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「すごい緊迫感」ガンダムの名話のオマージュから生まれた、ジオン軍の“怖さ”“不気味さ”際立つガンプラジオラマ
ファーストブームを共に過ごした“おっさん”に刺さる作品を撮っていきたい
「インスタ上でザクのコンペを主催されていたフォロワーさんからお誘いいただきまして、参加するために、過去作のザクを使って新たに撮影しました。シャア専用ザクが活躍する場面は、ほとんどが初期の宇宙空間でのシーンです。私は、『キットを浮かすためのスタンドは極力使いたくない』『画像加工で消したくない』ということをこだわりにしてます。そのくせちゃんとしたジオラマもないですから、宇宙を飛んでるシーンなんて全然無理なので、地上にしてしまおうと。消去法でニューヤークになっただけなんですよ(笑)。岩場も使いまわしです(笑)」
使いまわし、と言いながらもシャア専用ザクを中央に統制の取れたジオン軍の“上陸”を見事に表現。一方で、『機動戦士ガンダム』には、これと全く同じ構図のシーンは存在しないという。
「さまざまな事情からこのテーマになりましたが、『ガルマ散る』自体は、物語的に重要な回で非常にドラマチックです。シャアの暗躍、索敵される側の怖さなど…。そのイメージを膨らませてみました。劇中ではこの写真のようなポーズやシーンはないですし、シャアザクもバズーカで武装していてぜんぜん違うのですが、ムード、イメージを楽しむことを優先しています」
一番の苦労を「三者の立ち位置、距離感です。上下左右、奥行きと重なり方に注意して撮影したのですが結構たくさんの枚数になりまして、どれが一番迫力のあるバランスか、投稿する写真を選ぶのにも苦労しました」というが、SNSでの反響も大きく、報われた。
「この写真に臨場感を感じてもらえた方がたくさんいらっしゃって、またシンプルにカッコいい、素晴らしいという声も多くいただき、うれしかったですね」
hanaさん同様、昨今ガンプラを作って終わりではなく、写真撮影まで行って作品として発表する人が増えたことについても、楽しんでいる模様。
「オモ写やデジラマなど皆さんさまざまなカタチで楽しんでいられますね。どなたの作品にも個性があって見ていて飽きないです。『これはどうやって撮っているんだろう? 自分ならこうするな』って、拝見しながらいろいろ考えるのも楽しいです。また気軽に画像加工できる無料アプリも色々出てきて、表現できる幅が広がってきているのも嬉しいですね。私もたまにアプリでエフェクトを追加した画像を作って楽しんでいます」
「次作の構想はまだない」と話しつつも、今後も作品を発表していきたいという。
「今回のように当時のファーストブームを共に過ごした“おっさん”たちに刺さるような写真をまた撮っていきたいですね(笑)。また、仲良くなったモデラーの方々から『展示会に出さないか』と言うお誘いをいただいています。実際に3次元での見せ方というのは、いままで私のやっている事とは全く違いますので、そのあたりも勉強していきたいなと考えています」
サイコガンダムの巨大感をいかに表現できるかがポイント
「たまたま再販されているサイコガンダムが手に入ったから…、というのが正直なところです(笑)。元々量産機が好きで、あまりワンオフ機やガンダムタイプのプラモデルは作らなかったので、いい刺激になりとても楽しかったです。一応『ホンコン・シティ』というタイトルを付けていますが、見た人がそのシチュエーションを好きに解釈していただけたらと思っています」
サイコガンダムへの思い入れについては、「巨大なものがとにかく好きで、40メートルクラスのモビルアーマー(MA)というだけでもドストライクです。アニメでも悲劇的な描かれ方をしていますし、ドラマチックな機体であることも好きな理由のひとつですね」と話す同氏。その言葉通り、巨大感、威圧感の表現にこだわったという。
「サイコガンダムの大きさをいかに感じてもらえるかを意識して撮影しました。足下に車や信号機を配置して、サイズ感を身近に感じてもらえるようなシチュエーションを演出できたかと思います。元々ぼかす予定だったガンダムMk-IIとリック・ディアスもしっかりウェザリングしています。ここはこだわったところですね」
本作以外にも、さまざまなキャラクターのフィギュアなどを使った「オモ写」(=おもちゃの写真の略)を発表している同氏。だが、ガンダム作品を撮るときに意識していることがあるという。
「ガンダムの作品を制作している動機として、『大きさや質量を再現したい』というのがありますね。サイコガンダムの撮影は近いスケールのものを使っての撮影でしたが、巨大感を演出するために、スケールの違うキットやフィギュアを組み合わせて撮影することもあります。モチーフとしてはもちろんアニメからのイメージの引用はキャッチーなので、シチュエーションとして人目に付きやすいと思っています。あとはそこに自分のカラーをどれだけ出せるかで調整していく感じでしょうか。大きいものが動いていたらどうなるのか、ということはよく考えています」
そんな同氏の信条は、「自分が楽しめているか」ということ。
「とにかく自分が楽しめているかが一番重要だと思います。作品のクオリティーで言えば自分なんてそんなに誇れる程の技量も知識もある訳でもありませんし、かなり手を抜いて作りたいと言うのが正直なところです(笑)。ですが制作中も撮影中も、夢中になってガンプラをいじっている時間はとても楽しいですし、生活の潤いになっていると感じます」