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上坂すみれの濃厚“読書”日記 & この際読んでほしい「ロシアの本」3選+α 社会主義グルメに偏愛ドストエフスキー!

難解なイメージが強いロシア文学 挫折しないコツは……「ない」

――ところでロシア文学は途中で挫折しやすいイメージもありますが、上手な付き合い方やコツなど、アドバイスがあれば教えてください。
正直、ないですね(笑)。合う合わないがすごくあるし、無理してロシアに染まろうと思ってもダメだと思います。音楽でメタルが大好きという人もいれば、さっぱりな方も、とはっきり分かれるのと同じですね。ロシア文学でもチェーホフとかは短いですし、文体も平易なものがあります。ゴーゴリはラフな翻訳版が出ていてそれはすごく面白かったので、そのあたりから始めてみるのもいいかもしれません。

ただ最初は、たとえばマンガ化したものを読んでみて、「これハマらない……」と思ったら早めにやめた方がいいですし、逆に「面白い!」ってなったらいろいろ試してほしいなと思います。
――なるほど。では、読んでみたいと思っている人に1冊薦めるとしたら?
迷いますね。どっちもちょっとシュール系の小説なのですが、『巨匠とマルガリータ』(ミハイル・ブルガーコフ著)や『ズディグル アプルル』(ダニエル・ハルムス著)。あとはアニメですが、ソ連生まれのキャラクターである『チェブラーシカ』を観てみるのもおすすめです。日本版のアニメではかわいいものが多いのですが、ぜひソ連版の『チェブラーシカ』を観てほしいです。そこはかとない絶望感に包まれた世界なので、あの雰囲気が好きという人はロシア文学に合うと思います。

【左】著:ブルガーコフ、翻訳:水野忠夫『巨匠とマルガリータ(上) 』岩波文庫、2015年/【右】著:ダニエル ハルムス、翻訳:田中隆『ズディグル アプルル―ハルムス100話』2010年

【左】著:ブルガーコフ、翻訳:水野忠夫『巨匠とマルガリータ(上) 』岩波文庫、2015年/【右】著:ダニエル ハルムス、翻訳:田中隆『ズディグル アプルル―ハルムス100話』2010年

――ちなみに、あまり期待せずに読み始めて「これは面白い」と感じたロシア関連の本はありますか?
全然知らなくて読んだのですけど、米原万里さんという方が書かれた『ロシアは今日も荒れ模様』(講談社)は、ソ連崩壊前後のロシアの様子が描かれているのですが、米原さんは通訳として活躍されていた方で、リアルなソ連を知っているので内容が深いです。ロシアに興味を持った方ならぜひ読んでほしい本です。

――上坂さんはロシア語学科を卒業されていますが、学生のころに読んだ本で印象的なものはありますか?
ロシア人はプーシキンという詩人がとても好きで、教科書にも登場するのですが、すごく韻を踏むのが美しい詩人とされています。初めて触れたときは「ロシアの詩ってきれいなんだな」と感銘を受けました。あとは女性の作家さんが多くて、ロシア語の演劇部に入っていたので女性の詩人が詠んだ詩を劇でやったのが思い出深いですね。
――改めてロシアで「一番好きな作家」を挙げるとするならば誰でしょうか?
やはりドストエフスキーです。生き様がロックというか、ギャンブルをして借金を返すために小説を書いていたというタイプの人なのですが、そういうところがロシア文学っぽい。その実体験をもとに、どん底の人々、ロシア屈指のダメ人間たちのお話をいっぱい書いていて、“ダメであるほど研ぎ澄まされていく人”というのがカッコいいなと思いますね。
――では最後に、ソ連やロシアに関して今後研究を続けたいテーマと、上坂さんにとって「ロシア文化の魅力とは」を教えてください。
せっかくロシア好きの声優として活動しているので、架け橋的な活動はライフワークにしていきたいですし、ロシアでイベントをやるためにロシア語は今後もちゃんと勉強したいなと思います。

ロシア文化の魅力は、ベースが不毛な地というマイナスからの出発で、頑張って命を燃やして生み出されているというところがあり、とにかく生きづらい環境のなかで図太くカッコよく思い悩みながらも生きて……といった魂の輝きみたいなのが感じられるところです。昔の、ロシア・アヴァンギャルド(※)の作家さんは若くしてこの世を去った方が多いなか名作がいっぱいあります。そういう「太く短く強く生きる」というスピリットが、ロシア文化を素敵だと思う点です。

※19世紀末から、ロシア革命によるソ連誕生を経た1930年代初頭までに芸術各分野に起こった運動の総称。伝統からの脱却と革新を目指した。

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