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【 弁護士が解説】「想像妊娠じゃないか?」「子持ち様」…職場のマタハラや同僚からの悪口、裁判を起こしたら慰謝料はいくら?

 近年、幼い子どもを持つ親を揶揄する意味で生まれた「子持ち様」という言葉。「子持ち様の代わりに仕事が増えた」など、妊娠・出産・育児する人への批判、逆に擁護する声がSNS上に噴出し、大きな議論になっている。妊娠・出産・育児を理由に、女性労働者が職場で不利益な取り扱いや嫌がらせを受け、就業環境を害されることをマタニティハラスメント、通称・マタハラという。実際に職場でマタハラが起こった際、法律で守ってもらうことはできるのか。アディーレ法律事務所・島田さくら弁護士に聞いた。

マタハラをした人を訴えることはできる?「暴言や悪口も違法となる場合があります」

  • アディーレ法律事務所 島田さくら弁護士

    アディーレ法律事務所 島田さくら弁護士

 2017年1月施行の改正『男女雇用機会均等法』『育児・介護休業法』によって義務付けられたマタハラ防止対策。2022年4月からは、改正『育児・介護休業法』が順次施行され、育児休業を取得しやすい雇用環境の整備や、妊娠・出産の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認措置が義務付けられている。とはいえ、子どもの体調不良などを理由に欠勤や早退をせざるをえない社員に対して不満が湧き上がったり、会社からの不利益を被る事例も多く存在している。

――妊娠・出産・育児をする人に対するマタハラが、いまだ問題になっています。こうしたマタハラを受けた人を法律で守ることはできるのでしょうか。

 「雇用機会均等法や育児介護休業法は、妊娠、出産、産休・育休の取得を理由とした不利益な取り扱いを明確に禁止していますし、女性だけでなく、男性も育休を取りやすくするため、どんどん法改正がなされています。ですので、『妊娠したら解雇する』『育休明けに戻ってきたら正社員から契約社員に切り替える』『産後は給料を下げる』といった、従業員に不利益になる行為は違法となります。また、暴言や悪口も違法となる場合があります。会社がこのようなことをして従業員から訴えられると、解雇や降格が無効とされて、未払分や慰謝料の支払いが命じられたりします」

病院や介護職…マタハラが起こりがちな職場は? 慰謝料はどのくらい?

――事例があれば教えて下さい。

 「大手の企業ではさすがに『妊娠したら解雇』などという運用を堂々と行っている会社はないと思いますが、大手でも、妊娠したら降格という運用を事実上行っている会社について相談を受けたこともありますし、中小の企業では、まだまだマタハラはダメだという認識が浸透していない会社もあります。特に、病院や介護職など人手が足りない職場では、いまだマタハラがあるようです。

 裁判例では、産休・育休から戻った女性が仕事から外され、さらに雇い主が他の労働者と一緒になって“育ちが悪い”、“家にお金がない”などの悪口を言ったという事例で、雇い主側に慰謝料20万円の支払が命じられました。

 また介護職では、妊娠報告した際に“想像妊娠じゃないのか”、“我が国では中絶も法律で認められている”などと言われ、妊婦であるにもかかわらず入浴介助も1人でやらされたという事例が。こちらでは、慰謝料70万円の支払が命じられました。

 妊娠中の労働者には「負担の少ない業務にしてほしい」と求める権利があるのですが、女性労働者の求めに対し、“妊婦として扱うつもりはない”、“流産しても働く覚悟はあるのか”、などと言われ、業務を軽減されなかった事例があります。これには慰謝料35万円の支払が命じられました。

 マタハラを包括的に処罰する罰則はないのですが、個々の違法行為について罰則が定められている場合があります。たとえば、女性が労働基準法に定められた産休(出産予定日の6週間前、出産翌日から8週間)の取得を求めたのに、これを拒否して働かせた場合、6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が定められています」

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