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ガンプラ愛好家が絶賛、ケンプファーを大胆チェンジさせた“鮮やかブルー”へのこだわり「【映え】の要素を強く表現」
完成品ハイエンドトイへの挑戦「自分も同じくらいかっこいい物を作れば解決」
あおなたくさんの方にお褒めの言葉をいただけたことをうれしく思います。目に留めていただいた方からはお褒めの言葉とともに使用塗料・塗装方法に関するご質問が1番多かったので、それについても非常にうれしかったです。
――制作のきっかけを教えてください。
あおな完成品ハイエンドトイの『メタルビルド』シリーズでケンプファーが発売されました。非常にかっこいいと感じていたんですが、「ひとまず自分も同じくらいかっこいい物を作れば解決」と思い、積んであった『MGケンプファー』の箱を開けました。
――『メタルビルド』への挑戦から始まったんですね。もともとケンプファーは好きな機体だったのですか?
あおな普段は主人公機であるガンダム系統ばかりを制作しています。敵機や量産機はあんまり…ながらも「ライバル機」「ワンオフ機」という属性を持つ機体はつい目で追ってしまいます。ケンプファーもその例に漏れず、洗練された機体デザインと作中の電撃的な活躍から「いつかかっこよく作ろう」とキットを温めて(積んで)いたところでした。
高額な限定塗料を大量消費「たくさんの方にご覧いただけたので、瓶1本使い切った甲斐があった」
あおなケンプファー自体、モデラーの先人方の作品、作例を目にする機会が多いキットです。『メタルビルド』で表現された時代に即したアレンジやハイディテールによる格好良さ、作品・技術としての“すごい”より、多くの層から“実際に見たい/欲しい”と思わせるトレンドに即した【映え】の要素を強く表現できるような色合いにしたかったです。
――同じ青でも、部分によって濃淡のグラデーションがあったり、光の加減でも異なる印象を与えてくれます。
あおな青自体は、黒下地にガイアノーツの偏光塗料『シアノスブルー』を使用しています。塗料選定にあたり同様のメタリックブルー系やシルバー→クリアブルーによるキャンディ塗装、それらをクリアのままとするかマットとするか、などテストピースを多数制作しました。そして、技術あるモデラー仲間から知見のない家族まで、どの色合いが良いか幅広く意見を集めました。
『シアノスブルー』は、購入時から非常にきれいな塗料であることは分かっていたんですが高額、かつ限定塗料であるためこれまで使用をためらっていました…。しかしながらたくさんの方にご覧いただけたので、瓶1本使い切った甲斐がありました(笑)。
――すごいこだわりですね。
あおなありがとうございます。『メタルビルド』が制作のきっかけなのでメタルパーツを多用、ディテールを多めにいれる、をコンセプト要件にとした上で、“魅せ”の要素として『偏光塗料を使用したマットキャンディ塗装』を採用した形です。ただ塗装には苦労しました。
――どのような苦労だったのでしょうか?
あおなそもそも、塗装はそこまで得意ではないんです。メタルパーツ含めフレーム/外装まで総合的に見た場合にどちらがよいか、といったところで本当に最後の仕上げ段階まで悩んでいました。クリアやセミグロスも製品種類により特色があること。半ツヤも調量や希釈、吹き付け方により程度が変わることなどの確認は、普段の制作時よりかなり時間をかけて行いました。
――ちなみに、制作時はどのような物語をイメージしたのですか?
あおな劇中の夜戦における街明かりの中での、怪しいながらも威圧感ある出で立ち。アレックスと対峙した際の堂々とした雰囲気、ふてぶてしさ。それでいて、あでやかでかっこいい…。(同機が登場する『0080 ポケットの中の戦争』では)刹那的な活躍ながら、非常に魅力的な要素が詰まった機体だと思うので、そのイメージを表現できればと。
SNS上での発信には制作の先に「写真」として作品を切り取らなければならないので、撮り方やポージングからもそういった想いや物語が想起できるよう考慮したつもりです。
「『80点を超える秀作』をコンスタントに」が自分にも今の時代にも合っている
あおな必ずひとつ以上の「チャレンジ」を設けて制作に臨むようにしています。やったことのない工作や塗装など新しいことに。既存の技術でもより美しく精度を上げることに。撮影方法や写真のプレゼン方法に。もちろん「チャレンジ」なので成功が確約されているワケではなく失敗もあります。いい意味で気負わず制作するための逃げ道にもなりますし、ともかく実際にやってみることが大事だと考えています。何かが前の自分よりも、前の作品よりも少しだけ良いものとなるように心がけていますね。
――すばらしいですね。
あおなありがとうございます。「楽しんで制作』を大前提に。その上でそれを維持するための追求と妥協のバランスを大事にしています。理由としてはSNSや展示会を通して制作品が「作るもの」から「見せるもの」となった意識変化が大きいです。自己満足でよかったフェーズから、たくさんの人から見ていただけるようになり、端的な「美しさ」「かっこよさ」はもちろんとして、工作、塗装の技術精度も必要と感じるようになりました。
それらをとことん追求するのも楽しみのひとつかもしれません。しかし僕の場合そうなると永久に完成品がなくなってしまう。そもそも飽きてしまう、といった状況に陥る気がします。そうなると大前提である楽しさが失われてしまうため、ある程度のラインで“今回はこのくらいで“と線を引くようにしています。「限りなく100点に近い傑作」より「なるべく80点を超える秀作」をコンスタントに生み出すことが、楽しみを維持するためにも自分には合っていると思いますし、コンテンツ消費サイクルの早い時代ニーズにもマッチしていると感じています。
――市況を冷静に分析されながら、ご自身のガンプラ哲学を貫く。モデラーの理想かもしれませんね。では最後に今後の抱負を教えてください。
あおなせっかくこういった活動をしているので、メディアで取り上げていただけるような大きな大会でなにかひとつでも箔のある実績を残したい、と考えています。サークルメンバーがすでに実績持ちなので、楽しくも切磋琢磨できるいい環境で活動させてもらえていることにとても感謝しています。
また、いくつか展示会の運営という立場にも立たせていただいています。9月に東京・浅草で『ネクストモデラーズエキスポ(ネクスポ)2024』、10月に愛知・名古屋で『東海モデラーズコレクション(トモコレ)2024』を予定しております。これらの展示会も作る楽しさや新たな同好の出会いやつながりを深める場として今後の業界を盛り上げる役作りを担っていければ、という思いで臨んでいます。
ほかにも、やりたいことだけはホントにたくさんあって。いくら時間があっても足らないのですがどれも、無理のない範囲で、楽しみながら、ひとつずつ成し遂げていけたらいいな、と思い今後の活動も続けていこうと思います。