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Nakamura Hakが切り開く新時代のリアリティ 無修正の新人が突きつける“生”の音楽

 素性を明かさず、歌とギターだけで聴き手を圧倒するシンガーソングライター・Nakamura Hak。修正や編集を排した一発録りの緊張感、現代社会の痛みを鋭く映し出す歌詞、そして“リアルにそこに在る”ことを証明する生々しい歌声――。テレビアニメ『とんがり帽子のアトリエ』やテレビドラマ『るなしい』のテーマソングに起用され注目を集めるなか、音楽ライター・濱口英樹氏とボイストレーナー・遠藤舞氏が、それぞれの視点から、この異質な才能の核心に迫る。

Nakamura Hak キービジュアル

Nakamura Hak キービジュアル

現在の邦楽のメインストリームとは異質の強烈な個性 ―― 濱口英樹

 新たな風雲児の登場と言っていい。この春、地上波テレビのアニメとドラマのテーマソングに相次いで抜擢されたシンガーソングライター、Nakamura Hakのことだ。現在、判明している本人の情報は“東京・田園調布生まれ、OL。またの名を、中村「 」____無名。”のみ。名前が「 」となっているのは「Hak」と「白」(何も書かれていない白紙の状態、余白)を掛け合わせているのだろう。デビュー時にはアーティスト写真も公開せず、音以外の要素をことごとく排除している点にも興味を引かれる存在だ。

 それゆえ年齢や来歴など、周辺情報に引っ張られることなく、純粋に楽曲の世界に没入できる。冒頭で「風雲児」と述べたのは、彼女の音楽に現在の邦楽のメインストリームとは異質の強烈な個性を感じ取れたからだ。

 まずは全曲アコースティックギターの弾き語りというスタイル。音を目いっぱい詰め込んだJ-POPが主流の昨今、装飾を排したサウンドは新鮮に響く。驚くことにレコーディングでは修正や編集を一切しないという。音楽制作ソフトDAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)の普及によって、さまざまな加工や補正が可能になっている制作環境では異例のことで、音楽の原点に立ち返った方式と言える。

 そして何より印象的なのはリアルで時代性を備えた歌詞だ。内面の葛藤や社会の不条理を切っ先鋭い言葉で綴る。情報は溢れているが、何が正しいかを見極めるのは難しい現代社会。明日が見えにくい令和の日本で、彼女は悶々と自問自答し、光を求めて、もがき続ける。
  • Nakamura Hak『白は夢』CDジャケット

    Nakamura Hak『白は夢』CDジャケット

 5月20日リリースの1st EP『白は夢』は収録曲の多くが“僕“や”僕ら”の視点で、「こうありたい」と願う自分と現実とのギャップを時に呟くように、時にぶちまけるように歌唱。私小説的な作風は、カルト的な信者ビジネスを描いたテレビ東京系ドラマ『るなしい』のオープニングテーマに起用された「善と悪」でも発揮されている。やはり同EPに収録される「居無(いない)」は“虚無”に通じる造語だが、直截的な表現にとどまらない独特のワードセンスも光る。
■1st E.P. 『白は夢』 - 全曲試聴(クロスフェード)(外部サイト)
  • Nakamura Hak「ただ美しい呪い」ジャケット(CD)

    Nakamura Hak「ただ美しい呪い」ジャケット(CD)

 一方、6月10日に発売される1stシングル「ただ美しい呪い」は、テレビアニメ『とんがり帽子のアトリエ』(TOKYO MXほか)のエンディングテーマで構成。いずれもアニメの世界観に寄り添った楽曲で、作家としての幅を感じさせてくれる。
■「ただ美しい呪い」 - Anime ver. Music Video(外部サイト)

 Nakamura Hakのメッセージは、いわゆる一発録りの緊張感で増幅されて聴く者の心に爪痕を残す。それは一過性の流行や消費される音楽の対極に位置するもの。ボーカルのみならず、スラム奏法も駆使したギターの表情も多彩で、聴き始めると容易にスキップできない魔力がある。おそらくライブこそが彼女の真骨頂で、歌う朗読劇のような味わいがあるに違いない。

 タイアップ曲は先行配信されているが、EPとシングルはCDのみのリリースだという。ショート動画やサブスク発のヒットが目に付く昨今、あらゆる点で独自のスタイルを貫く新人の今後に注目だ。
■「夜に浮かぶ」 - Anime ver. Music Video(外部サイト)

【プロフィール】
音楽ライター/歌謡曲愛好家として雑誌やWEBに寄稿するかたわら、CD/DVDの企画監修・選曲・解説を担当。2016年よりFMおだわら『午前0時の歌謡祭』(毎月第3・第4日曜24時〜25時)でMCを務める。『ヒットソングを創った男たち~歌謡曲黄金時代の仕掛人』(シンコーミュージック)、『作詞家・阿久悠の軌跡 没後10年・生誕80年 完全保存版』(リットーミュージック)など著書多数。近著は『教養として知っておきたいラジオの世界』(日本実業出版社)。

「リアルにそこに在る」という美しさの証明 ―― 遠藤舞

 ボイストレーナーとして日々多くのアーティストに歌唱指導を行う中で、改めて痛感することがある。それは、現代の音楽がいかに「完璧」に制御されているか、ということだ。

 かつて私自身も、「アイドリング!!!」での活動やソロシンガーとしてのレコーディングを経験してきたが、今の時代、ピッチ(音程)やリズムを直すのは当たり前。たとえ一音上手く歌えなくても、その部分だけを録り直す「パンチイン」や、別テイクを切り貼りする編集技術で、誰でも非の打ち所がないパッケージを作ることができる。けれど、Nakamura Hakの1st EP『白は夢』には、その「逃げ道」が一切ない。歌とギター一本。修正も編集もなし。そこにあるのは、デジタル全盛の現代において、暴力的なまでに新鮮な「アナログのリアリティ」だ。
■「白は夢」 - 弾き語り 動画(外部サイト)

 一曲をつるりと通して歌う際のプレッシャーは、私自身もステージやレコーディングで幾度となく経験してきたからこそ、痛いほどわかる。物理的なミス以上に、「守りに入ってしまった心」や「昂りすぎた精神の揺らぎ」が、そのまま音に刻まれてしまうからだ。しかし、彼女はその「人間味」をそのまま差し出してくる。

 驚かされたのは、ブレス(息継ぎ)の生々しさだ。実はブレスにも音高(ピッチ)がある。「十七」という曲の冒頭のブレスは低く穏やかだが、感情が昂る後半、そのピッチは「ヒュッ」と高くなる。まるで泣いている時のしゃくりあげのようだ。音声学的に言えば、空間が狭いほど音は高くなる。感情が昂り交感神経が優位になると、喉の周りの筋肉が収縮して物理的に喉が狭くなるのだ。聴き手は、耳に入ってきた彼女の声や息遣いから身体の反応が勝手にミラーリングされることで、その心の痛みをまざまざと追体験させられる。

 彼女は「泣くように歌う」表現が異様に上手い。例えば「居無」のとあるワンフレーズでは、地声に息を多めに送り込み、裏返るか否かの境界線を攻めて揺らぎを表している。声色の作り込みも見事で、おそらく時々喉にある「甲状軟骨(喉仏を構成する軟骨)」を絶妙に前傾させることにより、泣いているような響きを作っているのだろう。さらに、あえての不規則なビブラート。緻密な計算か、あるいは制御不能な感情の露呈なのか。その境界の曖昧さに、聴き手は翻弄される。
  • kamura Hak「善と悪」ジャケット(配信)

    kamura Hak「善と悪」ジャケット(配信)

 加えて「刃物と月」で見せるあどけない声や、「善と悪」「砂のお城」におけるノイズの使い分けにも注目してほしい。声帯や仮声帯、さらには口蓋垂までをも精緻にコントロールしたであろうその表現を味わい尽くすには、やはり「無編集」という選択が、最も贅沢で、最も正しい。
■「善と悪」 - Drama ver. Music Video(外部サイト)

 完璧な人間など、この世にはいない。緊張感さえも修正液で消さずに世に出す。それは、自然の摂理に逆らわない「リアルにそこに在る」という美しさの証明だと私は思う。

 かつて「完璧なプロダクト」を目指す世界にいた私にとって、彼女の音楽は、泥臭く、けれど気高く生きる人間の姿そのものに見えた。このあまりにも贅沢な「生」の音に、ぜひ耳を澄ませてみてほしい。

【プロフィール】
1988年7月31日生まれ、東京都出身。2006年よりアイドルグループ・アイドリング!!!のメンバーとして活動。在籍中はリーダーを務め、高い歌唱力、トーク力を武器に活躍。2014年からはソロシンガーとして活動し、2017年に芸能界を引退。現在はボイストレーナーとして多くのアイドルグループや歌手に歌唱指導をする傍ら、レコーディングの仮歌、CMのナレーション、オーディションの審査員など幅広いフィールドで活躍中。

白浜 鴎描き下ろしイラスト (C)白浜鴎/講談社/「とんがり帽子のアトリエ」製作委員会

白浜 鴎描き下ろしイラスト (C)白浜鴎/講談社/「とんがり帽子のアトリエ」製作委員会

【Nakamura Hak プロフィール】

田園調布生まれ、OL。
またの名を、中村「 」____無名。

歌とアコースティックギターのみで録音された
数曲を以て、2026年4月にデビュー。

修正、編集、一切なし。
張り詰める空気、つんざく息遣い、摩擦と揺らめき。

何百万文字を書いても伝わらない「 」を声にして、
それでも言葉を諦めず、未来を呪(まじな/のろ)う。

終わりの手前にある音楽。

■X:https://x.com/hak_nakamura(外部サイト)
■Instagram:https://www.instagram.com/hak_nakamura(外部サイト)
■YouTube:https://youtube.com/@nakamura_hak(外部サイト)
■TikTok:https://www.tiktok.com/@hak_nakamura(外部サイト)
【リリース情報】
CDリリース
■1st E.P. (CD ONLY)「白は夢」
 リリース日:2026年5月20日(水)
 品番:CTCM-65136/価格:1650円(税込)
 ※初回生産限定盤 封入特典:CD購入者は無料で入場できる全国ツアーの応募券(先着順)
 EC:https://maximum10.lnk.to/NakamuraHak_001(外部サイト)
<収録内容>
 1. 十七
 2. 白は夢
 3. 刃物と月
 4. 砂のお城
 5. 居無
 6. 善と悪 / テレ東系ドラマ「るなしい」オープニングテーマ(BONUS TRACK)
 7. 善と悪 - Drama ver.(BONUS TRACK)

■1st シングルCD「ただ美しい呪い」
 リリース日:2026年6月10日(水)
 収録3曲すべて、TVアニメ『とんがり帽子のアトリエ』エンディングテーマ
 品番:CTCM-65137/価格:1320円(税込) 
 EC:https://maximum10.lnk.to/NakamuraHak_001(外部サイト)
<収録内容/予定>
 1. ただ美しい呪い
 2. 夜に浮かぶ
 3. 光り
 4. ただ美しい呪い - Anime ver.
 5. 夜に浮かぶ - Anime ver.
 6. 光り - Anime ver.

先行デジタル配信
Debut Digital Single「ただ美しい呪い」配信中
 Streaming/DL:https://maximum10.lnk.to/nakamurahak_str_tadautsukushiinoroi(外部サイト)

■2nd Digital Single「夜に浮かぶ」配信中
 Streaming/DL:https://maximum10.lnk.to/nakamurahak_str_yoruniukabu(外部サイト)

■3rd Digital Single「善と悪」配信中
 テレ東系ドラマ『るなしい』オープニングテーマ
 Streaming/DL:https://maximum10.lnk.to/nakamurahak_str_zentoaku(外部サイト)

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