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オートバックス“5000万円”高級スポーツカー販売の背景 鈴木亜久里「レースもビジネスも、結果を出さなければならない」

 3月30日、オートバックスセブンが展開するレーシングスポーツブランド「ARTA」は、5月12日に東京・新木場で、初のコンセプトストア「ARTA MECHANICS&INSPIRATIONS」をオープンすることを発表。同店舗でレセプションを開催し、多くのメディア・関係者が集結した。ここにも展示される“5000万円高級スポーツカー”で注目を集める「ARTA」はどのように立ち上がり、何を目指すのか? 元レーシングドライバーで、「ARTA」のプロデューサー兼総監督の鈴木亜久里氏に話を聞いた。

スポンサー・オートバックスへ鈴木亜久里からの提言「もっと俺たちを利用しなきゃ」

 「ARTA」とは、「AUTOBACS RACING TEAM AGURI」に由来。オートバックスセブンがスポンサードするかたちで、1997年以降、20年以上にわたって若い才能を発掘・育成し、モータースポーツの発展に大きく寄与してきたレーシングチームだったが、2018年に、レーシングスポーツブランドにリブランディングを実施。このきっかけとなったのが、鈴木亜久里氏の言葉だったと、オートバックスセブンのライフスタイル部門を統括する小曽根憲氏は話す。

「亜久里さんに『俺たちカッコいいレースチームを作ってきたんだから、もっと俺たちを利用しなきゃ。オートバックスさんも頑張って』という言葉をいただきました。当時はスポンサーとしてレース会場で応援グッズなどの物販を展開しているだけだったのですが、100%うまく活用できているとは言えなかった。そこで、『ARTA』そのものをリブランディングしようと考えたんです」(オートバックスセブン ライフスタイル部門統括・小曽根憲氏)

「『ARTA』は、日本人の若い子たちにF1のチャンスを与えたいというところから始まったわけなんですけど、F1という大変な世界で一生懸命やってきて、日本を代表するドライバーがかなり増えてきました。でも今振り返ると、日本のレース界には寄与したんだけど、残っている部分が少なくて。レースで“よーいドン”して勝った負けただけではなく、やっぱり『ARTA』として形に残るもの、ビジネスになるものをやっていかないといけない、という話をさせていただいて、こういう形に進んでいったんです」(鈴木亜久里氏)

レースで得た知見を活かしたカスタムカーを販売「今は2台だけどもっと増やしていきたい」

 2018年のリブランディング以降、レーシングチームの「ATRA」をスポーツブランドへと昇華させたアパレルや、ファッション小物をはじめ、スイスの高級機械式時計ブランド「CVSTOS」と融合した「ARTA CVSTOS」の時計やアパレルなどを開発・販売。その背景に込められた想いを、レセプションの乾杯のあいさつに立った「ARTA」のエグゼクティブアドバイザーで“ドリフトキング”の異名を持つ土屋圭市氏が明かした。

「ここ2、3年、(レーシングチームの)『ARTA』は常にチャンピオン争いをしてきました。でも、普段カッコイイかと言われたら、油臭いつなぎを着ているというイメージが大きかった。そんななか、『普段からカッコイイモータースポーツにしたい』という思いがあり、このブランドの誕生は、チームの想いでもあったわけです。『普段からモータースポーツに関わる人間はカッコよく生きようよ』というところから始まったのが、ここだと思います」(土屋圭市氏)

 鈴木氏も「車とファッションとレースとを融合するのはなかなか難しかったんですけど、こうやってやっとかたちになったなと。日本の自動車、レース、スポーツカー、そしてファッションに通じる、ここが発信拠点になってくれたらいいなと思います」と話す。

 そのなかでも、特に鈴木氏が主戦場にしてきた車への想いは熱い。「ARTA」(車両のブランドは「ARTA MECHANICS」)では先述のアイテムだけでなく、話題を集めたホンダNSXをベースに開発された総額5000万円という高級カスタムカー『LEGAVELO』(リガヴェロ)やトヨタGR86をベースにした『VIGALE』(ヴィゲイル)なども手掛けるが、想いはそれだけにとどまらない。

「車も手掛けるということで、それをお客さんがどう感じ、ファンになっていってくれるかが大きいところ。今は2台だけど、今後いろんな車種をやっていきたいという希望をもっているし、もっともっと(ラインアップを)増やしていきたいとも思っています」(鈴木亜久里氏)

 その一方で、国産スポーツカーのラインアップ、需要の少なさを嘆く一幕も。

「今、国産のスポーツカーがどんどん減っていて、スポーツカー自体の需要が少ないから、ラインアップも少ない。モータースポーツ好きの人が、スポーツカーに乗るかといったら、そうでもないから難しい。それに、その少ないラインアップに対して、チューナー(カスタムを手がける企業・店舗)は多いから、そういう意味では厳しい世界だと思う。一方で、『ARTA MECHANICS』には、レースの世界で培ってきた豊富な知見があるので、そこを武器に我々も頑張っていきたいと思います」(鈴木亜久里氏)

 リブランディングから5年をかけて、アパレル、高級腕時計、高級カスタムカーを手がけ、今年5月に、ようやくコンセプトショップ「ARTA MECHANICS&INSPIRATIONS」をオープン。旗艦店となるこの店舗では、名前に「INSPIRATIONS」とあるように、新しいユーザー体験型施設を目指し、レース業界のレジェンドやドライバーと出会える非日常体験の提供や、イベント・パーティーの実施、車を中心としたコミュニティーづくりができる世界を創造していくという。

「レースもビジネスも一緒で、結果を出さなければならない。ここはまだスタート地点なので、ここからどう結果を出していくか。やっとここで第一歩を踏み出して、始まっただけなので。大人のファッション、大人の車がここにあるので、ぜひこの服を、車をカッコよく着こなして、乗りこなしてほしいですね」(鈴木亜久里氏)

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