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まるで“昭和のガンプラ”…箱絵の「あのザク」に新旧キットの融合、“古き良き時代”を令和に伝えるモデラーの心意気

(写真左)『旧キット風ガンダムエアリアル』 作・画像提供/今日氏 (写真右)『あのザク』 制作・画像提供/ちょい氏 (C)創通・サンライズ

(写真左)『旧キット風ガンダムエアリアル』 作・画像提供/今日氏 (写真右)『あのザク』 制作・画像提供/ちょい氏 (C)創通・サンライズ

 ガンプラのハイクオリティ化、モデラーのレベル向上も相まって、驚くほど精密な作品がSNSで発表されている昨今。その一方で旧キットを中心に、あえて“昭和のガンプラ”を表現するモデラーも存在する。今回紹介する2人のモデラーは、“昭和”を感じさせる作品で、古きよき時代の雰囲気を現代に伝えた。ハイスペック志向のガンプラとは一線を画す作風で、2人のモデラーが伝えたいこととは?

最新キットは完成度が高すぎ「少し手を加えるだけでカッコよくなる旧キットのカスタムが楽しい」

 モデラーのちょいさん(@tyoi11r)の近作は、『プロトタイプドム』のボックスアート(箱絵=ガンプラの箱の上面に描かれたモビルスーツの絵)の片隅に描かれたサムズアップするザク。旧キットのボックスアートの再現だが、主役機ではないという驚きの着眼点に多くのガンダムファンがうなった。

「『プロトタイプドム』の背景、しかも半分だけ描かれているだけのザクなのに、『みなさんよく分かるなぁ』、と。知っている同志がいっぱいいてうれしかったですね(笑)。レスには絵文字の『サムズアップ』が飛び交ってたのが印象的でした」

 制作のきっかけは仕事が忙しい時期に、気分転換に旧キットザク手に取ったことだという。

「気分転換に簡単に作れそうなキットはないかな、と目に映った旧キットのザクを手に取りまして。ちょうどその頃、タグで『ナイスザク、ナイス○○』というのが流行ってて、『ナイスザクといえばこのポーズだな』と(笑)。『整備ばっちりだぜ!』みたいな感じですよね(笑)。やや前のめりなところがかわいいです。『プロトタイプドム』のボックスアートのように、端っこにちょこんと写るネタとして、汎用性もあり、隣の機体を『ナイス』してくれます(笑)」

 苦労したところは、「サムズアップの親指と左手の謎工具」。だがその苦労すらも楽しんでいる様子が伝わってくる。

「謎工具の構造がほんと謎で、何をマネたらいいのやら(笑)。箱絵を参考に、真鍮線をなんかソレっぽく曲げて作りました。その後、細かいところが判明しまして、もう少し手を加えてます。加えたところで、謎工具のままなのが浪漫ですね(笑)」

 本作も含め、旧キットの箱絵の再現を作風とする同氏。ハマったきっかけは、「長期出張先のホテルで旧キットのザクを制作したこと」

「手元に工具があまりなかったので、ほぼ素組みに水性塗料の筆塗り。ものすごく雑な仕上がりでしたが、そんな作り方がめっぽう楽しくて、以来そんな方向性になってます。旧キットは、関節のタイミングなど、少し手を加えるだけで見違えるほどかっこよくなるところです。また最近ではそのまま作っても、いい味があるように思えてきました。歳でしょうか(笑)。また、去年作ってみたボックスアート風の旧キット『シャアザク』が結構楽しくて。以来、1/144旧キットのボックスアート全制覇が差し当たっての目標ですかね。いつかどこかの展示会でずらっと全部並べられたら最高です」

 最近のハイスペックなガンプラは、「組み立てるだけで、よく動く超かっこいい完成品になるのはほんとすごいと思います」と話すが、「自分にはハードルが高い」という。

「完成度が高過ぎて、これをさらにかっこよくさせたいとなると、僕にはハードルが高いですね。そのままで満足しちゃう。僕は、旧キットのカスタムが楽しいですね」

「現代のキットはプラモデルというより“組み立てトイ”のように感じる」

 一方で、最新キットをあえて“デチューン”(=あえてパーツの性能を落とすカスタム)し、ガンダム最新作『水星の魔女』の主人公機・ガンダムエアリアルに昭和の雰囲気をまとわせたのが、モデラーの今日さん(@kyo512a)。なぜ、本作を作ろうと思ったのだろうか?

「もう9年も前になるのですが、『ガンダムビルドファイターズ』の劇中のセリフで「ガンプラはどんな自由な発想で作ってもいいんだ」という言葉に感銘を受けまして。それにあやかって当時、このように最新キットと昔の旧キットを混ぜたような作品を自由に制作したら、周りの方々に大ウケでした。今作もそのアイデアの一環です。作品名は、『旧キット風ガンダムエアリアル』。使用したキットは『HGガンダムエアリアル』と『旧キット1/144ガンダム』です」

 最新キットと“最古参キット”の融合だが、40年以上の歳月による性能の差が出てくる。そこは「旧キットの“味”にこわだった」と同氏は言う。

「『HGガンダムエアリアル』に本来ない、旧キット特有のパーツの合わせ目を彫って再現。関節もHGのものを切り落として可動域の少ない旧キットのものに置き換えるなど、構造も旧キット風にこだわりました。塗装はガンダムエアリアル本来の配色で塗っています。苦労した部分は前述しましたが、どちらかに偏りなく、どう違和感なく混ぜていくかでしたね。実際に制作してみて、たまにはこういう作風もいいなと思いました。こだわりを入れれば、(旧キットに)思い入れのある方にはよく分かって頂けるという点も」

 旧キットと最新キットを融合することによってガンプラの進化を感じたという。

「今のキットは特に可動域が物凄く、プラモデルというより“組み立てトイ”という面が大きくなってきたのかなと感じます。高額キットは、精密さや密度・情報量も昔とは比べ物にならなくなりましたよね。プラモデルは、モデル=模型として見て楽しむ側面が強いものだと思います。対して、“組み立てトイ”と表現したのは、可動域を追求した結果、組み上げたら可動フィギュアのような出来となり、触る・動かして遊ぶ玩具という側面が大きくなっていると感じまして。無論、今のキットを見るものとして楽しむ方がいるのも承知していますし、それを否定するわけでは全くないのですが。
 また、デザインの変遷という面でも『水星の魔女』のガンダムエアリアルは特に有機的、より人体に近いデザインになっているように思いました」

 ハイスペック志向だけではないガンプラの楽しみ方。多くのモデラーの方々にもぜひやってみてほしいと話す。

「最新キット・ハイディテールのキットを、あえて以前の年代相応に“デチューン”するというガンプラの新たな楽しみ方を提示できたのではないかと思います。旧キット愛好家の方も多いと思いますので、腕に覚えのある方は挑戦してみてはいかがでしょうか」

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