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「ビールのアルコール度数」とは?

ビールのアルコール度数はどうやって決まる?

ビールのアルコール度数は、ウィスキーなどの蒸留酒とは違って低いが、どうなって決まっているのだろう。またビールの中でもアルコール度数に違いがあるなど、あまり知られていないことも多いのではないだろうか。

酒税法における「アルコール分(度数)」とは、温度15度のときに試料の容量100分中に含有するアルコールの容量のことをいう(容量での割合となる)。たとえば、15℃の試料100ml中にエチルアルコールが20ml含まれている場合、アルコール度数は20度となる。

そもそも、ビールのアルコール度数とは製造工程においてどのよう要因によって決まるのか。知っているようであまり知られていない、ビールに関する基本的なギモンについて解説する。

アルコールを生成する酵母

酵母は、いわゆる「醸造酒」といわれるビールや清酒などの製造には欠かせない役割を持っている。またウィスキーなどの「蒸留酒」についても、蒸留前の発酵段階では酵母が使用される。
原料である糖質から、アルコール(エタノール)と炭酸ガスを生成するために活躍するキーパーソンともいえる存在が、酵母になる。

ちまたでもよく聞く「ラガー酵母」は日本でもよく使用されており、世界的にみても一番製造量が多く、ビール類を生産するためには欠かせない酵母である。
このラガー酵母は、酵母が発酵する際に、発酵タンクの中で上面から下面へ、そして下面から上面へとぐるぐる浮遊しながら発酵するため「下面発酵酵母」ともいわれ、ドイツ伝統のピルスナータイプのビール製造をはじめ、世界中のビール会社で使用される。

これに対して、英国・アイルランド由来のエールタイプのビールに使用されているのが、「エール酵母」といわれる酵母となる。こちらは、主に発酵タンクの上部で発酵がすすむ「上面発酵酵母」として知られている。

【参考】「お酒の香りー生物学からみたお酒の世界とその歴史ー」フレグランスジャーナル社, 2015, p29(外部サイト)


糖度とアルコール発酵の関係

実際には酵母はどのようにアルコール(エタノール)を生成するのだろうか。
エタノールは、ビール酵母によるアルコール発酵(エタノール発酵ともいう)の主産物である。

ビール製造の段階で、麦芽から麦汁がつくられるが、この中には麦芽由来の糖分(酵母が食べることのできる糖質のこと)が含まれている。この糖分を元に酵母の発酵が起こり、糖分(糖分の濃度を、糖度という)の95%が、エタノールと炭酸ガス(ビールの泡の成分)となる。
ついでながら、その他の副産物も発酵によって生成されるので、人はビールを美味しく飲めるのだ。
純粋にエタノールと炭酸ガスのみが生成した場合、単に炭酸ガスが溶けたアルコール入り炭酸水のような状態となってしまう。この副産物をいかにコントロールするかが、ビールの発酵においては重要だ。

麦芽由来の糖分がエタノールとなるので、糖度が高いと発酵後のアルコール度数は高くなる。
エールタイプのビールなどでは、麦芽の種類を工夫したり、添加量を上げることで、より高い濃度の麦汁をつくってから発酵させている場合が多い。このため、出来上がったビール(エール)のアルコール度数は比較的に高くなる。英国のエールではアルコール度数が低いものもあるが、通常は5〜6%となり、日本でよく飲まれるピルスナータイプのビール(4〜5%)より、アルコール度数は高い。

また、同じく英国のスタウトなどでは、麦芽に加えて、原料の一部に砂糖なども使用する。砂糖もビール酵母が食べることができる糖質であり、砂糖を加えたスタウトでは、アルコール発酵後のアルコール度数が高くなるのだ。

【参考】
「ビールの基本技術」(ビール酒造組合編)、日本醸造協会発行、2002、p47(外部サイト)
「お酒の香りー生物学からみたお酒の世界とその歴史ー」フレグランスジャーナル社, 2015, p29(外部サイト)

お酒の種類による、アルコール度数とは?

ここでは、いろいろなお酒のアルコール度数について見てみよう。

すぐわかるのは、ビールはアルコール度数が低いのに対して、ウィスキーの度数はビールの10倍近く、40度以上ある。
これは、ウィスキーがビールのような発酵液をさらに蒸留して、アルコール濃度を高めているからだ。厳密には、ビールや清酒は「醸造酒」と呼ばれるが、ウィスキーや焼酎などは「蒸留酒」として区別される。

ウィスキーでは、まず酵母で麦汁を発酵させて発酵液をつくる。この発酵液には、ビールと違いホップは入っていないが、蒸留所ではこの発酵液を「ビール」と呼ぶ場合がある。
また、ウィスキーではビールより高濃度の麦汁を使いアルコール発酵させて、通常のビールよりアルコール度数の高い発酵液としている。使用しているのはビール酵母ではなく、アルコール生成能力が高くアルコール耐性も高い、いわゆる「ウィスキー酵母」だ。
通常のビール酵母は、ウィスキー酵母と異なり、自身のアルコール耐性が低いため、ウィスキー用麦汁の発酵を最後まで進行させるのが難しい。

ビールのアルコール度数は、通常4〜6%程度なので、アルコール度数だけで種類を区別させるのは難しい。
アルコール発酵による副産物(たとえばエステル類など)を強調したビールなど、メーカーには異なる製造方法も求められている。

【参考】
「お酒の香りー生物学からみたお酒の世界とその歴史ー」フレグランスジャーナル社, 2015, p29(外部サイト)

アルコール度数とビールの味わいについて

ビールやウィスキーのアルコール発酵などについて説明したが、ここからはビールに特化して、その味わいについても解説する。

アルコール度数とビールの味わいの関係

ビールの味わいは、アルコール度数以外にも、ビールの「こく」やエキス分の存在割合にも関連する。
エキス分には、窒素化合物やホップ由来の成分などの仕込み成分もあるが、大半は麦汁由来の炭水化物における残存物質によるものだ。これらの成分量が、アルコール成分とも合わさって、ビールのコクを形成している。

これ以外にも、アルコール発酵により生成する炭酸ガスが、ビールの味わいに関与している。炭酸ガスは、のどの奥を刺激し、舌の上の味覚神経に作用する「こく」成分とあいまって、ビールの味わいを形成する。

なお、ビールの色は麦芽由来の成分により決まるが、ビールの色が濃いものほど、その味も濃いと感じてしまう効果が心理学実験で確かめられているのだ。いわば、ビールの醍醐味は、人の五感で感じるものといってよい。

【参考】
「お酒の香りー生物学からみたお酒の世界とその歴史ー」フレグランスジャーナル社, 2015, p29(外部サイト)

ビールの種類とアルコール度数

「ビール」の種類とアルコール発酵やその度数との関係について、欧州起源のさまざまなビールを例にとり説明しよう。

エール(英国起源):アルコール度数最大6%程度

エールは、上面発酵酵母を使用して、ピルスナータイプのビールよりやや高濃度の麦汁を使用して発酵する。このためアルコール度数は、高めの5〜6%程度だ。
またエール酵母は、上面発酵による代謝産物も起因して、エステル類の生成が特に多い。したがって、アルコール度数は高いものの、華やかな香りとなる場合が多い。
エールの中でも、ホップの香りと苦味が強調されたペールエールは、日本でもクラフトビールメーカーなどで製造されることが多い。

スタウト(英国・アイルランド起源):アルコール度数最大8%程度

先にも説明したが、スタウトは原料の糖質の一部に砂糖などを使用して発酵させることが多い。
エールと同様に上面発酵型であり、また砂糖は酵母が発酵させることができるので、結果的にアルコール度数が高くなっている。

ボック(ドイツ起源):アルコール度数6%程度

ドイツ発祥のビールであり、アルコール分は6%程度だ。ボックは、麦芽の風味が感じられ、コクのあるビールとなっている。

ランビック(ベルギー起源):アルコール度数最大8%程度

ランビックは、麦芽以外に小麦や古いホップ、場合によっては果汁なども添加してから発酵させるビールだ。また酸味が比較的強く、飲みごたえに定評がある。

トラピスト(ベルギー起源):アルコール度数最大10%程度

修道院であるトラピストの名前を冠した(かんした)ビールであり、ランビックと同様に上面発酵により作られる。苦味の強い伝統的な濃い色のビールとして知られている。
以上、欧州起源のビールについて説明した。

一方、北米の主要メーカーでは、通常の麦汁(10〜13%)よりも濃い麦汁(13〜18%)を発酵させて醸造する方法(高濃度醸造:High Gravity Brewing)を、ろ過工程以前に使用する場合がある。この場合は、酵母が発酵できる糖度も高くなるので、発酵後のアルコール度数は高い。
◆ビールの種類別アルコール度数まとめ

ビールの種類

アルコール度数

エール(英国)

最大6%程度

スタウト(英国・アイルランド)

最大8%程度

ボック(ドイツ)

6%程度

ランビック(ベルギー)

最大8%程度

トラピスト(ベルギー)

最大10%程度

【参考】
お酒のはなし、独立行政法人酒類総合研究所編・発行、2003年(外部サイト)
「ビールの基本技術」(ビール酒造組合編)、日本醸造協会発行、2002、p47(外部サイト)


アルコール度数と酔いの関係

アルコール度数と聞くと、酔いとの関係も気になる。特に日本人などのアジア系の一部の人種では、ある種の酵素系(アルデヒド脱水素酵素)が欠損している場合があり、その他の人種に比べて、アルコールの影響度合いが高い。

アルコールは、まず体内で「アルコール脱水素酵素」によりアセトアルデヒドとなり、その次に「アルデヒド脱水素酵素」により酢酸へと代謝される。この中間のアセトアルデヒドがたまると、体への悪影響の度合いが高くなってしまう。またアルコールは、脳に直接到達するため、脳の神経細胞に作用し麻痺させて、脳が酔った状態となりやすい。

酔いに関するお酒の1単位(酔いの単位として)としては、次のようになる。
ビールでは、アルコール度数5度の場合、中ビン1本(500ml)が1単位とされている。これに対してウィスキーでは、アルコール度数43度の場合、ダブル1杯(60ml)で1単位になってしまう。
なお合計3単位で、人は酩酊初期になるとされているので、注意が必要だ。これは、ビール中ビンでは3本、ウィスキー・ダブルでは3杯の量となる。
お酒の種類や個人差にもよるが、くれぐれも飲み過ぎには注意してほしい。
酩酊初期:
・血中アルコール濃度 0.11%〜0.15%
・酔いの状態 気が大きくなる、大声でがなりたてる、怒りっぽくなる、立てばふらつく など
【出典】
飲酒の基礎知識|(公社)アルコール健康医学協会(外部サイト)

酔いに関するお酒の1単位

ビール

アルコール度数5度 なら

中びん1本[ 500ml ]

日本酒

アルコール度数15度 なら

1合[ 180ml ]

焼酎

アルコール度数25度 なら

0.6合[ 約110ml ]

ウイスキー

アルコール度数43度 なら

ダブル1杯[ 60ml ]

ワイン

アルコール度数14度 なら

1/4本[ 約180ml ]

缶チューハイ

アルコール度数5度 なら

ロング缶 1缶[ 500ml ]

※合計3単位で、人は酩酊初期になるとされている。
【出典】
飲酒の基礎知識|(公社)アルコール健康医学協会(外部サイト)

まとめ

アルコール度数は、ビールをたしなむうえでも基本ともいえるものだ。ビールを製造するうえでキーとなるビール酵母により、アルコール(エタノール)が生成され、この結果、ビールを嗜むことができる。

本記事では、原料である麦汁の糖度や酵母から始まり、ビールの種類による味わいの違いなどについて、できるだけ詳しく解説した。
ビール製造の基本を理解したうえで、是非さまざまなビールを嗜んで頂ければ幸いである。
著者プロフィール

たに おさむ
ビールメーカー技術職として31年間勤務したのち、独立行政法人の技術プランナーとして4年間、大学(東工大)・産学連携コーディネーターとして9年間勤務後、現在はフリーのライターや監修者として活動中。
発酵関連の酵母、麹菌、乳酸菌などの微生物代謝とその生成物(アルコール含む)が専門であり、技術士(生物工学部門)を取得している。西部劇を含むハリウッド映画や、近隣ウオーキングコースを歩くのを趣味としている。

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