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ワークマン、後発なのにキャンプギア好調 オシャレとは無縁の“作業着”に再びスポット

 作業服および関連用品の日本最大手専門店として知られていたワークマン。近年は一般衣料市場に参入し、ファッショナブルなデザイン性と値頃な価格感から幅広い層に訴求し、いまや普段着ブランドとしても人気を得ている。そんななか昨年は新たにキャンプギア市場に参入。後発組となるなか、作業用の高機能素材を流用することで開発コストと素材原価を抑えた低価格設定を可能にし、一躍シェアを拡大させている。高機能&低価格を武器に事業分野を広げる同社の可能性にフォーカスする。

ユーザーのSNS発信からキャンプに着目 作業用と親和性の高い市場へ新規参入

 2022年度までの10年間で、売上高を2.5倍以上に成長させているワークマン。その好調な業績推移の背景には、防寒や防水、耐熱といった高機能性を有した作業服専門から、その機能を流用しながら、普段着使用を想定したデザイン性の向上で一般衣料市場へと参入していったことがある。

 2010年にプライベートブランド製品の開発・販売をスタートし、2016年には一般向けブランドとして、アウトドアに特化した「FieldCore」、スポーツ向けの「Find-Out」、防水性と防寒性の高い「AEGIS」の3つのブランドを立ち上げた。しかし、すぐに浸透したわけではなかった。
 ブレイクへの転機となったのが、2018年に新業態となるワークマンプラスの出店。従来店舗は1700アイテムあったが、一般向けの売れ筋300アイテムに絞り、商品陳列はアパレル店と同様に服の面が見えるフェイスアウトにした。そこから、ワークマンの強みである高機能かつ低価格でありながらファッション性にも富んだ製品が話題になり、一躍人気ブランドとして認知された。現在では、約970店舗のうち半数がワークマンプラスになっている。
 そんななかで人気を得ていったのがキャンプウエアだ。ワークマンの広報部の鈴木悠耶さんは、その最初のきっかけを「主に溶接業の方などが着る、防融機能に優れた綿ヤッケが、『キャンプの焚き火のときに火の粉が服についても安全で使い勝手に優れる』とSNSで発信したユーザーさんがいました。それから急速に販売数が伸びていきます」と振り返る。

 専門分野に精通し、かつ同社製品が好きでその使い方などを発信するユーザーを公式アンバサダーとする制度を2019年よりスタートし、新たな流れを生み出した。そこからキャンプギアに着目すると、もともと作業用製品としてあった、のこぎりやハンマーのほか、多目的チェア、ペットボトルホルダーなどが、キャンプ用とはうたっていなかったものの、実際のキャンプ場で重宝されていることがわかった。

作業用の素材や機能をそのまま流用することで、原価を抑えて低価格を実現

 従来のワークマン製品の機能性がキャンプとの親和性が高いことが明らかになり、2021年よりキャンプアイテムの販売をスタート。2022年2月よりテントやタープ、シュラフなどを含む本格的なキャンプギアの取り扱いを始めて市場参入した。発売と同時に好調な売上を記録し、ラインナップを拡充。現在では150アイテムほどのキャンプギアを取り揃えている。

 キャンプギア市場への後発組であるにも関わらず、参入当初から好セールスを記録するとともに人気を得ていった要因のひとつには、そのターゲット設定がある。

「性別年齢に関わらず、キャンプ初心者やこれから始める人をターゲットにしました。従来市場では、テントやシュラフ、寝袋やウエア、テーブルやチェアなど一式揃えると10万円を超えます。それだけかかるとビギナーにとってはハードルが高くなってしまう。そこで、手頃な価格でキャンプを始められるエントリーモデルを売り出しました。1万円あれば最低限のセットが揃えられる低価格帯でキャンプギアを展開しています」(鈴木さん)
 ハイエンドモデルはすでに知名度の高い大手ブランドがシェアを確立しており、いきなりその牙城に食い込むのは難しい。そこで、高機能と低価格をセールスポイントにし、キャンプブームに乗ってこれから新たに始めようとする人たちの需要獲得および拡大を狙った。同時にそれはワークマンにとって、異分野での新事業のスタートになるが、鈴木さんは確固たる勝算があったと言う。

「もともと作業服の分野で培ってきた技術や素材をそのまま流用したのがポイントです。機能はそのまま横展開できるので新たな開発費は不要。なおかつ生地も流用すれば、発注量が増えることで原材料の原価を下げることができます。そうして“高機能で耐久性が高く低価格”というキャンプギアのラインナップを実現しています」
 例えば、防寒着のフュージョンダウンは、軽くて保温性の高いダウンで布団としても使えるので、持ち運びに便利なシュラフとして活用。一般的なナイロン素材は火に弱いが、防溶加工されたナイロン素材のFLAME-TECH(R)は溶けにくく、火の粉が舞うこともあるキャンプ向けとして、ウエアやテント、タープなどに多用している。

 また、もともと外で仕事をする人向けの作業服は、撥水や防水機能に優れており、キャンプギアとしても親和性が高い。雨に強く、ドロなどの汚れも防ぐその機能性は、さまざまなキャンプウエアやアイテムに流用されている。

半年に1回の新製品ラインナップ、タイムリーにニーズに応えることでファン拡大

 それに加えて、販売開始時から売上を伸ばし続けている背景には、フットワークの軽さもある。当初はソロキャンプブームに合わせて1人用テントを多く取り揃えたが、ユーザーの声からファミリー向けも拡充。半年に1回新製品を出し、タイムリーに細かなニーズに応えることで、ファンを広げている。

「常にお客さまのニーズに合った製品を作れていることが好調な売上につながっています。自分用に買うのに加えて、知り合いに勧めていただくことも多く、口コミで販売数が増えています」
 一方、初心者をターゲットにしながら、若い世代の取り込みにも注力している。製品のデザイン性に加えて、カラーバリエーションのなかの1色には、“映え”を意識したスポットカラーを採用している。そうして当初目標の40億円(2023年3月末まで)に対して、目標達成見込みだという。鈴木さんは「発売から売上は伸び続けています」とし、この先は100億円を目標にさらなる市場シェア拡大へ自信をにじませる。

 同社にとって、キャンプギア参入には「新たな客層の取り込み」というもうひとつの狙いがある。作業服から始まり、普段着にも進出したが、まだまだ製品に触れたり、店舗に入ったことがない人は多い。これまで縁がなかった層への入り口のひとつになることを期待している。

「キャンプギアが売れること自体もメリットですし、そこでキャンプにはまってリピーターになってもらえたらなお良いのですが、来店してキャンプ以外の普段着やシューズにも興味を持つお客さまが多くいます。ワークマンを知ってもらって、お客さまが増えていくことにつながっています」
 テントやタープ、テーブルなど一部の大型キャンプギアは、売り場スペースの問題で店舗には製品を置かず、ネットで注文して店舗で受け取るシステムになっている。それは、ワークマンはフランチャイズ店がメインになるため、店舗に売上計上するためのシステムであるのと同時に、通常の倉庫から店舗への製品流通のなかに入れ込むことで配送コストを低減。来店してもらうことでワークマンとの接点を増やすことも目的にしている。

 自社ノウハウを活かした生産だけでなく、こうした徹底したコスト管理も原材料高騰のなか、8月までPB商品(一部アイテムを除く)の価格据え置きにも繋がっている。

“ユーザーの期待=価格・クオリティ”を提供し続けることが課題

 その一方でECサイト購入がメインのキャンプギアは、見てすぐ購入したい人には少しハードルが高いようにも感じるが、どのような施策をとっているのだろうか。

「リアル店舗では、キャンプギアを陳列し、お客さまが直接手に取って商品を購入してもらうことができません。ECサイトの強化が不可欠です。商品画像や機能紹介でエントリーユーザーでも、機能や使用シーンが想像しやすいように見せないといけない。わかりやすいサイトを意識しています」
 100円ショップやファストファッション企業など、異業種からの参入が相次ぐなか、同社はどのような課題を抱えているのだろうか。

「弊社は他のどこよりも後発なので、差別化を図っています。最近では職人なら当たり前に持っている電動ドライバーを用いて、テントやタープを張るロープを地面に固定する“ペグ”を開発しました。そうした商品を通して、ワークマンらしさを忘れずに“お客さまの期待=価格・クオリティ”を提供し続けることが課題です」
 ユーザーの声が発端となったが、キャンプのほかにも作業服の持つ機能性との親和性が高い分野は多くある。この先も同様の異分野進出ケースが生まれてくるだろう。

「いまゴルフギアも出していますし、釣りやトレッキングでもよく使われています。まだ“ワークマン=作業服”のイメージがある方も多いのですが、そうではないお客さまも多い。基本的に私たちは声のする方に進化する。これからもお客さまやSNSの声を有効活用していきます。もちろんすべてを人まかせというわけではありませんが、常に参考にさせていただきます(笑)」

(文/武井保之)
◆ワークマンのキャンプギア公式サイト(外部サイト)
◆ワークマンの公式サイト(外部サイト)

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