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なぜオートバックスが“5000万円”国産スポーツカーを発売? “高級車=フェラーリ”の払拭なるか

 昨年1月、オートバックスセブンのレーシングスポーツブランド「ARTA」(車両レーベル「ARTA MECHANICS」)は、ホンダNSXをベースにした5000万円級の高級カスタムスポーツカーを発表。今年1月にも、トヨタGR86をベースにしたカスタムスポーツカーを発表した。特に若者の“車離れ”が声高に叫ばれている自動車市場において、同社はなぜ高級カスタムスポーツカーの開発・販売に舵を切ったのか? その背景を、同社のライフスタイル部門を統括する小曽根憲氏に話を聞いた。

車両価格2500万円と同等の専用パーツを国内で開発、新たな付加価値を付与

 昨年1月に発表された『LEGAVELO』(リガヴェロ)は、ホンダNSXをベースにカスタムを加えた高級カスタムスポーツカー。2500万円ともいわれる車両価格に、それと同等の専用オリジナルパーツを開発。日本最高峰ともいえる車に新たな付加価値を与え、限定5台で発売した。

「外装にF1やGTマシンといったレーシングカーや、航空機や宇宙ロケットなどに使われているドライカーボン(CFRP)を贅沢に使用し、ダウンフォースを受け止め安全性を高める強靭性を持たせつつ、ハイレスポンスな操縦性に寄与する軽量化に成功しました。また、ダウンフォースを生み出す大型リアディフューザーや、挑戦的なデザインのオリジナルマフラーなどを装備し、NSXのアイデンティティを崩すことなく、唯一無二のデザインを与えています。また、内装もカーボン調のパネルや、純正の形状を活かしつつダイナミカスエードで縫製し直されたシートや、フィット感にこだわり同じくダイナミカスエードで巻き直されたステアリングホイールなど、見た目はもちろん手触りや質感にもこだわり、ラグジュアリーで美しいディテールを実現しました。これらは全て日本の工場で内製化し、制作しています」(小曽根憲氏/以下同)

 そもそも、オートバックスといえば、カーオーディオやホイール、タイヤからちょっとした小物まで、車好きにはおなじみの会社。同社がなぜ、“車離れ”が叫ばれる今になって、高級カスタムスポーツカーを手掛けることになったのか。その背景には、低迷するカースポーツ市場の状況と、同社がスポンサーとなっているレーシングチーム「ARTA」の存在があったという。

「オートバックスがスポーツカー全盛期のとき、マフラーや、車高調、フルバケットシートや、ホイールなど、カー用品がガンガン売れていました。みんな車で個性を出そうとしていて、何よりスポーツカーがかっこよかったし『お金がたまったら、セリカを買おう、スープラを買おう』いう時代だった。そこにオートバックスは支えられていたんです。今低迷しているこうしたカースポーツの領域を活性化するのに、『ARTA』が貢献できれば意義があるなと思ったんです。乗用車ではなく、車らしい車、スポーツカーで」

高級輸入車を選ぶ人たちに日本のスポーツカーの凄さを伝えたい

 レーシングチームであるARTAとスポーツカーの親和性の高さは言うまでもないが、問題はスポーツカーと、今のユーザーのマインドの乖離。この取り組みをしていくなかで、小曽根氏は「『車市場が縮小している中で、スポーツカーでは勝算がないのではないか』という指摘は、社内でも散々言われてきました」と笑いながら話す。だが、小曽根氏はこの取り組みに大きな意味を見いだしていた。

「今、市場はほとんど乗用車。それも燃費とかコスパ、環境への配慮などを求めて選んだ車ばかり。ドライビングの楽しみを求めて乗っている人は少ないんですね。4段階のピラミッドで考えてほしいんですけど、一番下に乗用車があって、その上にスポーツカー、その上にスーパーカー、一番上にレーシングカーと、段々レスポンスが良くなっていく。乗用車に乗っている人たちに、2層目、3層目の運転の楽しさを伝え、階層を上げることを促進していきたいと思ったんですね」

 小曽根氏が、このように考えるきっかけになったのが、自動車メーカー最大手のトヨタ自動車の動きだったという。

「豊田章男社長は、自ら『油臭い車が好き』と公言され、スープラやGR86といったスポーツカーを復活。また、レーシングチームの知見を市販車に取り入れたGRブランドの強化など、(ピラミッドでいう)2階層、3階層の『車はもっと楽しいものだ』ということを、乗用車に乗っている人にも知らしめ、広げる取り組みをやっている。最大手の自動車メーカーが勇気をもってチャレンジするなかで、カー用品店の最大手である私たちもやらなければいけないという自負もありました。そして、スポーツカー市場が活性化しなければ、オートバックスが盛り上がることはないと思ったんですね」

 だが、スポーツカー自体が市場縮小に伴って、パーツだけ作っても売れない時代。さらに「我々がやりたいことを市場に気づいてもらえない」という状態を打破すべく、同ブランドが取った戦略が、『LEGAVELO』の開発だった。

「私たちがやりたいことを市場に示すには、車を作るのが一番だと思いました。そして、ARTAの『スーパーGT』参戦車両かつ、日本最高峰の車であるNSXをベースにした車を開発することが、このブランドのアイデンティティになると考えました」

 さらにもうひとつ、“高級”である理由があったという。

「今の日本の高級車に対する考え方に疑問を持ったことです。今、お金を持った方々が車を選ぶとしたら、フェラーリ、ランボルギーニという選択肢が当然のような風潮になっていますけど、果たしてそれでいいのか。レクサスや、ホンダNSX、日産GT-Rなど、性能的には決して遜色ないのに、海外の高級車に比べたら控えめな価格で売られている。(こうした高級輸入車を選ぶ人たちに)日本車の素晴らしさ、凄さを知らしめたいと言ったらおこがましいですが、この車がそういったうねりのきっかけになれればと思っています」

「私たちは、車を作るワケではないのであくまでカスタムカーの領域」と話しながらも「車のデザインは既に完成形ではあるけど、人とは異なる珍しい車を求める思考もある。新しい価値を与える、やんちゃではない“正統派”カスタムカーも選択肢のひとつに」という考えのなかで、『LEGAVELO』は誕生に至った。

スポーツカーを切り捨てないで「人々の求めるニーズは環境性能や燃費だけではない」

 さらに今年1月には、『LEGAVELO』よりも価格も抑えたトヨタGR86をベースにした『VIGALE』(ヴィゲイル)を発表。走る楽しみを伝える車の選択肢を増やしたわけだが、昨今自動車メーカーも、トヨタがスープラを復活させ、日産もフェアレディZやGT-Rを発売するなど、“スポーツカー回帰”にあるようにも見える。

「一見そのように見えるかもしれないけど、今は“回帰になっていく流れができるかもしれない”くらいですかね。というのも、廃盤になってしまった車も多数あり、昔に比べ全体的には数は減っています。特に、気軽に乗れるライトウェイトのスポーツカーはどんどん姿を消し、選択肢が少ない。これはアフターマーケット市場にいるオートバックスにとっては非常に大きなことです。人々の求めるニーズは、環境性能や燃費になっているといわれているんですが、そればかりではなく、スポーツカーも潜在ニーズがある。SUVとかはたくさん開発されるなかで、スポーツカーを捨てないで盛り上げてほしいですね」

 メーカーのこうした動きのなかで、自社で2台のカスタムスポーツカーを発表したが、その根本にある想いはひとつ。

「今後は車だけでなく、パーツの販売も展開していく予定です。車をいじる楽しみ、スポーツカーに乗る楽しみを広げていきたいと思っています」

 今春、東京・新木場に旗艦店をオープンする同ブランドに加え、昨今のキャンプブームを追い風に話題となったキャンパー仕様のバンが好調なガレージブランド「GORDON MILLER」と、同社のライフスタイル部門は積極的な展開を見せている。なぜ業界最大手でありながら、こんなに積極策を取るのだろうか?

「本来なら、既存のものの無駄を省いていく方が収益改善しやすいし、競合をつぶしていく方が安全策だと思います。でも、カー用品市場はほっておくとどんどん縮小していきます。社内には、危機感があり『もっと外にでて、新しい市場を創造するんだ』という社長方針が、市場創造という一番難しいところに挑む原動力になっています」

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