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「これがレゴ?」独自イラストもとに機体制作…ガンプラを使わない2人の“表現者”の理想的な関係

 ガンダムファンの“創作”というと、ガンプラを自分好みにカスタムするのが最も一般的。だが、ガンプラを使わずに、ガンダムを表現する人たちも多い。とさしん。さん(@tosashin1028)は、自身の解釈でアレンジを加えながら、さまざまな機体を独自のタッチで描くイラスト作品を多数発表。多くのモデラーがそのイラストを元にガンプラなどで表現している。そのひとりであるYOGOさん(@yg45yg)は、そのイラストを元にレゴで、機体を制作。その精緻な作りが話題となった。それぞれの得意分野で刺激を受け合っている2人に話を聞いた。

“引きこもり”をきっかけに独自解釈の機体を描くように

 独自の解釈でアレンジを加えた仕様のモビルスーツ(MS)・モビルアーマー(MA)のイラストを次々と発表しているとさしん。さん。その始まりは、体調を崩した時に訪れた。

「以前に仕事でメンタルやられて、3年程引きこもってた時期がありました。あまりにヒマだったので中高時代に描き溜めたオリジナルのメカを、タブレット端末で描き直し、ツイッターに投稿を始めました。そこで軽いノリで大好きなジオングを描いてみたら予想以上のいいね!をいただいたので、これはオリジナルメカを見てもらう“客寄せパンダ”になると思って、描き続けていくうちに楽しくなって現在に至っております」

 幼少期からイラストを描き培った素養が開花したわけだが、どのような発想で生まれているのだろうか?

「アレンジの方向性はいつも決まっていて、『より現実性を出す』ことです。ファーストガンダムで見せつけられた兵器としてのMS・MAを、戦車や戦闘機などの現用兵器のように自分なりに突き詰めて表現したいと常に思ってます。方向性は決まってますが、アレンジのアイデアはいつも描いてる途中、その場の思いつきです。全体のアレンジバランスとパースのバランス、あと巨大感と重量感を出すのには神経を使い、すり減らしてます(笑)」

 イラスト共に添えられる“細かすぎる設定”は、「公式はもちろん、Wikipedia、ピクシブ百科事典ほか、個人の分析・見解まで検索で調べ、それらを参考にしながら、アイデア設定を矛盾のないように組み込んでまとめる」というこだわりよう。そこには描く際に意識していることが関係しているようだ。

「『リアリティ(現実性)を出来るだけ表現すること』『今そこにある兵器としてのMSを出来るだけ表現すること』『形が大きく変わってもメカのイメージは逸脱しないこと』『自分が買いたいと思えるものを描くこと』ですね。そして、MS・MAをデザインされた方々のことは意識しています。大河原邦男先生、出渕裕先生、永野護先生、カトキハジメ先生、藤田一己先生、明貴美加先生…。先生がたのデザインはどれも魅力的でシンプルにまとまっていらっしゃいます。自分ごときがゴチャゴチャ手を加えてしまい、ファンの方からの批判コメントが来るのではないかと、ビクビクする毎日です」

 批判どころか、多くのモデラーに参考にされている現状はどのように思っているのだろうか?

「たかがシロウトの落書きに、ガンプラモデラーの皆様が刺激を受けてくれて制作の手助けになっていく。まさにうれし恥ずかし状態で、恐縮です。また、それが逆に、こちらの制作意欲、モチベーション向上の源になっております。これからもモデラー皆様の琴線に触れるような作品が投稿できるよう精進していこうと思っています」

レゴは元キットがないので、自分だけの作品になることが魅力

 一方、YOGOさん(@yg45yg)が、レゴで機体を制作するようになったのは、ある偶然がきっかけだったという。

「息子が生まれ、レゴで遊ばせていたのですが、『レスキューロボ』のセットを組み替えたらガンキャノンっぽいものが出来たので、これは面白いと思いました。その後しばらくして本格的に取り組むようになり、ネットに先人たちの作った素晴らしいMSが上がっており、それらを参考にするようになってレベルが上がりました。レゴ店のコンテストで入賞してしまい調子に乗ったということもあります」

 幼い頃から遊んでいたというレゴ。その楽しみ方は「当時から一度説明書通りに作っては、すぐに崩して作り変えて遊んでいた、と聞いています(笑)」と、独特のものだったようだが、逆にその遊び方が創造力を膨らませたともいえるだろう。ガンプラではなく、レゴでガンダム機体を作る魅力についてこう語る。

「レゴMSには元キットが存在せず、誰が作っても自分だけの作品になるという利点があります。また、パーツ種類が豊富で、かつ精度も非常に高いため、創作素材として大変優れているということもあります。加えて、小さな子どもでも遊べるようにある程度の大きさ以上になっていて老眼に優しいこともメリットですね(笑)」

 そんな同氏は、自身の代表作である『リックドムII』や『タコザク』など、とさしん。さんのイラストをモチーフに制作している。モデラー/ビルダーから見る“とさしん。イラスト”の魅力とはどんなものなのだろうか?

「まず全体のプロポーションが抜群に格好いいです。力強さと美しさを兼ね備えた素晴らしいイラストだと思います。また各部の造形もとても工夫されていて、レゴで再現しようとひとつひとつをじっくり見ていくと、それぞれの形に意味を持たせていることが見えてきてさらに楽しめます。もうひとつは、繊細なディテールです。プラモデルに細かなディテールを入れることが流行っているので、レゴにもそれを取り入れたいと思うのですが、ただ単にごちゃごちゃさせれば良いというものでもないので、とさしん。さんのイラストは大変参考になります」

 そんなYOGOさんのコメントに対し、とさしん。さんも、「立体化といえばガンプラなど模型しか頭になかったので、初めて『リックドム』や『タコザク』を見た時には、衝撃と、子どものころによく遊んだLEGOの無限の可能性に軽い目眩(?)を受けました。文字通り、ゼロから作りあげる、そのイメージ力や想像力、そして根気と執念に毎度感服そして眼福ものです」と賛辞を贈る。ガンプラを使わない、“表現者”同士で互いに刺激を受け合う理想的な関係と言えるだろう。

 最後に、YOGOさんにとって「レゴで作る機体」とは、自身にとってどんな存在か聞いていみた。

「『癒やし』でしょうか。成果のはっきりしない職業に就いていることもあり、その中で自分の努力がはっきりと形になって現れる創作活動は、精神の安定につながっていると思います。最近は何か作っていないと体調が悪くなるようになってしまいました(笑)。正直、レゴは制約が多いですが、これからも『レゴだから出来なくても仕方がない』と妥協せずに、作品を作っていきたいと思います」

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