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ワークマン、後発なのにキャンプギア好調 オシャレとは無縁の“作業着”に再びスポット
ユーザーのSNS発信からキャンプに着目 作業用と親和性の高い市場へ新規参入
2010年にプライベートブランド製品の開発・販売をスタートし、2016年には一般向けブランドとして、アウトドアに特化した「FieldCore」、スポーツ向けの「Find-Out」、防水性と防寒性の高い「AEGIS」の3つのブランドを立ち上げた。しかし、すぐに浸透したわけではなかった。
専門分野に精通し、かつ同社製品が好きでその使い方などを発信するユーザーを公式アンバサダーとする制度を2019年よりスタートし、新たな流れを生み出した。そこからキャンプギアに着目すると、もともと作業用製品としてあった、のこぎりやハンマーのほか、多目的チェア、ペットボトルホルダーなどが、キャンプ用とはうたっていなかったものの、実際のキャンプ場で重宝されていることがわかった。
作業用の素材や機能をそのまま流用することで、原価を抑えて低価格を実現
キャンプギア市場への後発組であるにも関わらず、参入当初から好セールスを記録するとともに人気を得ていった要因のひとつには、そのターゲット設定がある。
「性別年齢に関わらず、キャンプ初心者やこれから始める人をターゲットにしました。従来市場では、テントやシュラフ、寝袋やウエア、テーブルやチェアなど一式揃えると10万円を超えます。それだけかかるとビギナーにとってはハードルが高くなってしまう。そこで、手頃な価格でキャンプを始められるエントリーモデルを売り出しました。1万円あれば最低限のセットが揃えられる低価格帯でキャンプギアを展開しています」(鈴木さん)
「もともと作業服の分野で培ってきた技術や素材をそのまま流用したのがポイントです。機能はそのまま横展開できるので新たな開発費は不要。なおかつ生地も流用すれば、発注量が増えることで原材料の原価を下げることができます。そうして“高機能で耐久性が高く低価格”というキャンプギアのラインナップを実現しています」
また、もともと外で仕事をする人向けの作業服は、撥水や防水機能に優れており、キャンプギアとしても親和性が高い。雨に強く、ドロなどの汚れも防ぐその機能性は、さまざまなキャンプウエアやアイテムに流用されている。
半年に1回の新製品ラインナップ、タイムリーにニーズに応えることでファン拡大
「常にお客さまのニーズに合った製品を作れていることが好調な売上につながっています。自分用に買うのに加えて、知り合いに勧めていただくことも多く、口コミで販売数が増えています」
同社にとって、キャンプギア参入には「新たな客層の取り込み」というもうひとつの狙いがある。作業服から始まり、普段着にも進出したが、まだまだ製品に触れたり、店舗に入ったことがない人は多い。これまで縁がなかった層への入り口のひとつになることを期待している。
「キャンプギアが売れること自体もメリットですし、そこでキャンプにはまってリピーターになってもらえたらなお良いのですが、来店してキャンプ以外の普段着やシューズにも興味を持つお客さまが多くいます。ワークマンを知ってもらって、お客さまが増えていくことにつながっています」
自社ノウハウを活かした生産だけでなく、こうした徹底したコスト管理も原材料高騰のなか、8月までPB商品(一部アイテムを除く)の価格据え置きにも繋がっている。
“ユーザーの期待=価格・クオリティ”を提供し続けることが課題
「リアル店舗では、キャンプギアを陳列し、お客さまが直接手に取って商品を購入してもらうことができません。ECサイトの強化が不可欠です。商品画像や機能紹介でエントリーユーザーでも、機能や使用シーンが想像しやすいように見せないといけない。わかりやすいサイトを意識しています」
「弊社は他のどこよりも後発なので、差別化を図っています。最近では職人なら当たり前に持っている電動ドライバーを用いて、テントやタープを張るロープを地面に固定する“ペグ”を開発しました。そうした商品を通して、ワークマンらしさを忘れずに“お客さまの期待=価格・クオリティ”を提供し続けることが課題です」
「いまゴルフギアも出していますし、釣りやトレッキングでもよく使われています。まだ“ワークマン=作業服”のイメージがある方も多いのですが、そうではないお客さまも多い。基本的に私たちは声のする方に進化する。これからもお客さまやSNSの声を有効活用していきます。もちろんすべてを人まかせというわけではありませんが、常に参考にさせていただきます(笑)」
(文/武井保之)
◆ワークマンの公式サイト(外部サイト)