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「こんな場所にも…」モンベルの出店戦略はセオリーの“逆”? 好調の理由はアウトドアブームだけではない
「ここにもモンベル!」駅前やショッピングモールに続々出店、「狙ったわけではなく…」
アウトドアマーケットも盛況だ。専門ブランドはもとより、100円ショップやワークマンなど、新規参入組もこぞってキャンプ、アウトドア用品を発売。いまやレッドオーシャンと言える同マーケットの中で、以前にも増して存在感を放っているのが、老舗ブランド「モンベル」だ。モンベルクラブ会員は現在110万人まで増加し、全国に130店舗を展開している。
実際、都心駅前の路面店や百貨店内、郊外の大型ショッピングモールなどで、モンベルの店舗を見かける機会はとても多く、アウトドアに馴染みのない人も「ここにもモンベルがある!」と感じることは多いだろう。こうした拡大の裏にはどんな綿密な出店計画があったのか、同社の常務取締役広報本部長・竹山史朗氏に尋ねると、「地道にやってきた」という非常にシンプルな答えが返ってきた。
「狙って展開したわけではなく、たまたまショッピングモールが増えた時期に出店したというだけなんです(笑)。あとは、戦略というよりも、年月をかけて積み重ねてきた地域との関係性から声がかかり、人との縁による出店が多いですね。ただ地道に…それだけにリーマンショックなど、景気の影響は受けにくいところはあります」(竹山氏、以下同)
雪に埋もれる登山口、人口2300人の街でなぜやっていける?「外からの人だけをあてにしていたら困難」
「たしかに、冬場はブルドーザーで雪かきするほどですし、雪に埋もれている状況ではまったく売れないんじゃないかと思っていました。ですが、実際は地元の人がたくさん来てくれた。地元の人に必要とされる物を提供できているから存続できているのであって、観光客など外からの人だけをあてにしていたら、続けることは困難だったと思います」
それは、こうした辺境の店舗に限らない。数多く展開するようになった、地方の路面店についても言えることだ。
「人口が約2300人の北海道の南富良野店など、1万人いかないような街にも出店しているのですが、だいたいどこに店を出しても、地元の人が来てくれています。ウェアやシューズなど、子ども用から大人用まで揃っていますし、地元の農家の方は『1日1回、なんだか立ち寄っちゃうのよね』と、コンビニ感覚で寄ってくれています。通販でどこにいても何でも買える時代ですが、やっぱり物を見て買いたいという需要はあります」
一般にはあまり知られていないが、モンベルでは農業、林業、漁業といった第一次産業に携わる人たちに向けた商品も販売している。農作業の道具を使いやすく収納できるエプロンや、伸縮性があり機能性に優れたカバーオール、特殊保護材入りの林業用パンツ、プロ仕様のライフベストなど、これまで培ってきたモンベル独自のノウハウを凝縮し、従事者から好評を得ている。都市部ではアウトドアやアパレルの一ブランドと捉えられるかもしれないが、辺境や第一次産業の盛んな地域では“生活インフラ”に近いと言えるのではないだろうか。