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「個」から再び「共有」へ…コロナ禍で見直される“音楽の楽しみ方” 親子のコミュニケーションツールへの回帰

コロナ禍によって家族がそろう機会が増え、音楽の聴き方にも変化がみられる

コロナ禍によって家族がそろう機会が増え、音楽の聴き方にも変化がみられる

 1年におよぶコロナ禍で「在宅」や「巣ごもり」といったライフスタイルがすっかり定着。とかくネガティブに語られがちなワードだが、大切な人とおうち時間が増えたことをポジティブに捉える人も多い。このおうち時間の増加により、さまざまな部分で変化が生じているが、“音楽の楽しみ方”もライブイベントの減少に伴い、“空間で共有する音楽”への渇望が日増しに高まり、家庭用オーディオ機器に再び注目が集まっている。これは昨今のレコード&カセットテープ再評価の流れとも呼応しているようだ。

家族で共有する時間が拡大し会話が増加 “共通言語”としてリビングで音楽を共有

 コロナ禍によりどこか鬱屈とした日々のなか、ポジティブな話題といえば夫婦、親子、恋人といった大切な人と共有するおうち時間が増えたことだ。先ごろパルシステム生活協同組合連合会が「コロナ禍における食卓の変化」をテーマに、子ども(3歳以上の未就学児〜大学生)がいる全国20〜60代の男女を対象に行ったアンケート調査によると、「コロナ禍前と比べて、家族との夕食の際、食卓にそろう人数に変化はありましたか?」という設問に対し、約2割が食卓にそろう家族の人数が増えたと実感。さらに、平日すべての曜日で家族全員そろって夕食を食べる頻度が増加していることがわかった。

 特に変化を実感しているのが「食卓での会話」であり、全体の17.6%が「増えた」「とても増えた」と回答。中でも一般的に平日の夕食を一緒にする機会が少ない男性(父親)は20%と高い傾向にある。大人は仕事に邁進、子どもは塾や習い事と、近年ますます「個」に分散していた家族が、食卓を共にし、会話することで、これまで知らなかったより深いパーソナルな部分も見えてくる。互いの個を共有する場として機能するのがリビング。そのリビングをより充実した共有スペースにするためのツールとして、また“共通言語”として音楽を選択するユーザーも増加。スマホの普及と音楽配信サービスの躍進により、近年は“お1人様”での音楽鑑賞がすっかり定着するなか、家族の会話をきっかけに”音楽の楽しみ方“も変化している。

音楽メディアの進化と価値観が変化…音楽は“個”のものに

みんなで”共有”して楽しむ音楽から、”個”で楽しむ音楽の時代に

みんなで”共有”して楽しむ音楽から、”個”で楽しむ音楽の時代に

 ここで、“音楽の楽しみ方”がコロナ禍前後でどう変化したのかをひも解く前に、日本における音楽メディアの変遷について触れておきたい。
 戦後復興期を超え、人々に娯楽を楽しむ心の余裕が戻ってきたころ、レコードやラジオを楽しむ文化が、市民にも徐々に浸透していく。当時の状況について総合家電メーカー・Panasonicのオーディオ機器に特化したブランド『Technics』担当の上松泰直氏はこう話す。

「当時はまだまだオーディオは高級品でしたので、裕福な方が応接間に置いたりして使われていました。テレビの黎明期に“街頭テレビ”に人々が群がってみる姿の映像が残っていますが、オーディオもそれと同じように、持っている人の家にお邪魔してみんなで楽しむ、という使われ方をしていました」(上松氏)

 空間に人を集め、1つの機器から流れる音楽を「共有」して楽しむ。祖父母と孫、親と子など世代間にギャップがあっても、1つのものを共有する時代。子どもたちも上の世代の人たちの好みの音楽を聴くことで、「良質な音楽の継承」が自然と行われてきた。
 高度経済成長期以降は、メーカーの切磋琢磨によって、音質をはじめとする家庭用オーディオは目覚ましく進化。70年〜80年代には最盛期を迎える。だが、90年代に入ると、人々のライフスタイルの変化から、音楽の楽しみ方が激的に変わる。

「80年代に入ると少しずつ様子が変わってきて、それまでの”質”の部分から、“利便性”や“手軽さ”が注目され始め、90年代にはその傾向が顕著に。家でじっくり音楽と向き合うというよりは、持ち運べるとか、好きな時に好きな所で聴けるということが最重要視されて、音楽を聴くスタイルが変わっていきました。それに伴い、オーディオは小型化、軽量化していきます。応接間にドンと存在感あるオーディオよりも、各自の部屋にラジカセが置かれる時代になり、それぞれ好きな音楽を聴く時代になっていったんです。

 それまで当たり前だった“時間や空間を共有して音楽と向き合う”というよりは、“自分の生活スタイルのなかに音楽を取り入れていく”時代になっていった。カセットテープやCD、MDといった音楽のフォーマットの変化がそれを可能にしました。圧縮されている分、音質は落ちてしまうんですが、音質と利便性を天秤にかけたときに、利便性を選ぶ時代になっていったんですね」(上松氏)

 ラジカセやミニコンポ、カセット/CD/MDのポータブルプレイヤーなどの登場によって、音楽は「共有」するものから「個」で楽しむものへと変化。さらに、2000年代以降は、音楽配信サービスが広まり、スマホで音楽を聴く時代に突入。家族や友人らと、空間で音楽を共有していた時代は終わり、「ネット上でデータを共有する」ことが主流となっていた。

コロナ禍で新たな需要、家庭用オーディオ出荷数が前年越え…レコード盤再評価も呼応

食卓に家庭用オーディオがあることで”音の交流”が生まれている

食卓に家庭用オーディオがあることで”音の交流”が生まれている

 だが昨今のコロナ禍での家族と共有する時間、会話の増加に伴い、これまでお互いに深く踏み込まなかった“嗜好”を共有し合うケースが増加。音楽を通じた会話も増えていると上松氏は言う。

「家の中で、お父さんお母さんと子どもさんが会話する時間が増えて、今までになかった会話が生まれているようです。例えば、昔お父さんが聴いていたレコードやCDが会話の種になったり、逆に子どもさんが今ハマっている音楽がどんなものなのか、など世代間を超えた“音の交流”というものが増えているように思います」(上松氏)

 近年のアナログレコードの再評価やシティポップブームも相まって、若年層の“ルーツミュージック”を探る志向の上昇、子どもが今どんなことに関心があるか知りたい親にとって“流行歌の情報収集”。この原点帰りともいえる「親子双方向での『良質な音楽の継承』」は、まさにコロナ禍がもたらした数少ない光明といえるだろう。
  • 2019年/2020年6月以降スピーカーシステム月別国内出荷実績(数量) ※(一社)電子情報技術産業協会(JEITA)調べ

    2019年/2020年6月以降スピーカーシステム月別国内出荷実績(数量) ※(一社)電子情報技術産業協会(JEITA)調べ

  • 2019年/2020年6月以降システムオーディオ月別国内出荷実績(数量) ※(一社)電子情報技術産業協会(JEITA)調べ

    2019年/2020年6月以降システムオーディオ月別国内出荷実績(数量) ※(一社)電子情報技術産業協会(JEITA)調べ

  • 家庭用オーディオ需要が高まる中で、『Technics』が昨年10月に発売した『SC−C70MK2』も好評

    家庭用オーディオ需要が高まる中で、『Technics』が昨年10月に発売した『SC−C70MK2』も好評

 (一社)電子情報技術産業協会(JEITA)が発表した「2020年民生用電子機器国内出荷統計」によると、2020年中盤以降システムオーディオ、アンプなど家庭用オーディオ機器の、国内出荷数が増加。なかでもスピーカーシステムは、6月以降全月で前年同月比を大きく上回った。この結果は、こうした家庭内での需要と、コロナによりライブイベントの相次ぐ休止も相まって、同じ空間で音楽を共有することへの飢餓感の表れともいえるだろう。実際、『Technics』が昨年10月に発売した、1台でCDやラジオ、ストリーミングサービス、スマホからのワイヤレス再生が可能なコンパクトステレオシステム『SC-C70MK2』も、従来のファンを超えた幅広い購入層が見られるという。

「30〜40代のファミリー層にも支持していただいています。半世紀以上にわたり"次の音"への挑戦を続ける『Technics』としては、手頃な価格と空間に調和するデザイン、それでいてハイエンド機に匹敵するサウンドを実現していることから、家庭で手軽に良質な音楽を楽しみたいという需要にマッチしたようです。
 今はストリーミングで音楽を楽しむ方が多いでしょう。またアナログレコードに惹かれる方も増えています。しかしどんな音源ソースであっても、最高のサウンドで再現すること。ひいてはそれが世代の異なるご家族同士で音楽を共有する豊かな時間につながれば、『Technics』としては、これほどうれしいことはありません」(上松氏)
 親から子へ、同じ空間で音楽を「共有」しながら、曲に対する印象や思い出を対面で話すことで、データだけでの「共有」とは異なる、付加価値が加わった体験になる。こうした「良質な音楽の継承」が影響をもたらすのは、親子のコミュニケーションだけではない。過去の楽曲が再び注目されることによって、その名曲はより深く次の時代へ語り継がれ、淘汰されず普遍性を帯びていく。CDから配信への移行、さらにコロナ禍によってライブイベントが相次いで休止となるなど、暗い話題が先行しがちな音楽業界にとっても、一筋の光明と言えるだろう。

取材・文/児玉澄子

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