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【 弁護士が解説】「想像妊娠じゃないか?」「子持ち様」…職場のマタハラや同僚からの悪口、裁判を起こしたら慰謝料はいくら?
マタハラをした人を訴えることはできる?「暴言や悪口も違法となる場合があります」
――妊娠・出産・育児をする人に対するマタハラが、いまだ問題になっています。こうしたマタハラを受けた人を法律で守ることはできるのでしょうか。
「雇用機会均等法や育児介護休業法は、妊娠、出産、産休・育休の取得を理由とした不利益な取り扱いを明確に禁止していますし、女性だけでなく、男性も育休を取りやすくするため、どんどん法改正がなされています。ですので、『妊娠したら解雇する』『育休明けに戻ってきたら正社員から契約社員に切り替える』『産後は給料を下げる』といった、従業員に不利益になる行為は違法となります。また、暴言や悪口も違法となる場合があります。会社がこのようなことをして従業員から訴えられると、解雇や降格が無効とされて、未払分や慰謝料の支払いが命じられたりします」
病院や介護職…マタハラが起こりがちな職場は? 慰謝料はどのくらい?
「大手の企業ではさすがに『妊娠したら解雇』などという運用を堂々と行っている会社はないと思いますが、大手でも、妊娠したら降格という運用を事実上行っている会社について相談を受けたこともありますし、中小の企業では、まだまだマタハラはダメだという認識が浸透していない会社もあります。特に、病院や介護職など人手が足りない職場では、いまだマタハラがあるようです。
裁判例では、産休・育休から戻った女性が仕事から外され、さらに雇い主が他の労働者と一緒になって“育ちが悪い”、“家にお金がない”などの悪口を言ったという事例で、雇い主側に慰謝料20万円の支払が命じられました。
また介護職では、妊娠報告した際に“想像妊娠じゃないのか”、“我が国では中絶も法律で認められている”などと言われ、妊婦であるにもかかわらず入浴介助も1人でやらされたという事例が。こちらでは、慰謝料70万円の支払が命じられました。
妊娠中の労働者には「負担の少ない業務にしてほしい」と求める権利があるのですが、女性労働者の求めに対し、“妊婦として扱うつもりはない”、“流産しても働く覚悟はあるのか”、などと言われ、業務を軽減されなかった事例があります。これには慰謝料35万円の支払が命じられました。
マタハラを包括的に処罰する罰則はないのですが、個々の違法行為について罰則が定められている場合があります。たとえば、女性が労働基準法に定められた産休(出産予定日の6週間前、出産翌日から8週間)の取得を求めたのに、これを拒否して働かせた場合、6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が定められています」