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限界集落に突如現れた「世界一美しいコンビニ」、コンビニが地域創生の新たな軸となるか
地域密着で新たな価値を生み出すコンビニ、限界集落ゆえの仕入れの苦労も
「小さなコミュニティにあるコンビニなので、買い物に来てくれるお客さんと店員の距離が近いのが特徴です。スタッフと話をするのを目当てに来てくださる方も多くいらっしゃいますし、そこは都会のコンビニと違うところかなと思います。観光でいらした方も、よく話しかけてくださるんです」(小畑氏)
とはいえ、限界集落の独立したコンビニの商品の仕入れは困難なことが多いだろう。聞けば、そこにも多くの知恵と努力が結集されている。
「コンビニを作ることになった当初、いろいろなコンビニチェーンさんにお声をかけさせてもらったんですが、なかなか反応は難しくて。そのなかで応えてくれたのがヤマザキさんなんです。こんな地域まで卸してくれるヤマザキさんは、本当にすごいです。とはいえ、冷凍食品やアイスなど仕入れられないものもあるので、そこは他の商店から卸してもらうなど、融通を利かせてもらっています」(仁木氏)
「木頭地区のゆず製品だったり、木頭杉で作ったお箸だったりを仕入れて特産品として販売もしています。あと特殊な調味料などは、地元の商店さんにお手伝いいただいて、卸してもらっています」(小畑氏)
店内に併設するカフェでは、コーヒーチェーン店で働いた経歴を持つ店長自らが指揮をとり、ドリンクや軽食を企画・販売。既存のフランチャイズ制ではなく、まさに手作業であり手作りで完成したプロジェクトだ。不可能を可能にし、その地域に未来への希望を持たせる「未来コンビニ」は、新しい地域創生の形だといえるだろう。
社長の地元への恩返しから始まったプロジェクト「寄付ではなく、自立を」
「行政からの助成金などを利用したものではなく、完全に弊社独自のファイナンスによるものなんです。行政主軸で行うとすると、どうしても建物デザインなどに制約も出てしまうし、通常の“道の駅”にしかなれない。それでは木頭地区の未来を掲げたプロジェクトのテーマとずれてしまうし、地域のアイデンティティを大事にするためにも、自分たちで創るべきだと思ったんです。ただ、行政にも色々後押しはしていただいいますし、弱者支援というところではご協力もいただいています。未来コンビニを作ることで目指したのは、寄付による生き残りではなく、”自立”ですから。今後も地元の課題に沿った解決案を提示していきたいです」(仁木氏)
「未来コンビニ」という建物ができたことで、誰もが通り過ぎるだけだった町が誰もが立ち止まる街になる。そこに宿泊施設があることで長期滞在ができるようになり、働ける場所を見つけた人が住むようになればと考え、まずは閉館した旅館を再生させたゲストハウスのプロジェクトも進行中。そして子供たちから高齢者まで全ての人が元気な町にする。そこまで含めた地域創生のモデルとして、広がっていったら嬉しい、と語る「未来コンビニ」。
この「未来コンビニ」の誕生を軸に、移住してきた人たちが仕事をしやすいコワーキングスペースや、高齢化が進む地域の方々が楽しく体を動かせるキックボクシング道場など、いろんな形で人が集まれるものを今後も作っていく予定だという。大事なのは、地域全体を、住民の力で活性化させること。そして活気を取り戻していく木頭地区の姿は、地域創生の成功モデルとして全国の町おこしの参考になっていくだろう。
(取材・文/川上きくえ)