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なぜオートバックスが“2000万円”高級キャンピングカーを発売? 下火のキャンプブームで見えた勝ち筋

 オートバックスセブンが展開するガレージライフスタイルブランド「GORDON MILLER」(ゴードンミラー)【※】は、日産『キャラバン 4WD』をベースにした新型車両『GMLVAN G-01』を明日3月6日より発売する。1月の発表後、豪華装備を備えたありそうでなかった武骨なデザインのキャンピングカーという点、そして1870万円という車両価格が注目を集めていた同車。“車離れ”や“キャンプブーム下火”など、ネガティブなワードを耳にする市場において、なぜ同社は高級キャンピングカー開発・販売に向かったのだろうか? その背景を、同社ブランドビジネス事業統括の小曽根憲氏に話を聞いた。
【※】「GORDON MILLER」の車両レーベル「GORDON MILLER MOTORS」

ハイスペックかつこだわったデザイン「従来のキャンピングカーにはなかった」

 『GMLVAN G-01』は、日産『キャラバン 4WD』をベースにカスタムを加えた高級キャンピングカー。同ブランドのアイコンである丸目4灯とテールランプを踏襲し、武骨でクラシカルにまとめつつ、内装には車格を生かした豪華装備を施した。

「この車には、大型バッテリー、リアクーラーシステム、冷凍/冷蔵庫、FFヒーターが標準装備されています。特に大容量バッテリーは、プロユースのものを使用しており、従来のキャンピングカーだと家庭用エアコンの稼働時間が5〜6時間のところ、この車では10時間を超えます。なので『滞在』しやすい。また、シートも無段階に調整できるリクライニング機能が付き、走行中の前向きはもちろん、フルフラットにすることでベッドモードにもなる仕様。停車した際のミーティングの際に活躍する跳ね上げ式リアベンチを備えており、5人程度なら余裕をもって座ることが可能です。また、車内外のデザインもこれまでのキャンピングカーになかった『インダストリアルデザイン』を基調にしており、武骨な『GORDON MILLER』の世界を体現しています」

 そもそもこのプロダクトは、「GORDON MILLER」で提唱している「ガレージライフ」を発展させたコンセプトをもって立ち上がった。

「コンセプトは『グリッドレスガレージライフ』(グリッドレス=電力網などのインフラに頼らない状態)。いつでもどこでも、時間と場所にしばられずにガレージライフを送れる。遠隔地にいるにも関わらず、家のガレージと同じような落ち着く空間を作り出す。そのまま外に持ち出すということですね」

 コロナ禍を経た今でこそ、移住や車中泊、コワーキングスペースなどが広がったが、この車の構想が持ち上がったのは、それ以前。小曽根氏も「コロナ禍で、こういう風に浸透したのは全くの予想外だった」と話す。

「以前は『会社ではないところで仕事をするなんて考えられない』というのが一般的。そんな中、『(この車を使って)グリッドレスガレージライフを実現するような世の中があってもいいよね』『そういう楽しさを提案できるブランドになりたいね』というところからスタートしたら、コロナ禍で世の中のそういう動きが加速したという感じなんです」

ライバルは「メルセデス・ベンツ『Gクラス』」ではなく“別荘”

 先述のような思いがあっても、実際のところ市場動向やユーザーにニーズがなければビジネスとしては成立しない。そのあたりはどのような裏付けがあったのだろうか? そのヒントは、2019年以降に同ブランドが発売し人気を集めている『GMLVAN V-01』(トヨタ『ハイエース』ベース)、『GMLVAN C-01』(日産『NV200バネット』ベース)、『GMLVAN S-01』(ダイハツ『ハイゼットカーゴクルーズターボ』ベース/以下『S-01』)のオーナーとの交流にあったという。

「おかげさまで、先に発売した3台を多くのお客様に乗っていただき、『オーナーズキャンプ』を開催して交流させていただいています。そのなかで、これまでの3台は『普段使いできる車でバンライフを楽しむ』ということを大事にしてきた。ところが、オーナーの方々を見ていると、なかには別に車を所有されたうえでセカンドカーにこれらの車を選んでくださるお客様もいる。日常使いしないのであれば、もう少し車格の大きい、装備の充実した車のニーズもあるのではないか、と思ったんです」

 ユーザーのニーズと並行して、市場においても「意外と競合が少ないのでは?」と感じたという。

「数千万円クラスの車のマーケットを見てみると、その多くは欧州系のスーパーカー。ただ、車高の低いスポーツカー以外にもニーズはある。今その市場はメルセデス・ベンツ『Gクラス』一択で、独占しているのではないかと。そのクラスの毛色の違う車として、ニーズはあるのではないか、チャンスがあるのではないか、というのも(開発に至った)理由の一つです」

 数万台、数千台と大量生産・販売をするわけではない。市場に新たな価値観を持った車を投入することで、その希少性も車の価値を高めると言えるだろう。一方で、この車の“ライバル”は、メルセデス・ベンツ『Gクラス』ではなく、“別荘”だという。

「先にお話ししたように、グリッドレスガレージライフというコンセプトがあるなかで、例えばこの車で景色のいいところに行っていただいて、そこで仕事をする。仕事部屋みたいな使い方を想像していただけると、私たちも非常にありがたいです。また、別荘を買わずにこの車を選ぶという選択肢もあると思っています。別荘という決められた場所に行って楽しむのではなく、この車を使って、どこにでも行く。行くときも行ってからも楽しんでほしいという思いがあります。オートバックスグループは、『車で出かける楽しさを提供できる会社でありたい』と掲げています。それを『GORDON MILLER』のフラッグシップであるこの車が体現できなければ販売する意味はありません」

「キャラバンに2000万円は高すぎる」はごもっともな意見「価値を共感していただける方がいらっしゃれば」

 装備の充実、こだわりのデザインなどがありながらも、やはり気になるのは1870万円という車両価格。1月にこの車の発売を発表したあとも、「高すぎる」「キャラバンに2000万円は…」といった声が上がっているが、この反響については、どう考えているのだろうか?

「昨年『S-01』を発売した時にも、『軽自動車なのに300万円超えはありえない』とった声をたくさんいただきました。正直、そういう切り口でみれば、ごもっともだと思います。ただ私たちは、軽自動車を探している人たちに『S-01』を提案しているつもりはありません。決して多くはないかもしれませんが、この車のコンセプトやデザインに共感し、『S-01』のような車が欲しかった人に向けています。その結果、多くの方に購入いただき、『S-01』で楽しんでいる様子がSNSやYouTubeなどで伝わってきています。
 日本経済は成熟してますから、セグメントは無数にされてます。『軽自動車だからどう』「キャラバンだからどう」と一口で言えないと思うんです。ブランドとしてしっかりと価値を提示し、それに共感していただける方がいらっしゃればと思っています」

 実際、1月の発表後、すでに購入を前提とした一般の人からの問い合わせが数件入っているという。本日行われる「メディアお披露目会」を前に、その価値はすでに伝わっていると言えるだろう。言われ始めている“キャンプブームの下火”も関係ないようだ。

「私たちはキャンプブランドではありません。あくまで『ガレージライフ』なので、キャンプシーンで商品を使っていただく機会が多いという立場。ということを前提にお話しさせていただくと、そもそも我々の事業規模はそこまで大きくないので、マーケット全体の上がり下がりは言い訳にはならないんです。大手メーカーは、マーケットの動向を直に受けると思うんですけど、私たちの事業はそうではない。『GMLVAN G-01』についても、そんなに台数が出るものではないですから、売れなかったとしても、それを市場やブームのせいにしていたら怒られます(笑)」

 『GORDON MILLER』は今年6月で、7年目に突入。ここまで右肩上がりで成長を遂げてきたが、その要因は「進化」にあるという。

「自分たちが進化しなければすぐに取り残され、黙っていたら淘汰される世界。常にお客様に新しいワクワクを提供していかなければなりません。今回の『GMLVAN G-01』も、その進化の1つのかたちだと思っていただければ。もちろん、これで終わりにするつもりはありません。例えば、車、アパレルなども含めて、『GORDON MILLERをこの国で展開したい』というような海外からの引き合いもあります。
 まだ新しい車を発表したばかりですが、“次の車”の構想もすでにあります。だいぶ先になると思いますが(笑)。世の中の状況や社内のリソースなどの問題はありますが、絶対に出したいと思っています」

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