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「そのスマホ充電、間違ってます!」相次ぐバッテリー発火事故、ロスなく安全に「リチウムイオン電池」を使うには?

スマートフォンとモバイルバッテリー ※写真はイメージ

スマートフォンとモバイルバッテリー ※写真はイメージ

 コードレス掃除機や歯ブラシなどの小型家電から、スマホやノートパソコン、電気自動車まで、今や私たちの生活を支える存在となっているリチウムイオン電池。一方で、「電車内でモバイルバッテリーが発火」「ゴミ収集車内の発火の原因がリチウムイオン電池」といった事故が報じられ、話題となっている。スマホなどを充電すると熱を持つケースもあるが、これは正しい状態なのだろうか? 陸上自衛隊の衛星通信車などに導入されているリチウムイオン電池採用のバッテリーの開発を手掛けるベネテックス社取締役・篠崎允弘氏(崎はたつさき)に話を聞いた。

リチウムイオン電池の広がりはIT革命がきっかけ「小型軽量化を実現して一気に普及」

 再生可能エネルギーの普及が世界的課題となっている今、市場規模を拡大しているのが、充電して繰り返し使える蓄電池。中でも今や身の回りの製品の多くに使われているのがリチウムイオン電池だ。2019年に発明者のひとりである吉野彰氏がノーベル化学賞を受賞したことは記憶に新しいが、研究開発は1980年頃にスタート。1990年代に実用化され、急速に普及したのは、1995年の「Windows95」発売とともに巻き起こったIT革命がきっかけだった。

「リチウムイオン電池は鉛蓄電池に比べ、エネルギー密度が高いため、それまで難しかった小型軽量化を実現しつつ、大容量の電力を蓄えることができるのが最大の特性です。小型軽量化によって、デジカメなどの小型家電やノートパソコンなど使われ、一気に普及していきました。弊社では最近、“2000万円キャンピングカー”で話題のGORDON MILLERの『GMLVAN G-01』の車内大容量バッテリーを手掛けたのですが、通常だと12ボルト・100アンペアのバッテリー8個分くらいに相当する電池容量なので、総重量240kgになってしまいます。しかし、僕らはリチウムイオン電池を使い開発することで、総重量を75kgにまで抑えることができました」

 一方で、「リチウムイオン電池といっても、さまざまな種類がある」と篠崎氏は言う。同社では、容量は小さいが安全性の高い『リン酸鉄リチウムイオン電池』を採用。その上、過充電や過放電はもちろん、バッテリーバランスをととのえる制御システムや、電池が高温になった場合に自動的にファンが回り中の空気を外に出すシステムや、警告音を発して自動的にシャットダウンするシステムなども搭載しているという。

「電気自動車やハイブリッド車もそうですが、何個も電池を使う価格の高い製品は、安全性はもちろんのこと、電池の寿命を長くするためにもさまざまな工夫を凝らしています。私どもでは、小型の商品を取り扱っていないので推察になりますが、スマホやなどで使われているバッテリーは、そもそも『リチウムイオン電池』の種類が異なるのに加え、価格的にもサイズ的にもそのような機能を搭載するのは難しいのだと思います」

ガソリンを使う発電機から蓄電池への移行も「音もニオイもなく、CO2も出さない」

 では、私たちが普段使用している小型の日用品で使用されているリチウムイオン電池を安全に使用するためには、またエネルギーロスを避け、長持ちさせるためにはどのようなことに注意したらいいのだろうか。

「まずスマホを充電しながらネットを閲覧したり、ゲームや動画視聴するなど、“ながら使用”をすると、充電と放電が同時に行われることによって熱を持ってしまい、電池の寿命を縮める原因となるので避けてください。電気は熱なので、使用している機器が熱くなっているときは余分なエネルギーが使われていると思ってください」

 もちろん、熱という意味では暑い場所に置いておくのも禁物だ。

「夏場、車内は60℃、70℃になる場合がありますから、車のダッシュボードにモバイルバッテリーやスマホやノートパソコンなどを置きっぱなしにしておくと電池が膨張し、発火や破裂の危険があります」

 さらに意外とやってしまうこんなことも。

「充電の際、延長ケーブルなど長いコードを使用する場合は、巻いて使わず、全部伸ばした状態で使ってください。例えばドラムに巻いてある延長コードなどは、取扱説明書に『全部出して伸ばした状態なら15アンペア使えるけれど、全部出さない場合は5アンペアしか使えません』などと書いてあります。同じように、コードは全部引き出して伸ばして使わないとロスになり、十分な充電電力を確保できません」

 これらに加えて、いつまでも充電を続ける過充電状態や、残量ゼロでの放っておくのも電池の寿命を縮める原因になるという。

 「新時代を切り拓く発明」と言われ、IT機器に欠かせない存在として、需要を伸ばしてきたリチウムイオン電池。同社で開発されたリチウムイオン電池採用の大容量のバッテリーは、その品質の高さや安全性から現在、さまざまなシーンで活躍している。

「震災の際、仮設住宅として使われるトレーラーハウスや移動事務所、過疎地域やイベント会場で利用される銀行の窓口車にもリチウムイオン電池による弊社蓄電池が使用されています。それらには、これまでガソリンを使う『発電機』が使われていました。蓄電池はCO2を出さず、音もニオイもないことから、発電機に替わる電源として、載せ替えが進んでいます。金額的には、まだ蓄電池の方がやや高いのですが、それも今後変わってくと思います」

 この30年で大きく進化したバッテリーだが、現在も各社、研究開発を重ね、進化し続けているという。

「今後、これまでにない発想の電池も生まれてくると思います。我々も研究開発中です」

 アナログ社会からデジタル社会への原動力となったリチウムイオン電池だが、この先、どんな進化を遂げ、新たな社会を切り拓く原動力となるのか、今後に注目していきたい。

取材・文/河上いつ子
■ベネテックス社が手掛けたGORDON MILLER『GMLVAN G-01』のバッテリー
同車開発担当に「このバッテリーに出会えたから、この車が開発できた」と言わしめた高性能バッテリー。容量5,100Wh、AC最大出力1,500W/DC最大出力1,000W。AC100Vコンセント×1口、AC100V出力端子台×2、DC24V出力端子台×1、を設けており、ドライヤーなどの高出力製品から、パソコンやスマホなどをはじめ、さまざまな電子機器や家電を使用可能。同車に搭載した6畳用に匹敵する規格のクーラーは最大で連続約11時間稼働する。また車両とも連動しており、走行中に充電も可能で充電量を制御するシステム(実用新案登録済)が組み込まれている。またこのバッテリーは、製造時・使用時・廃棄時に排出されるCO2が発電機に比べ60%程度削減されており、第三者機関によって低CO2川崎ブランドに認定されている。

■GORDON MILLER『GMLVAN G-01』
https://vrnvroomn.com/products/gmlvan-g-01(外部サイト)

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