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全パーツに“スジ彫り”…美しすぎる『シナンジュ』に独自のこだわり、「ディティールアップは時間と根気次第でどこまでもできる」

 幼い頃にサザビーに魅せられ、同じくサイコフレームを導入したシナンジュも好きだというモデラーのヤマネコさん(@yamaneko311)。「いつか本気で作りたい」と思っていた同氏は、細かい部分まで丁寧にディティールアップした“白い”シナンジュを制作。SNSで称賛された。全パーツに“スジ彫り”を入れたというこだわって作ったシナンジュの制作裏話を聞いた。

すでに完成された美麗なデザイン「新たな要素を盛り込むことに苦労」

――SNSで話題になった“白い”シナンジュですが、制作の背景には、幼い頃の体験があったと伺いました。
ヤマネコはい。幼い頃から(シナンジュと同じサイコフレームの)サザビーのデザインが好きなんですよね。小さい頃、パッケージに一目惚れして旧キット『1/100サザビー』を組み立て、その後時を経て『MGサザビーver.ka』に挑戦したんですが、とにかくサザビーの立ち姿がかっこよくて。人生で初めてエアブラシで全塗装したキットもこのサザビーで、作り終えたときの達成感が未だに忘れられないです。
 そんな“サザビー好き”なので、当然シナンジュのデザインも大好きでした。そもそも『機動戦士ガンダムUC』の存在を知ったのは、シナンジュのビジュアルを見たのがきっかけでした。なので、いつかは本気で手掛けてみたいと思っていました。

――それで制作に至るわけですね。制作の方向性はどのように決めたのですか?
ヤマネコ自分好みで理想のシナンジュのプロポーションが、始める段階で見えていました(笑)。さらに『MGサザビーver.ka』の装甲が展開するような要素を取り入れたらおもしろいかもしれないと思い、これを念頭に各部パーツのアレンジを行いました。あとは、とにかくスジ彫りを行いたい一心でしたので、全パーツに新規にラインを彫り込んでいます。

――全パーツですか! それはすごいですね。
ヤマネコありがとうございます。自分はメカニカルな作品が大好きなので、さまざまなメカデザインやイラストを参考にしています。実用的な工業的なパネルラインというよりは、曲線美なシナンジュに合いそうな、複雑なラインデザインを彫っています。特にバックパックや脚部はラインデザインがその部位に合いそうなものになるまで修正を繰り返しました。翼部分や、脚や腕の装甲の延長などもかなり伸ばしているため、美麗なシナンジュのフォルムをより強める工夫を施しました。

――スジ彫りも含め、細かいところまで丁寧にディティールアップされていますね。特に苦労したのは?
ヤマネコシナンジュのデザイン自体、すでに完成されたものなので、そこに新たなオリジナル要素を盛り込むということがまず難しいです。なので、シナンジュ本来の姿はそのままに、スタイルを思いっきり自分好みになるようアレンジしています。胸部や肩幅、下腿部などは一回り大きくなってますし、足首はかなり伸びています。実はこの基本工作である、プロポーション変更が一番苦労しました。
 ディテールをたくさん盛り込むことは、時間と根気次第でどこまでもできます。大切なのは塗装時のパーツの取り外しやすさへの考慮や、強度を高める工作です。これは本作に限らず一番重要視していますし、一番よく考えています。

彫り込んだパネルラインを見せるためにメインカラーを変更

――シナンジュといえば、サザビー同様「赤」の印象が強いですが、本作は「白」で仕上がっています。色については、どのような構想があったのですか?
ヤマネコ本当は原作通りのレッドの予定でした。塗装寸前で「せっかく新規に彫り込んだパネルラインが見えにくくなるのがもったいない」と感じ、急遽メインカラーをホワイトに変更したんです。そこに気持ち程度のレッドカラー要素として、一部フレームをメタルレッドにしました。
 (シナンジュの)元となった『シナンジュスタイン』も、ユニコーンガンダム開発のためにサイコフレームのテストを兼ねた試作機の設定がありましたので、本機シナンジュにもむき出しのサイコフレームがあっても良いのではないのかな、と思いました。かなりのこじつけですが(笑)。結果、なかなか評判が良く、安堵しました。今でもそうなのですが、自分の制作は基本的に設定に考慮していないアドリブなことが多いです(笑)。

――寄せられたコメントも称賛の声が多かったですね。
ヤマネコ恐れ多いのですが、「アレンジカラーや装甲の隙間の赤が良いです」とか、「ディテールデザインが素敵」といったお声をよくいただきました。
 そのなかでも特に多かったのは「色が白かったのでシナンジュスタインに一瞬見えました!」や、ガンダム作品とは異なる『聖戦士ダンバイン』に登場する「サーバインかと思いました!」といった声でした。こういった” 〜に見える” といった感想は、人によってはあまりうれしくないと思われる方もおられます。ですが自分は、作品を客観視した素直な第一印象や、自分では気付けなかったことを聞けるというのは大変貴重なことだなと常々感じます。声に上がったものを資料に、次回作で新たな要素を入れることができますしね。

――周りの声を聞き、それを次作の糧にする。素晴らしいガンプラライフですね。
ヤマネコいついかなる時も作品のことを考え、あらゆるものに作品のヒントがないかなと探すようにしています。通勤時、駅や電車内で天井を見上げたり、街中の電線やオブジェクト、たまたま寄ったお花屋さんの花の形状、仕事帰りの電車の窓から見える夜景の明かりが、作品の電飾の配置方法に見えたほどです(笑)。
 これだけ聞くと相当な変人ですが(笑)、作品のコンセプトやデザインのヒントは意外と身近なところに転がっているんですよね。他のモデラーさんの作品から刺激を受けつつ、ガンプラ以外のものから見つけられた”気付き”を織り交ぜたいと心がけています。
 ガンプラは、時間と労力を費やすに価値のある、自分が”本気”になれるものだと思っています。まだまだ詰めの甘いところもたくさんあるのですが、自分らしく、かつ隙のない作品が仕上げられるよう、勉強と実践の日々を続けて行こうと思います。

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