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500円ガンプラが“ガラス製”に仰天チェンジ…凄腕モデラーの“塗装マジック”は地道な鍛錬の賜物「1年以上、ガラスを観察し続けた」
500円ガンプラ使用は“苦肉の策”「コンテストに使用できるキットに制約があったため」
リューノ僕個人としてこれほどのリアクション、反響を頂けるのは初めてだったので本当に感謝しております。透けて見えるような意図で制作しても、皆さんにはどう映るのかは分かりませんでしたので純粋に「透けている」という言葉はうれしかったですね。海外の方からもコメントをいただき、影ながら努力したのは無駄でなかった…と実感出来ました。
また、最初に投稿したのが4月1日だったため、本当のガラス製品だと信じた方が心配してくれたり、励ましのコメントをくれたことにも感謝しております。エイプリルフールの“ネタ”で申し訳ない気持ちにもなりました。
――500円で購入可能な袋パッケージのEG(エントリーグレード)をベースにしたと伺いました。なぜEGをベースにされたのですか?
リューノ本作を制作したのが、2022年2月だったのですが、その年の春に開催されたコンテストが使用できるキットに制約があり、それに対応するキットとしてこれを選びました。その当時はガンプラが入手し入手しづらい状況で、店頭でも唯一と言って良いほど多く並んでいたEGのキットで何とか作品を仕上げたいと思いました。
――苦肉の策から大作が誕生したんですね。そもそもガラス塗装はどのように着想したのですか?
リューノガンプラにはクリアキットと呼ばれる透明のプラ素材が使われたキットがあります。ただ、プラモの構造上クリアキットは完全に透明にはならず組み立てる際のピンとかが透けて見えてしまうのです。それならば、「完全に透明に見えるような塗装を行った方が綺麗に見えるのでは?」と、無謀にも考えたことが着想した理由の一つです。透かす対象としてカッターマットを選んだのは、この作品を見るモデラーさんにとって身近なアイテムだというところ。そして、一定に刻まれているグリッド線が透明感を表すのに良さそうと思ったことです。
一番の苦労は視点の安定「少しでもずれると背景の線がずれて台無しになる」
リューノ本作に関しては…あまり公に言えない秘密の技法もあるのですが、透けて見えるような表現を自己流で考えて筆塗りしました。パーツの向こう側、どうやれば透明感が出るのか?ガラスのように見えたら良いな、と。
日々ガラスを観察していたので、実際にガラスで全く同じものを作ったとしたら、これほど透けることはないと理解しているので、あくまでこの作品は筆塗り表現による嘘(フィクション)の作品。なので実物ガラスより透けて見える…仕様です。あと、あまりに表現を入れすぎるとガンプラの造形自体が細かいので、ゴチャゴチャとして見栄えが汚くなるのは避けました。
――ガラスの観察を行ったんですね。
リューノ実は、今回の作品を制作する1年位前から、ガラス塗装の表現を試しておりました。ただ、自分としてはとても納得の出来るものではなかったので、通常の模型制作と並行してガラスの観察、ガラス表現の描写を練習するようになりました。
紙にガラスのコップやガラスの置物を描く練習を行った結果、紙に描く感覚でプラモデルは塗れない…と気付きました(笑)。ただ、1年以上かけて地道な練習を行った結果、筆塗りのスキル自体が上がったので無駄ではなかったと思っております。
――1つの技法を極めるべく、1年以上もガラス塗装と向き合うのは本当にすごいですね。本作において特にこだわったのはどんなところですか?
リューノ実際に塗装作業を行っている視点が少しでもずれると、描いたカッターマットの線がずれて全部が台なしになります。それは撮影時でも同じなので、普通の筆塗り作品とは比べ物にならない程に苦労しました。常に同じ場所で作業・撮影を行う事は実質不可能だと痛感しました。一方で本作を展示会に持ち込んだこともあり、「撮影位置と同じ場所であれば誰が撮影しても同じような透けて見える写真になる」という事実は証明出来たかと思っております。
“腕が折れてない仕様”を制作もすぐに後悔「寝かせた時の5倍以上の時間がかかった」
リューノ普通にガラス表現の透けて見えるガンダムを置いただけ…だと面白みがないかなと思いました。そこで、“リアルさ”を出すのであれば、実物のガラスと同じ様に落として壊れてしまった…という脆い姿を見せた方が、作品に説得力が増すと考えました。実は胴体と肩部分に磁石が仕込んであるので腕はくっつけることは可能です。ただ、腕の配置(壊れた腕を置いて見た状態)で線を描いているので、見た目は違和感があります。
――腕がくっついた仕様も気になりますね。
リューノ実は後日になりますが、「腕を直しました」という設定の作品も用意しました。ストライクガンダム柄のカッターマットが発売されたので、今度は腕を修復してその上に立たせました、という作品です。「立たせよう」と安易に考えたことを作業を開始してからすぐに猛烈に後悔しました。寝かせた時の5倍以上の塗装作業時間を費やすことになりましたので。
――ちなみに、この“ガラス製”のストライクガンダムが、本編に出てくるとしたら、どんな場面をイメージしますか?
リューノ劇中の戦闘には登場しなくていいと思っています。ガラス製の機体が戦っても壊れるだけなので(笑)。主人公や、この機体の開発に関わったキャラクターが登場する室内シーンの後ろ側にオブジェとして「ガラスのストライクガンダム」が飾られていたら…。それだけで感激です。
――大変でしたが、本当に素晴らしい作品に仕上がっていますね。本作を含め、ご自身がガンプラを制作の際にどのようなことを意識していますか?
リューノ「自分の作品を見て楽しんでもらえたらいいな」ということを常に意識はしているかもしれません。逆に気を付けているのは、楽しめない(見る人が不快に思うような)作品を皆様の目に届けてはいけないと思っています。
――素晴らしいですね。それでは最後に、ガンプラモデラーとしてのご自身の信念を教えてください。
リューノ僕は筆塗りモデラーを自称しております。塗装が上手なモデラーさんを数多く存じておりますので、出来れば自分だけの塗装表現が出来るモデラーになれるよう日々精進し続けていきたいと思っています。そして、ご覧頂く皆様に楽しんでもらえるような作品を作り続けたいです。