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芸能界で相次ぐ自死、芸能人のメンタルケアと「自らを守る」当事者団体の必要性
報道にも問題、メンタルケアも責任も曖昧な現状
「現在の報道にはガイドラインが徹底されているとは思えませんし、一部の週刊誌等はさらに問題がある。また、以前から私たちは、芸能人に対する安全配慮義務の一つとして、メンタルケアの必要性を訴えてきましたが、未だにメンタルケアや安全配慮の責任の所在なども曖昧なままであり、法制度化に向けた議論や保護も十分になされていない。そんな現状があるため、声明を出すことを決めました」(佐藤弁護士/以下同)
自殺報道ガイドラインでは、「努めて、社会に向けて自殺に関する啓発・教育を行う」ことのほか、「自殺を、センセーショナルに扱わない」「自殺の報道を過剰に、そして繰り返し報道しない」「自殺に用いられた手段を詳しく伝えない」「見出しのつけ方には慎重を期する」「遺された人に対して、十分な配慮をする」「どこの支援を求めることができるのかということについて、情報を提供する」などが提唱されている(一部抜粋)。
これを見ると、昨今の報道のされ方に疑問が浮かぶかもしれない。佐藤弁護士も、「今は視聴率重視の報道が多いといえます。また週刊誌等では、芸能人に関する憶測や虚偽の報道、私生活の暴露など、自殺した芸能人の名誉を毀損したり、プライバシーを侵害したりする報道が散見されています」と警鐘を鳴らす。
芸能人がさらされやすい、「非常に高度なストレス」
一方で、芸能活動が「非常に高度なストレスにさらされやすい業務」という特性があることは、あまり知られていない。「具体的には、芸能活動そのものから発生するストレスだけではなく、私生活上の制約に伴うストレス、誹謗中傷によるストレス、週刊誌等による名誉毀損・プライバシー侵害報道によるストレスなど他の職業と比較しても多くのストレスがあります」と佐藤弁護士。
仕事上の悩みはもちろん、有名ゆえにプライベートまでが縛られるほか、SNSなどによる誹謗中傷もある。この“特性”の上に、普段我々が日常的に抱えている一般的な生活上のストレスが重なる。また、“コロナうつ”に代表される、現在特有のストレスまでが蓄積されている可能性もある。
「有名税だろう」「そのぶん莫大な収入を得ているじゃないか」と考える人もいるだろう。だが、高収入だからといって、ある職業で働く人が、重大なストレスをケアできないことは大きな問題ではなかろうか。
「非常に高度なストレスにさらされやすい業務であるにもかかわらず、ストレスをケアする体制が整っていないため、芸能界の方々は周りに相談をしにくく、ストレスを溜めやすい環境にあります。そのため私たちは、芸能人に対する定期的なメンタルケアが必要だと考えているのです」