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「CGみたい」と絶賛、νガンダムの宿敵『サザビー』がガンプラモデラーを魅了する理由
【※】「νガンダム」の「ν」は、ギリシア文字の第13文字の「ニュー」
威圧感、恐怖感とともに、こだわった”神々しさ“
「ジオングを作っている際、ジオングに何か恐怖感のようなものを感じました。この恐怖感をもっと表現できるのはと考え。『サザビーかも?』と思ったことが、同じような作り方でサザビーを制作することを決めた経緯です」
なぜサザビーだったのか? 同氏はその理由を以下のように語る。
「もともとサザビーには、どこか威圧的で迫力があり、恐怖感すら感じるようなイメージを持っていました。サザビーは脚があるので、より全身での“表情”のようなものが出せると思ったんです。実際、ジオングの記事が公開された時に寄せられたコメントで、『できればサザビーでこの迫力を出してほしい』と書いてあるものがありました。その時は既にサザビーを作ることを決めていましたので、自分の方向性が間違っていないことも確認できました」
シャアの代名詞ともいえる“赤”を体現したサザビー。それだけにその色の出し方にはこだわりが詰まっていた。
「今回はあえてスペシャルコーティングの施してある特別なキットで制作しました。以前に制作したチタニウムフィニッシュのシナンジュの写真の仕上りが思ったより良かったので。劇中ではもう少し落ち着いた赤色ですが、燃えるようなシャアの情熱をまとっているような感じの色合いにしています。あえて外装の反射を恐れず、あえて写真を撮影したときのままの色にしています。
やはり光の反射を程よいレベルにして、作りこんだ部分がある程度視認できながらもキラキラした仏像のようなイメージを表現するというバランスに一番気を遣いますね。また、ポーズに関しても試行錯誤しています。直立した姿勢では威圧感が出ないので、よりどっしりとして力強く見えるポーズを制作しながら整えています。光の強さ、角度はもちろん、レフ板の位置や向きなどにこだわっていたら、今までで一番撮影に時間がかかりました」
タイトルは、「SAZABI IS BORN」。その由来について、威圧感や恐怖感だけではない印象があったと同氏は話す。
「完成したものを見た時、まさにサザビーが誕生した瞬間のようなイメージを受けたのでこのタイトルにしました。もう少し彩度を上げれば深い赤色にもできましたが、写真としてはどこか神々しい印象に仕上げたかったので、そちらを優先しました」
シャアが“搭乗しない”、黒×金のサザビー
「黒という色は差し色によってさまざまな表情を見せる面白い色で、例えば白を基調としたヒロイックな機体をダークに見せることができたりします。そこで今回は黒の面白さを生かして、高級感あるサザビーを目指し王道の『黒×金』になりました。黒と金の配色バランスに気を配り、ゴールドで墨入れをして全体的に暗くなりすぎ無いように気を付けながら制作しました。MGの中でもかなりの大型キットなので、単純にパーツ量に圧倒されましたね」
もともと、「塗装が好きだ」という同氏。ガンプラにおいても「カラーチェンジだけでどれだけ印象を変えられるかを目標にして制作しています。全体の配色バランスやMGならではの内部フレームも実際に完成したら見えなくなってしまうのですが、パーツひとつひとつ丁寧に塗装することを意識しています」と、その作風も一貫している。と同時に、なぜこのサザビーが黒くなってしまったのか、“設定”にもこだわりを持っている。
「この作品は自分が考えたオリジナル設定をもとに制作しました。『逆襲のシャア』の舞台である第二次ネオジオン抗争において、愛人であるシャアを失ったナナイは、密かに復讐を誓い反連邦のための機体と強化人間のパイロットを用意しました。その機体が今回制作した『サザビー』になります。実際の戦闘で黒いファンネルが敵を包囲していく様が、まるで機体を貪るカラスのように見えたことから『RAVEN』(=カラス)と呼称された。という感じです」
『逆襲のシャア』で参謀として、公私ともにシャアを支えたナナイ・ミゲルが復讐のために作らせた機体。シャアが搭乗しないサザビーゆえに、さまざまな箇所が改修されているという。
「性能としては『逆襲のシャア』に登場したサザビーがアクシズの岩盤に叩きつけられ損傷した為、オリジナルのサザビーよりもフレーム強度や機体剛性が向上しています。ただし…、用意されたパイロット(強化人間)は、シャア程のNT能力を持ち合わせていない為、機体を扱いきれるように、オリジナルよりもサイコミュの性能が下げられています。時代は宇宙世紀0094。最期は、『UC』(ユニコーン)のエピソード1に登場したスタークジェガンのパイロットに撃墜され歴史の闇に葬られました」
悲劇的な結末までイメージして制作したという本作。周囲の反応もうれしいものだった。
「今までこんなに『いいね』やリプライをいただいたことがなかったので、とてもうれしかったです。いただいたコメントのなかでも、『まるでCGみたいです』と言われたのがとてもうれしく、一番印象に残っています。ツイッターで多くのモデラー仲間と出会い、知らないことをいろいろと教えてもらっています。本当に、『一人のままでは、続けられなかったなぁ』としみじみ感じています。これからも自分なりの作品を作り続けていこうと思っています」