VR時代に「リスニング」へ回帰する、空間オーディオ新時代の可能性
オープンソース化し、あらゆるアーティストが活用できる仕様に
ウィリッツたちが開発した新しい「空間オーディオ」技術は、サラウンド音響でのライブだけでなく、ヘッドフォンでの視聴、さらに昨今話題のVRにも最適な技術だという。
「Envelopは、次世代の360°サラウンド音響を実装したライブ空間と、あらゆるアーティストがどんな音でも空間オーディオに変換できるツールの提供を目指しています。今年サンフランシスコで専用の会場を開設しました。また、空間音響での音楽制作用に、Ambisonic(アンビソニック)技術を応用したソフトウェアを開発してフリーで提供しています。すべてがオープンソースですので、『Ableton Live(音楽制作とパフォーマンスのためのソフトウェア)』での利用も自由。立体音響の技術は、例えばアリーナ級の会場、ホームリスニング用のサラウンド再生、さらにVRや360°動画にも最適なのです」
「僕のアルバム『Horizon』は、すべて空間オーディオのソフトウェアで制作しています。Spotifyで聴いても360°音響が体験できるように設定しました。既存の音楽とは印象で一線を画しますが、三次元での作曲という全く新しい技法は注目に値します。通常の音源では体験できない、細部にまで耳を傾けるという没入体験を生むことができるからです」
坂本龍一の『Async』を立体音響に変換
世界的に起きている、音楽コンテンツを実験的に表現する会場の減少と制作コストの高騰は、大きな問題だというウィリッツ。『Envelop』は、サンフランシスコでの展開に加えて、米国のフェスなどとも連携し、立体音響のサテライト音場を提供していくという。音楽業界でも注目を集めるVRを含めて、立体音響の可能性には今後も注目していきたい。
文:ジェイ・コウガミ/撮影:西岡義弘
クリストファー・ウィリッツ
ミュージシャン、アーティスト、サンフランシスコに拠点を置く教師。ギターとボイスで作成された瞑想的な雰囲気のエレクトロニックミュージックを制作。坂本龍一、ティコ、テイラー・デュプリーなどのソロアルバムでのコラボレーションは、過去15年間で27以上。経験豊富な教師として、世界の多くの主要機関で講義も行っている。
ミュージシャン、アーティスト、サンフランシスコに拠点を置く教師。ギターとボイスで作成された瞑想的な雰囲気のエレクトロニックミュージックを制作。坂本龍一、ティコ、テイラー・デュプリーなどのソロアルバムでのコラボレーションは、過去15年間で27以上。経験豊富な教師として、世界の多くの主要機関で講義も行っている。