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逆風の中で活況の“喫煙ビジネス”、「慈善事業ではない」助成金に頼らない収益化目指す
THE TOBACCOの店舗の様子
このご時世に全席喫煙可能? 逆風の中で産声上げた「喫煙ビジネス」
例えば、全席喫煙可能なカフェ『Lighters』。21年8月から渋谷の公園通りにオープンしたカフェで、たばこを吸う人と吸わない人との共存を目指した政治政党「愛煙党」党首が店長。喫煙目的店として、喫煙しながらコーヒーなどの飲料や料理を楽しむことができる。
同じように、紙たばこも含めた喫煙席があるカフェ『THE SMOKIST COFFEE』は、現在都内で4店舗を運営(昨年末には仙台にも展開)。またスキマデパート『paspa』は、都内の小さなスペースを借り上げて喫煙所として展開。併設している自販機の売上で維持費を捻出しており、現在は20ヵ所に設置。都内200ヵ所の設置を計画しているそうだ。
上記はおもに喫煙場所の提供+飲料の販売でマネタイズしているパターンだが、少し形態の異なる民間喫煙所『THE TOBACCO』も、メディアで取り上げられ話題になった。当初は都内2店舗で運営していたが、現在は7店舗に増加(4月5日より8店舗)。「非喫煙者と喫煙者が共存できる新たな空間」を目的とした新しい喫煙所ブランドで、使用は無料。非喫煙者にとっても喫煙者にとっても、心地よい体験を演出することを目指している。
難しいマネタイズ、だが「タクシー広告」に類似した強みも
THE TOBACCOの店舗
株式会社コソドの山下悟郎社長
「まずイニシャルコスト(初期費用)の回収にかなり時間がかかるんです。そのため、喫煙所を作るにしても、自治体からの助成金ありきでスタートする場合がほとんど。業態が店舗の運営、不動産、自販機、無人系であれば多少なりとも利益になるでしょうが、そういったバックグラウンドなしでマネタイズするのは難しいビジネスだと思います」(山下社長/以下同)
では、『THE TOBACCO』はどのように収益化しているのか。
「助成金を使う場合も使わない場合もあるのですが、それを超えた利益を自分たちで作っていかなければならない。我々のビジネスでは、ディスプレイなどを使って情報を発信するデジタルサイネージを利用しています。要は、喫煙所の中で物を売るというより、喫煙所をメディアと捉えて広告媒体化したのです。企業から宣伝費用をいただくという形で、変な言い方ですが、そこで“外貨”を稼いで運営の一助にする形ですね。単店ではなく、法人としてのPL(損益計算書)という意味合いでは収益化できています」。
ちなみに、気になるデジタルサイネージの効果だが、クライアントからは「タクシー広告と効果が似ている」との声が上がっているそうだ。タクシー広告はビジネスの決裁者層にリーチすることが多いが、喫煙所利用者も同じように30〜50代が多く、決裁者やその予備軍がよく利用する。そういったターゲット層が喫煙所で1日に何度も広告を目にし、“認知”する機会があることは、広告媒体として大きな強みになる。実際、タクシー広告やエレベーター広告に出稿している企業が興味を示し、想定以上のスピードで収益化されているという。
人流が生まれ、ポイ捨て8割減…秋葉原の喫煙所が見せた可能性
THE TOBACCO、秋葉原の店舗
「JR高架下のショッピング施設・秋葉原SEEKBASEに『THE TOBACCO』秋葉原店が入っているのですが、その利用者が1日1,000人近く。しっかり、人流を作り出せていると考えます。また、30〜50代男性をターゲットとする周囲のテナントや飲食店への波及効果も認められるため、皆さんからも応援していただいていますね」
もちろん、もたらしたのは人流だけではない。喫煙所本来の役割としても、抜群の効果を発揮した。
JR秋葉原駅の近隣には、ほとんど公共の喫煙所がない。さらに同所は千代田区に位置するため、ほぼ全域が路上禁煙地区になっている。喫煙所がない、もちろん路上でも吸えない。追い詰められた喫煙者が集まってしまったのが、近くのコインパーキングだった。残念なことに、そこには1日数百本の吸い殻が捨てられていたという。
「つまり、それだけ吸う場所に困っている人がいる」と考えた山下社長は、コインパーキングと連携して「ここに喫煙所を作ったので、たばこはそちらで」と誘導する看板を設置した。結果、吸い殻の数は約8割も減少し、近隣からも非常に喜ばれたそうだ。