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暴露系YouTuberが訴えられない理由…弁護士の見解は?「本来ならばプラットフォーム側が監督すべき」
「逮捕されたらお金が返ってこない」、被害者や芸能人が訴えづらい理由
「それは、絶対に勝てると確信した発言についてのみ、訴えることです。様々な情報が東谷さんから発信されていますが、そのどれか一つ、確実に嘘であり、聞かれたくない情報が出てこない案件のみを取り上げれば、デメリットもなく、その部分だけでも勝訴できる。勝訴すれば、結果的に東谷さんの他の発言の信頼性もゆらぎ、タレントの名誉回復にもつながるでしょう」
しかし東谷氏側を見ても、法的な懸念点については非常に慎重になっている部分も多いという。例えば、“BTSに会わせる”という自身の詐欺疑惑では、本当にBTSに会わせることができたかどうかが焦点に。東谷氏がBTSに会わせられる環境がないにも関わらず、「会わせる」と語ったのならば詐欺罪が成立するが、東谷氏は動画で「会わせようと思っていたが」と濁している。
「東谷氏は、詐欺疑惑の被害者に返済するお金のほか、芸能人にもお金を借りていることを動画で明かしています。彼の場合、『YouTubeの収益でお金を返す』というスキームですから、被害者やお金を貸した側が訴えて東谷さんが逮捕されたら、そのお金は返ってこないということになる。結局、金銭的な損につながってしまうので、訴えづらいという状況を作っています。ですがもちろん、一人でも『私は刑事処罰を求める』ということであれば警察に被害届を出すことも可能ですし、逮捕されればアカウント閉鎖もあり得るでしょう」
テレビには放送法、ネットには? プラットフォーム側に問われる責任
「プラットフォーム側の責任もあります。これは、少し前にYahoo!ニュースのコメント欄が非表示機能を導入するなどして健全化を図っているのと同様に、本来ならばプラットフォーム側が監督すべきこと。テレビには放送法があり、違反すると免許取り消しなどの措置がなされるため、BPOやコンプライアンスを非常に気にします。ですが、ネットや紙媒体にはそうした法律や監督機関がないのです」
「ネットや紙媒体でも、被害者による裁判を待つのではなく、アカウントを停止するなどの処置ができるよう立法したいところですが、表現の自由も守らなくてはいけないため難しく、現実的ではない。プラットフォームの自主判断にゆだねようとしても、例えばGoogleにすべてを任せてしまうと、偏りが生まれる恐れがあり危険です。『違法行為を野放しにしないこと』=『受け取る側の信頼を得る』として、プラットフォーム側でコンプラチェックするなど、積極的な動きを見せてほしい」
東谷氏の暴露が、現時点では違法と断定できないことがわかった。ネット問題は、法律的にも過渡期にある。今後、外部からの監督機能が、表現の自由を侵害しない形でどう作られていくかが課題ということだ。
「もちろん暴露された側も本当に違法なことをしていたら、それはそれで問題です。『どちらが悪か』という話ではなく、受け取る側は問題を一つ一つしっかりと切り分けて、理性的に情報を得るよう心掛けてください」
(文:衣輪晋一)
<プロフィール>
河西邦剛(かさい・くにたか)。2016年にレイ法律事務所パートナー就任。2017年に日本エンターテイナーライツ協会共同代表理事に就任。芸能トラブル、エンタテインメント分野、映像著作権、知的財産分野、刑事事件、メディア対応、出版差し止め、医道審議会などを主に取り扱う。『ひるおび!』(TBS系)、『バイキング』(フジテレビ系)などのメディアに多数出演。