。この動作を繰り返し行う。
ダンベルを動かす際に、手首を動かすだけでなくダンベルが指に引っかかるくらいまで下ろし、指も動かすようにすることで可動域が大きくなり、握力を強化することができる。
ファットグリップ
ファットグリップとはバーベルやダンベルのグリップ部に取り付けることで厚みをつけ握りづらくし、前腕部の筋肉を刺激しやすくするというグッズだ。
高重量は扱いにくくなるかもしれないが、その分、握力強化の効果は高まるだろう。
ファットグリップ
おうちで手軽にできる握力トレーニング
開閉運動(グーパー運動)
2.握りこむように力を入れて指を閉じる。
3.閉じたら最後にグッと力を入れる。
4.指を開いていき、元の状態に戻る。この動作を繰り返し行う。
単純だが、繰り返し行うことでじわじわ前腕や指の疲れを感じるだろう。惰性で行うのではなく、握ったときにしっかり握りこむように力を入れることでより刺激され握力の向上の効果を高める。
指立て伏せ
2.肘を曲げて体を下ろす。胸が床すれすれまで行くようにできるだけ体を下ろすように。
3.下せるところまでいったら、肘を伸ばし、体を持ち上げる。この動作を繰り返し行う。
指で支えることで、腕立て伏せでも握力強化することができる。体を支持する部分が少なくなることで強度は高まる。腕立て伏せの動作ができない人は、膝を曲げて行ったり、肘を曲げずに最初の姿勢を一定時間キープするのでも効果はある。慣れてきたら、強度を高めていくようにしよう。
アイソメトリクス
2.お互いの手を閉じるように力を入れあう。
3.全力で力を入れ、10秒間キープする。この動作を繰り返し行う。
お互いの手で力を入れあうことで、握力を鍛える。できるだけ全力で力を入れあうようにしよう。手加減すると刺激量が大きく減少してしまうからだ。
ブックホールド
2.指にグッと力を込めて、握力が続く限り保持する
3.握力がなくなったら下ろす。この動作を繰り返し行う。
身近な本でも握力が鍛えられる。本の数が多くなったり、厚みが増やすことで強度が増す。指に力を入れるように意識しながら行うように。
テニスボール
2.テニスボールをつぶすように指に力を入れて握る。
3.握れるところまで握ったら、力を抜く。
4.この動作を繰り返し行う。反対側も同様に。
握力強化専用のボールが販売されているが、テニスボールなど身近にあるボールでも代用できる。
柔らかければ強度が低く、固ければ強度が高くなる。ゴムボールなど空気を入れられるボールなら、空気を抜いたり入れたりすることで強度が変更できるので、調整しながら取り組んでみよう。
専用のトレーニング器具の場合のメニュー
ハンドグリップ
2.ハンドグリップが閉じるまで握る。
3.しっかり閉じるまで握ったら、ゆっくりと元に戻していく。
4.この動作を繰り返し行う。反対側も同様に。
ハンドグリップを使う場合も、負荷を適切に調整しよう。重い物を無理に扱うよりも、最後までしっかり握りきれる重さで、しっかり握りこむことを意識して行おう。
●握力強化の器具の代表的な商品が「ハンドグリップ」だ。
今では負荷の調整できるものが販売されている。握力も他の筋肉同様、慣れてきたらどんどん負荷を高めていく必要があるため、負荷調整できるもののほうが使い勝手がいい。
リストボールホールド
2.リストボールを回転させ、遠心力に耐えながらリストボールを回し続ける。
3.握力がなくなったら回すのをやめる。この動作を繰り返し行う。
専用のグッズを使えば、握力を効果的に鍛えることができる。その一つが、リストボールだ。遠心力を使った刺激は、ほかのエクササイズでは得られない刺激を与えることができる。
また、内蔵されているボールが高速回転することで起こる遠心力を前腕部で保つことで、普段のトレーニングでは得ることができない刺激を前腕部にも与えることができる。
色々な種類があるが、ひもで引っ張って内蔵のボールを動かすものよりも、オートスタートでできるリストボールのほうが使い勝手が良い。商品の中にはカウンターがついていて、回転速度や動作秒数などを測ってくれるものもある。こだわりたい人は、そのような付随機能にも注目して商品を選んでみよう。
リストボール
トレーニングの注意点
握力に関係する筋肉は、小さい筋肉だ。そのため高重量を扱うのが難しい。無理に乞う重量を使ってしまうと手首に大きなストレスがかかり、痛みが出てしまう場合もある。
普段からしっかり前腕を鍛えている場合は良いが、そうでない場合は高重量×低レップよりも、中重量×中レップや低重量×高レップで鍛えるようにしよう。
握力のトレーニングを行うことで、前腕部が疲労して握力が低下し、他のトレーニングに支障をきたしてしまう。
そのため、握力強化や前腕部のエクササイズはトレーニングの最後の方で行うようにすると、他のエクササイズへ影響を与えずに行うことができるだろう。
握力のトレーニング頻度が多くならないようにも注意が必要だ。
握力は他の部位のトレーニングでも使われているため、普段から高頻度でトレーニングを行っている場合、さらに握力のトレーニングを高頻度で追加するとオーバーワークになってしまう。疲労が蓄積し、筋緊張が強くなることによって、手首の痛みが起こるリスクも高まってしまう。
他のトレーニング同様、しっかりと休養がとれるようにトレーニングメニューを調整しよう。
トレーニングをするなら、筋肉をつけるための栄養摂取も併せて行うほうが効率は良い。ほかの部位のトレーニング同様、たんぱく質をしっかり補給するように意識して、食事メニューを組み立てるようにしよう。
まとめ
普段の筋トレでもバーベルやダンベルを使うことで握力は強化されるが、これを機に握力強化のエクササイズを追加してみてはいかがだろうか。握力強化は、テレビを見ながらなどでも取り入れやすいので、空いた時間で握力強化に取り組んでみよう。