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【1/35 スケールモデル】M4シャーマンに魅せられた男、「ジオラマは1人で撮るインディーズ映画の監督のよう」

 老若男女、そして国籍を問わず愛され続ける「プラモデル」。1958年12月に産声をあげた国産プラモデルの歴史は60周年を迎えたが、“鉄の塊”である戦車は今なおモデラーたちの心をとらえ続けている。そこで、軍艦・航空機・戦車などの『スケールモデル』(※縮尺に基づいて忠実に再現した模型)を超絶技巧で再現するトップモデラー・吉岡和哉氏にインタビューを実施。大好きだという「M4 シャーマン」に込めた想い、そして“ジオラマ制作”に挑むモデラー魂を聞いた。

試行錯誤の跡が見えるWW2の戦車、過渡期の歪なデザインは男心をくすぐる

――スケールモデルに目覚めたきっかけを教えてください。

吉岡和哉私たちの子どもの頃は、模型店以外でも近所の駄菓子屋などでプラモデルが売っていました。キャラクター系の商品もあるにはあったのですが、ジャンルとしては艦船、航空機、戦車、車などのプラモデルが圧倒的に多く、スケールモデルを作るようになったのも自然な流れだったと思います。

――スケールモデルに惹かれた理由とは何でしょうか?

吉岡和哉スケールモデルは兵器や乗り物などをモチーフにしていますが、そのほとんどが実在したものです。ただ、作りやすさやコストなどの制限でキットでは再現できてないところがあったりします。そこを実物の画像や資料を参考に作り変えたり、足したりして、どこまで実物に近づけるかを目指すことが魅力だとよく言われています。とはいえそれは魅力のひとつ。好きな兵器のキットを塗装せずに組み立てて形を愛でるのも魅力。戦史を実感するために資料としてキットを買ったり、構造を知りたくてインテリアだけ作ってみるのも、スケールモデルならではの魅力と言えるでしょう。自分的には、ウェザリングやダメージ表現を加えることで、戦場で行動したであろう使用感をどこまで演出できるかを魅力と捉えて模型作りを楽しんでいます。

――吉岡さんの代表作としては戦車が有名です。その魅力を教えてください。

吉岡和哉堂々とした鉄の塊感だったり、擦り減ってギラギラした金属地が剥き出しになった履帯だったりしますよね。でもこれは兵器全般にいえることですが、戦車には各国の思想や時代、その国の置かれた状況や敵対する車両により様々な形に変化します。時にはなぜこんな形になっているの?というような歪なものから、「〇〇戦車と同じ形だ」というものまで色々です。とにかく多彩な「形」に見飽きません。

――WW2(第二次世界大戦)の戦車は今も人気です。なぜ今もこの時代の戦車が愛されるのでしょうか。

吉岡和哉WW2における戦車は進化の途中で、運用面においても過渡期にありました。しかし7年の過酷な戦場で戦車は恐竜的進化を遂げます。そして、そこには様々なエピソードが生まれました。伝説といえるようなエピソードはWW2の戦車の方が圧倒的に多く、エピソードのある兵器は魅力的です。また過渡期にある物のデザインは試行錯誤の跡があり、形がまとまっていない事がよくあります。洗練されたものより、まとまりのない物の方が飽きがこず、ずっと見ていられるのかもしれません。

――では、吉岡さんが一番好きな戦車は何ですか?

吉岡和哉M4シャーマン系列です。子どもの頃の戦車のイメージといえば、こんもりした形と深緑で塗られたボディ、そこには星のマークが付いていました。それはまさにシャーマンそのもの。その刷り込みによるところが大きいと思います。数多いバリエーションと5万両近く製造された生産数の多さは「ザ・量産型」で、この圧倒的な感じも魅力だといえます。バリエーションの中でも好きなシャーマンはM4、M4A2、M4A3E2、M51スーパーシャーマンですね。

ジオラマ制作は、机の上に小さな世界が現れてそれらが物語を語り始める

――吉岡さんは、箱庭的なジオラマ(情景模型)でストーリーを演出します。制作するうえで、もっとも気を付ける部分とは何でしょうか。

吉岡和哉自分的には「構図」「色」そして「らしさ」だと思っています。物を配置するときに「どうしたらストーリーが分かりやすくなるか」「どう置いたらカッコよく見えるか」などに気を配ることが大切です。また主役を目立たせるために色を変えたり、作品のイメージをまとめるために同系色を使ったりと、色を上手く使えば作品の完成度を上げることが可能です。

――吉岡さん流の「らしさ」とは?

吉岡和哉アスファルトの道を作るとすると、そこで落とし込む「らしさ」といえば、劣化したひび割れだったり、部分的に補修された跡だったり、他にも排水溝の周りに貯まる砂などの要素が挙げられます。対象物に生活感を与え、見慣れた風景に落とし込む。そんな「らしさ」を表現することで鑑賞者は作品に共感を抱き、グイグイと作品の中に引き込むことができるのです。

――戦車などはもちろん、ジオラマに登場するフィギュアが素晴らしいのですが、フィギュアの効果はどういった所でしょうか?  

吉岡和哉ジオラマにおいてフィギュアは物言わぬ“作品の語り部”です。その状況が寒いのか、暑いのか、楽しいのか、辛いのか、などフィギュアを使って状況を説明することができます。例えば戦車の乗員を全て同じ方向に向けるだけで視線の先に「敵」なのか「故郷」なのかを想像させることができるのです。「敵」の場合は緊張感のあるフィギュアの顔を選ぶこと。そして小物に双眼鏡や地図、銃を持たせると良いでしょう。また「故郷」なら、フィギュアの顔は落ち着いたものや少し笑みを浮かべたものを選び、小物に楽器や手紙、家族や恋人の写真などを持たせると、状況の説得力が増してきます。このようにフィギュアを使えば説明しなくても、どんな状況なのかを作品を観る鑑賞者に想像させることができるのです。

――今回紹介している作品の気に入っている点を教えてください。

吉岡和哉これは戦車模型専門誌『アーマーモデリング』誌で連載していたダイオラマパーフェクションという企画で作りました。この企画はひとつのジオラマを構想から制作、塗装、仕上げに至る全ての工程を写真と解説で追っていくもので、制作過程を全て撮影しながら作ったためにとても時間が掛かりました。その時の全てを出し切ったことでも代表作と言える作品かもしれません。
――雪の中の戦車を題材にしたこの作品も代表作とお聞きしました。

吉岡和哉「On the Offensive」は14年前の作品なので、今見ると塗装は結構色が浅くて今ひとつですね(苦笑)。でも構図は完璧。戦闘中の戦車とフィギュアを際立たせるために、なるべく余計な情報を加えずに地面を雪の白一色でまとめています。戦車の角度やジオラマの真ん中にあるホワイトスペースがこの作品のキモ。かなり大胆な構図ですが、戦車はみっちりと作り込んでいるので細部の解像度も高く、引いても寄っても観ていられる作品になっているのではないでしょうか。

――吉岡さんにとってジオラマとは?

吉岡和哉「ストーリーを考え、それに見合った舞台、大道具、小道具を作り、そして配役を決めてそれらに演技をさせて、ひとつの絵を作る」という具合に、インディーズ映画を1人で撮る監督のような事をするのがジオラマ作品と言えるでしょう。ただそれは面倒な作業の積み重ねだったりするのですが、少しずつ作り続けると、机の上に小さな世界が現れてそれらが物語を語り始めます。その瞬間が最高に楽しくて今日も夜な夜なパーティングラインを消す地味な作業をしています。

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