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(更新: ORICON NEWS

「第3のビール」とは何?新ジャンル、発泡酒とは何が違う?

変化の激しい昨今の時代において、今あまり使われない言葉が「第3のビール」である。
 
「第3のビール」は「新ジャンル」ともいわれていたが、現在は公式には使われておらず、「発泡酒A」(酒税法上の定義)として販売が続いている。

ここでは、以前は新ジャンルともいった第3のビールについて解説する。

ビールと発泡酒の定義

第3のビールも新ジャンルも同じものを指す造語である。
このような表現をしている国は日本ぐらいで、なぜこのようになったかというと酒税法でのビール系飲料の定義の影響が大きい。酒税がかかるのはビール、発泡酒、新ジャンルと3段階に分かれていたからである。

2023年10月の酒税法改正以降、酒税は第3のビール、新ジャンルは発泡酒へ統合されており、2026年10月にはさらに発泡酒とビールもすべて統一されることになる。
第3のビールについて説明する前に、ビールと発泡酒の定義について解説したい。

ビールの定義

ビールと発泡酒の違いについては、日本では酒税法上の規定が重要になってくる。まずビールは次のようにイ号、ロ号、ハ号として規定されている。
【ビールの定義】
イ:麦芽、ホップ及び水(のみ)を原料として発酵させたもの

ロ:麦芽、ホップ、水及び麦その他の「一定の副原料」を原料として発酵させたものである。ただし、「一定の副原料」の重量の合計が、「麦芽の重量の100分の50 以下」のものをいう。(「ロ号ビール」)

ハ:ロ号ビールに加えることができる副原料として、ホップのほか、「麦芽の重量の100分の5以下」の重量の範囲内で、「果実またはコリアンダー等の香味料」が添加されたもの(「ハ号ビール」)


なお、ハ号ビールにおける「果実またはコリアンダー等の香味料」には、下記のものも認められている。

【果実またはコリアンダー等の香味料」に含まれるもの】
〇果実(果実を乾燥させ、若しくは煮つめたもの、または濃縮した果汁を含む。)
〇コリアンダーまたはその種
〇ビールに香りまたは味を付けるために使用する次の物品
 ・こしょう、シナモン、クローブ、さんしょう、その他の香辛料またはその原料
 ・カモミール、セージ、バジル、レモングラス、その他のハーブ
 ・かんしょ、かぼちゃ、その他の野菜(野菜を乾燥させ、または煮つめたものを含む。)
 ・そば、またはごま ・ 蜂蜜、その他の含糖質物、食塩またはみそ
 ・花または茶、コーヒー、ココア、もしくはこれらの調製品

発泡酒の定義

発泡酒とは酒税法上の定義としては次に掲げるもので、発泡性を有するアルコール分20度未満のものとなっている。
※この中に、発泡酒A(第3のビール)も含まれている。
【発泡酒の定義
イ:麦芽または麦を原料の一部としたもの(例:大麦など)

ロ:イ以外の酒類で、ホップを原料の一部としたもの

ハ:イまたはロ以外の酒類で、香味、色沢その他の性状がビールに類似するものとして政令で定める一定のもの
また、世界各国ではさまざまな種類の原料からビールがつくられているが、たとえばベルギーのビール類をみると、修道院で製造されたものは技術に優れ、現在もその製法が伝承されているものが多い。
ベリー類などの果実を副原料として添加したものや、いろいろな麦芽の種類を利用するビールが製造され、ほかにも各種の天然ハーブ(ホップ以外の)を加える製法が試みられてきた。

これらの特殊なビールは酒税法上は果汁などの含有量によって日本では発泡酒扱いになる。原料の種類とその配合(割合)により、規定されているので「発泡酒」とは人為的な定義ということになる。

出典:東京国税局「ビール・発泡酒に関するもの」(外部サイト)

発泡酒と新ジャンル(第3のビール)の価格の違い

ビール酒税が3段階に分かれていたときは、いずれも350ml換算で、ビールは77円、発泡酒は約47円、新ジャンルは28円であった。
発泡酒より新ジャンルの方が酒税は20円近く安く、この差が店頭での販売価格の差に反映していた。もちろん新ジャンルの方が原料価格が若干安いということもあると思うが、税金による効果の差が非常に大きいといえる。

ビール系飲料の税率( 財務省:酒税に関する資料 より)

ビール系飲料の税率( 財務省:酒税に関する資料 より)

出展:財務省「酒税に関する資料」(外部サイト)
しかし、現在の首都圏での発泡酒と従来の新ジャンル製品(発泡酒②)の価格の差を見てみると、
著者の近辺では、発泡酒の「淡麗グリーンラベル」は350ml缶で155円で販売されており、同じメーカーの以前新ジャンルといわれていた「本麒麟」は350ml缶で150円で販売されていて、発泡酒と新ジャンルの価格差は5円程度の少額となっていた。
2026年10月には、ビールと発泡酒の酒税は統一される。このため税金の面からは、2026年末には、発泡酒も新ジャンル(第3のビール)もすべてビールとの差はなくなることになる。

2024年8月現在、酒税法上では新ジャンルや第3のビールという言葉もなくなっているため、第3のビールという用語はメディア等で使用されるだけとなっている。

酒税法における現在の新ジャンル(第3のビール)について

改めてになるが、新ジャンル、第3のビールと呼んでいたものは、2023年10月の酒税法改正以降は発泡酒Aに分類されている。

前述のグラフのように2024年8月現在でビール系飲料の酒税は63.35円で、発泡酒は46.99円となっている。(350ml換算)
財務省の資料によれば、新ジャンルは既に発泡酒に統一されていて、従来の発泡酒とは区別するため発泡酒Aが新たに導入されたのだ。

このような変化の中で第3のビールとして発売された商品が現在も残っているのは、その商品が消費者に支持されているからだと言える。
各社が新商品として発売したビールでも今はもう販売されていないものも数多くあるため、この点からも第3のビールは現在も健在ぶりを発揮しているといえるだろう。


各社の新ジャンル(第3のビール)商品

ここでは、現在も販売されている主な第3のビールを紹介する。

本麒麟(キリンビール)【発泡酒②】

第3のビールとしてキリンビールから販売されているのが「本麒麟」。

本麒麟らしい『力強いコク・飲みごたえ』を維持しながらも、もう一口飲みたくなる「飲み飽きなさ」を向上した完成度の高いうまさとなっている。

アルコール分6%であり、原料は、発泡酒(国内製造)(麦芽、ホップ、大麦、コーン、糖類)、大麦スピリッツと記載されている。

【公式サイト】https://www.kirin.co.jp/alcohol/beer/honkirin/(外部サイト)

アサヒ ザ・リッチ(アサヒビール)【発泡酒②】

第3のビールとしてアサヒビールから販売されているのが「ザ・リッチ」。

目指したのは、“日々飲みたくなるプレミアム”。贅沢醸造で丁寧にこだわってつくり、豊かな麦のうまみと飲み飽きない余韻を実現。

アルコール分は、少し高めの6%。ふだんの夜のひとときにリッチな時間を提供し、心が輝き、気持ちが華やかになる商品となっている。

原料は、発泡酒(国内製造)(麦芽、ホップ、大麦、米、コーン、スターチ)、スピリッツ(大麦)と記載されている。

【公式サイト】https://www.asahibeer.co.jp/rich/(外部サイト)

金麦(サントリー)【発泡酒②】

第3のビールとしてサントリーから販売されているのが「金麦」。

ていねい製法『贅沢麦芽』仕込みにて、・天然水仕込・季節ごとに味わいをととのえる・うまみ三段仕立てとなっている。

アルコール分5%であり、原料は、発泡酒(国内製造)(麦芽、ホップ、糖類)、スピリッツ(小麦)と記載されている。

【公式サイト】https://www.suntory.co.jp/beer/kinmugi/(外部サイト)

のどごし<生>(キリンビール)【発泡酒②】

もう一つキリンビールが販売している第3のビール「のどごし<生>」。

ホップの飲みごたえの進化による、ゴクゴク飲める爽快なうまさとなっている。

アルコール分5%で、原料はホップ、糖類(国内製造)、大豆たんぱく、酵母エキスと紹介されている。

【公式サイト】https://www.kirin.co.jp/alcohol/beer/nodogoshi/(外部サイト)

クリアアサヒ(アサヒビール)【発泡酒②】

アサヒビールが販売しているもう一つの第3のビール「クリアアサヒ」。

飲みやすくておいしいの秘密は、クリアアサヒ独自の“晴れやか仕上げ”。麦芽・ホップ・発酵の高度な調和を保ちながら、丁寧に濾過。こだわりの素材と醸造工程で、すっきりの中に、うまみ引き立つおいしさを実現している。

アルコール分5%であり、原料としては、発泡酒(国内製造)(麦芽、ホップ、大麦、米、コーン、スターチ)、スピリッツ(大麦)と紹介されている。

【公式サイト】https://www.asahibeer.co.jp/clear/(外部サイト)

ゴールドスター(サッポロビール)【発泡酒②】

サッポロビールの第3のビール「ゴールドスター」。

ヱビスのホップと黒ラベルの麦芽を一部使用。新・うまいどこまでも製法で麦の味わいがアップし、力強く飲み飽きないうまさにさらに磨きをかけている。

アルコール分5%であり、原料は、発泡酒(国内製造)(麦芽、ホップ、大麦)、スピリッツ(大麦)と記載されている。

【公式サイト】https://www.sapporobeer.jp/goldstar/(外部サイト)

まとめ

発売当時は新ジャンルともいわれた第3のビールについて解説した。
2026年10月には発泡酒もビールと同じ税金となり、今後はビール系飲料の中で商品ブランド間の競争が激しくなっていくと思われる。
現在は「発泡酒A」に酒税の区分が変わった「第3のビール」が、日本人好みのブランドのひとつとしてビール酒税が統一された後も支持されていくことを期待している。
著者プロフィール

たに おさむ
ビールメーカー技術職として31年間勤務したのち、独立行政法人の技術プランナーとして4年間、大学(東工大)・産学連携コーディネーターとして9年間勤務後、現在はフリーのライターや監修者として活動中。
発酵関連の酵母、麹菌、乳酸菌などの微生物代謝とその生成物(アルコール含む)が専門であり、技術士(生物工学部門)を取得している。西部劇を含むハリウッド映画や、近隣ウオーキングコースを歩くのを趣味としている。

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