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裏側に喫煙者の本音も…市場縮小のなか新規参入も続々「加熱式たばこ」の可能性とは?
海外とは異なる日本人特有の“配慮”、一部のマナーの悪さに喫煙者も辟易
だが、たばこ市場全体では、まだまだ紙巻たばこのほうが主流といえる。各ユーザーの割合は地域や年代によって異なり、禁煙場所の多い都市部では加熱式の割合が高く、比較的吸う場所が限定されない地方では紙巻が多い。また、高齢者は新しいデバイスに変えず、昔ながらに紙巻を吸う人が多いと見られる。とはいえ、少しずつ加熱式ユーザーが増加していることは確かだろう。
そもそも、喫煙者が加熱式たばこへと移行する理由とは何か。加熱式たばこ使用者を対象としたインターネット調査(2018年、厚生労働省)では、加熱式を使い始めた最大の理由は「匂いが少ないから」、次いで「周囲の人への害が少ないから」。つまり、“周囲への配慮”が主な理由だ。海外では「自身への健康被害」が理由として多く挙げられることを考えると、誠に日本人らしい考え方だといえよう。
しかし最近では、加熱式たばこの存在感が増したことから、「加熱式でも変わらず健康懸念がある」「加熱式による受動喫煙の曝露が増加している」といったネットニュース等も増えてきた。もちろん、加熱式だからといって、健康懸念や受動喫煙による被害がなくなるわけではない。JTからは、第三者機関による調査で「紙巻たばこに比して健康懸念物質の約9割が削減された」と発表されているが、やはり「0」ではない。結果、嫌煙家VS愛煙家の論争も紙巻から加熱式へと舞台を移し、いまだ繰り広げられているというわけだ。
とくにヒートアップしがちなネットやSNS上の論争では、とかく対立しているように見える両者。だが、そもそも大半の喫煙者は対立構造を望んでいないはずだ。どちらかといえば、一部のマナーの悪い喫煙者に対する怒り、加えてそれを全体像と捉えられることに辟易している人が多勢だろう。
もはや紙巻たばこの「代替品」ではない、加熱式たばこに求める「満足度」
この背景についてJTは、以下のように見ている。
「喫煙者への風当たりが強いこの時勢、『紙巻きたばこを吸い続けるのははばかられるが、それでも吸いたい』という人が加熱式たばこへ移行しているのでしょう。TPOに応じて紙巻と加熱式を併用する方が多い一方、完全に加熱式のみに移行する方もいます。そうして市場は成長しているわけですが、これは各社が吸いごたえや味わい、フレーバーなど品質を向上させていった結果でもあると思います」。
この説明にある通り、2021年には最新デバイス『アイコス イルマ』、『プルーム・エックス』が発売。各社のデバイスの性能が飛躍的に向上した結果、それぞれ個性はあるものの機能面ではそこまでの差はなくなっている。
「私たちは“移行”というよりも、さまざまな“選択肢”を提案したいと取り組んでいます。その結果、『加熱式たばこは単なる“紙巻たばこの代替品”ではなくなった』との声もあります。代替品でないのならば、加熱式には紙巻と同様の美味しさや吸いごたえ、またにおいや煙の少なさも求められる。それに応じて、『プルーム・エックス』が誕生したわけですが、発売から1年、たばこスティックのフレーバーも増えました。また、コンセプトやデザインで“ハイエンドガジェット”のイメージを付与することにより、シェアも伸びています。喫煙者の方々が周囲に配慮しながら、さらに味でも満足できるといった状況が形成されつつあるのではないかと見ています」。
喫煙者にとっては、以前よりは自由度が減ったとはいえ、デバイスの進歩は歓迎すべき話だろう。だが、非喫煙者が気になるのは、やはり受動喫煙による周囲への影響だ。前述のように、加熱式だからといって安心はできない。
「もちろん、懸念がすべて払拭されたわけではありません。それだけに、健康懸念物質を削減するための研究、第三者機関を入れた調査を実施し、少しでも課題解決できるよう努めています。60年代からは喫煙者のマナーに関する呼びかけも行ってきましたが、加熱式といえどそこは変わらない。非喫煙者に迷惑をかけない意識の向上も必須だと考え、現在も続けています」。