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加速する“前髪命”カルチャー、アイドル・美容系YouTuberの影響で「前髪クリップ」も定番化 立役者は意外な企業?
AKB48から美容系YouTuber、そしてすべての女子へ…メイクよりも“前髪命”が常識に
それから時を経て、今や“前髪命系女子”はアイドルだけではなくなった。ヘアスタイルの中でも、なぜピンポイントに前髪にこだわるのか? その答えを示唆するような調査を、ヘアケア剤を展開するメーカー・マンダムが2020年1月に行っている。
同社が15〜29歳女性を対象に実施したアンケートで、「SNSにアップする写真を撮る前にやること」として「前髪を整える」と回答した人は74.7%。これは次点の「リップや口紅を塗る」(56.3%)よりもはるかに多かった。理由として最も多かったのが「前髪で印象が変わるから」というものだが、中でも目からウロコだったのが「髪型は画像加工がしにくいから」という回答だ。
最近ではリアル嗜好も出てきたものの、若い女性にとって、ビューティ系カメラアプリで写真を撮り、さらに画像加工をした上でSNSにアップするのは常識だ。後からいくらでも修正できる肌感やメイクに対して、髪型、特に顔の印象を左右する前髪はカワイイを作る、いわば最後の聖域なのだ。かくして美容系YouTuberはこぞって前髪テクを発信し、SNSにも“#前髪命”のハッシュタグ付き投稿が数多く見られるようになった。
前髪を守る新定番アイテム、普及の背景にSNSと「カワイイ」あの企業
ポイントは通常のヘアクリップとは異なり、面で髪を押さえるため跡が付きにくいこと。構造はシンプルながら、跡をつけないための面の広さやクリップの強度など細かいこだわりが詰まっている。
大切な前髪を乱れやうねりから守る便利なアイテム。とはいえ、ここまで普及したのには理由があった。キーワードは「カワイイ」だ。
あくまで実用品ながら、昨今はアニメやマンガなどのキャラクター付きのカワイイ前髪クリップが目立つ。その起源を辿ったところ、「前髪クリップに初めてキャラクターを付けたのは当社だと自負しています」という証言を、日本のカワイイ文化を牽引してきたサンリオから得られた。
「サンリオが初めて前髪クリップを発売したのは2013年。当時は今ほど一般的ではなかったものの、“前髪用”をうたったシンプルな形のヘアクリップはありました。キャラクターを付けるというアイディアは、『カワイイを作るためのアイテムなら、カワイイものが欲しい』という1社員の提案からでした」(サンリオ商品企画担当、以下同)
商品第1弾は、ハローキティのリボンだけが付いた前髪クリップ。当初より売上は好調だったが、本格的にブレイクしたのは2014年にキャラクターの“顔”のデザインを付けた前髪クリップを発売してからのことだという。
「その頃から、美容系YouTuberという存在が増えた印象があります。その方々がメイク動画でサンリオの前髪クリップを付けてくださり、それをご覧になって購入される視聴者さんも多かったのかなと思います。コツコツ売れていた前髪クリップですが、その頃から一気に人気商品へと駆け上がっていきました」
本来は人に見せないメイクをする姿を、可視化させるのが美容系YouTuberの仕事だ。実用品でありながら画面映えもするキャラクター付き前髪クリップは、隅々までカワイイにこだわりたい美容系YouTuberにうってつけの商品だったのだろう。
なお、2014年はInstagramが日本でサービスを開始した年でもある。また2017年にはTikTokが日本に上陸し、たちまち若者の間で人気に。“前髪命”カルチャーとSNSの関係は前述した通りで、前髪クリップが定番化していった背景には複合的な時代の後押しがあったようだ。