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市中での爆弾処理、土地高騰で空中生活…モデラーが作品を通じて伝えたい現代社会の問題点
兵器や兵士は多くの人を魅了するが…そこには「死」がある(shiro)
shiroプラモを置いてフィギュアを並べると、自然とストーリーが生まれるのですが、よりテーマと具体性を持たせるようになったのは4年程前からです。平野義高さんの作品で「総統命令“死守”1942年1月平野義高」という作品があるのですが、敵に包囲され絶望的な状況をフィギュアや小物の配置で表現されていて、すごく衝撃を受けたというのが、今のジオラマ作りに影響していると思います。遠くおよびませんが目標にしてます。
――作品の「物語」はどのようにインスピレーションを膨らませているのですか?
shiro配置したフィギュアや物に対して、状況・人間関係・過去を思い描くことで、ひらめいたり、映画、小説、漫画、戦場写真でヒントを得たりしてます。
shiroイラクを舞台にしたアメリカ爆弾処理班を描いた戦争映画「ハート・ロッカー」をモチーフにしてます。映画を観た時に、いつか爆弾処理を題材にしたジオラマを作りたいと思いました。映画でも表現されてますが、これだけの量の爆弾に防爆スーツは役に立ちません。孤独で極限の緊張状態での解体作業を表現できないかと思いました。映画のシーンをそのまま再現したのではなく、自分なりにアレンジしてます。
――爆弾の処理が、民間の一般的な家が並ぶ中で行われていることが衝撃です。
shiro人々の生活の場に仕掛けられた爆弾をしかけるというテロリスト、武装グループの非情さや冷酷さを表現しました。情景に人の生活を感じられる事がポイントになりますので、そこにはこだわりました。屋上の洗濯物、干されたラグ、露天商、捨てられたゴミ、張り紙。中央にベビーカーを置いたのは、この家に子どもがいることを暗示させてます。
shiro映像や書籍で見る戦争という極限状態の中で生まれるドラマ性に、強い印象を受けてきました。死を直接表現することはしてませんが、それを匂わせる表現は必ず盛り込んできました。兵器や兵士のカッコよさは多くの人を魅了しています。でもそこには必ず、「戦争」という死と隣り合わせのものがある。そのことを、作品を通じて感じてもらえたらと思っています。
実際、この作品を作る資料として、ネット上で画像検索を行いましたが、凄惨な人の姿や破壊された街の状況を多く見ることになりました。ニュースで空爆の映像を見ると、その爆発の下でどれだけ多くの人がその犠牲になったのかと思うと、胸が痛みます。過去からも繰り返され今も世界のどこかで行われている戦争。そこでの凄惨な状況を世界が知ることで、平和的な解決に向かってくれればと思います