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SNSでバズる“おもしろ家電”が話題、「世界最小の家電メーカー」の“企画の種”
“世界最小”なのに年間100の新商品、「ゼロからイチを生み出せることなんて、めったにない」
「従来は大手メーカーさんがマスメディアを通じてドカンと商品を出して、それをユーザーが認識していくという方法でしたが、インターネットの普及によって、一人一人が情報を簡単に得られるようになりました。SNSで情報を共有し合えることで、『これはいいね』というものが急速に伝わりやすくなっています。商品発想の原点も、『どういうものをマーケットに出せば反応してもらえるか?』というところにあります」。
「あったら便利だな」と思う人が多ければ多いほど、需要は高まる。それが世の中になければ、マーケットに出たときの反響は大きくなる。言葉で言うのは簡単だが、そんな商品を同社では、年間100近く発売する。単純計算すれば週に2商品だ。一体、どうやって生み出しているのだろうか――。
「厳密に計算されたマーケットデータを元に、ということではまったくないのです。動物的な勘といいますか、なんとなく肌感覚でお客さんの嗜好性というものを経験値として捉えているというのが正直なところ。データを精査しても、そこから導き出されるのは8割〜9割だと思うのです。ならば、データにないものを発信することが大事。『よくそんなに企画が出ますね』と言われることもあるのですが、本当の意味でゼロからイチを生み出せることなんて、めったにない。もともとゼロではなく、0.01とか0.001とかみたいなものがあって、少しずつ発想を変えたりして膨らませていく作業がほとんど。だから、“種”になるものを広く集めることが重要なんです」。
「もっと尖ったものにしなくては!」、おもしろさ求められるプレッシャーも…
「社員は年齢も性別もバラバラなので、まずは提案しやすいような環境を作ること。そこには報奨だったり、商品化されてヒットしたときに自分の手柄だとしっかり言えるような形を作ったり。でもやはり、週一で提案してもらうのは非常にハードルが高い。些細なことでも気になったことを心に留めておいてもらって、出してもらうというスタンスです」。
企画の種を実現するために大切なのが、作り手の視点ではなく、マーケットニーズで捉えること。だが、同社の商品が「おもしろい」「これまでにない」と反響を集めたせいで、プレッシャーを感じることもあるという。そのバランスはどう取っているのか。
「もちろん熱意は重要ですが、作り手の思いが強すぎると視野が狭くなり、ターゲットが狭まってしまいます。みなさんから期待されることで、『もっと尖ったものにしなくては!』という声も出ますが、ニッチな方に行き過ぎたら売れなくなるじゃないかと(笑)。ビジネスですから、ニーズのありか、コストも含めてそのバランスは重要です」
ほとんどハズさない中で厳しかった『電動うちわ』、「まだ諦めてません」
「オリジナル商品は全体の10%くらいで、その他90%は、日本では販売されていないような商品を海外から調達したもの。とはいえ、売上の8割以上がオリジナル商品なので、その意味でほとんどハズしていないと思います。発売した瞬間に売り切ってしまうものもありますが、時間が掛かるものもある。そうした商品も、少しコンセプトを入れ替えることで、じわじわと結果が出ることが多いですね」。
「ハズれがない」なか、予想をはるかに超えてヒットした商品も多い。
「『ネッククーラー』や『おひとりさま用超高速弁当箱炊飯器』は、想定よりもはるかに売れました。あとは『俺のラーメン鍋』(袋麺専用設計で温度調整機能付き、そのまま食べられるラーメン鍋)というものを最近発売したのですが、すぐに1万個ほど売り切ってしまって、あと1万個追加しました。家電はだいたい3000〜5000個を緩やかなペースで売っていくのですが、『〜炊飯器』などは1年ちょっとで十数万個売れています」。
逆に、期待まで届かなかった商品もあるのだろうか。
「『電動うちわ』はちょっと難しかったですね。どうもウケ狙いと認識されてしまったようで。でもうちの商品は改良を重ねていくものなので、次のモデルで起死回生を狙っています。まだ諦めていません(笑)」。