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(更新: ORICON NEWS

『あずきバー』だけでない井村屋、180日間長期保存可能な豆腐を作るワケ「小豆製品の加工ノウハウを活用」

  • 井村屋『美し豆腐 LONG SHELF LIFE 180』

    井村屋『美し豆腐 LONG SHELF LIFE 180』

 冷蔵で180日間保存が可能な井村屋が発売した『美し豆腐 LONG SHELF LIFE 180』が、SNSで「なめらかな食感で甘味も感じられて美味しい。何より長持ちで助かります」と注目を集めている。これまで豆腐は、長期保存が難しい食品として認知されてきた。『あずきバー』やようかんといった菓子のイメージが強い同社だが、これまでのパブリックイメージを覆す豆腐商品を生み出した背景について、同社のSOY・DCカンパニー副カンパニー長の吉田さんに聞いた。

ハイレベルな殺菌技術や充填技術が必要、コストもかかり豆腐の賞味期間延長は簡単ではない

 井村屋といえば『あずきバー』やようかんやしるこ、あんまんといった商品を思い浮かべる人が多いだろう。同社では、『JiAi野菜ブイヨン』といった菓子以外の商品も取り扱っており、昨年12月に発売された『美し豆腐 LONG SHELF LIFE 180』が、注目を集めている。同商品は、独自製法によって、豆腐のおいしさをそのままに、冷蔵で賞味期間180日間という長期保存を実現。三重県産大豆のフクユタカとにがりのみを使用し、なめらかな食感と大豆本来の味が楽しめる。

「消費者のライフスタイルや食生活の変化が見られる環境下において、フードロス削減の観点から井村屋が以前より大切にしている『もったいない』の想いをもとに、それらのニーズに対応する商品として、独自製法からおいしさとロングライフを兼ね備えた商品を開発しました。豆腐の概念を180度変え、国内外に広く180度方位に販路を広げていく思いを込めて作った商品です」

 豆腐の概念を180度変えたという『美し豆腐 LONG SHELF LIFE 180』だが、他の商品とはどのような点で異なるのだろうか。

「豆腐の形態によって変わりますが、通常の市販されている豆腐の賞味期間は、目安として3日から20日です。『美し豆腐 LONG SHELF LIFE 180』は、そうした豆腐とは殺菌方法が異なります。ロングライフ化のために殺菌強度は上げつつも食感や風味、色調は劣化しない独自製法を開発しました」

 これまで長期保存可能な豆腐をあまり目にすることはなかった。実際に豆腐の賞味期間を伸ばすことは、難しいことなのだろうか。

「大きく2つの要因があります。1つは微生物の増殖による腐敗です。もう1つは風味や色調の劣化が、許容範囲であるということです。賞味期間は、これらを検証し設定されます。賞味期間を延ばすことは、こういった要因をクリアすることが必須となり、それにはハイレベルな殺菌技術や充填技術が必要で、当然コストもかかります。それら全てを調整し、初めて賞味期間延長に繋がります」

長期保存可能=過度な保存料や添加物ではない! 殺菌温度と時間、容器包材で長期保存が可能に

 同社は保存期間を長くするために、「殺菌工程で微生物を減らしつつも、風味が劣化しない温度と時間、容器包材を見つけ出すこと。そして殺菌設備やその方法を工夫しました」と言う。

 かねてより豆乳は、常温で長期保存可能な商品が販売されている。同じ大豆製品にも関わらず、豆腐は賞味期間が短いという印象もある。

「原料は豆乳ににがりを入れただけのため、豆乳とほぼ同様です。大きな違いは固体にすることであり、この固体の物性変化が、大きなポイントになっています。風味を大きく落とさず長期保存を可能にしたことです」

 とはいえ、賞味期間を伸ばすと聞けば、「保存料などの人工的なものが入っているのでは…」と思う人もいるだろう。近年は自然志向が強く、過敏に反応する人も少なくないが、どのように安全性を保っているのか気になるところだ。

「保存料や添加物で保存性を持たせているのではありません。殺菌の温度と時間、容器包材によって長期保存が可能となりました。また、商品の原料や材料はトレースが可能で、安全性の証明書も保持していますので、安心して食べていただけます」

 1896年の創業以来、『あずきバー』やようかんなどの小豆商品を中心とした和菓子のイメージが強くある井村屋だが、そうした小豆商品のノウハウを、どのように活かしたのだろうか。

「ようかんや『あずきバー』といった井村屋の菓子製造の殺菌・製造技術を活用し、豆腐製造技術をミックスさせたことで、今回の商品が完成に至りました。小豆も大豆も同じ豆類であるので、その加工ノウハウも活用しています」

 『美し豆腐 LONG SHELF LIFE 180』を始め、『JiAi野菜ブイヨン』や『大豆ミートまん』といった商品展開は、これまでのイメージの脱却とも受け取れるが、実は1972年から豆腐を販売している。菓子製造以外にも、さまざまな商品を展開している。

「『不易流行』の観念をもって、「おいしい!の笑顔」をお届けしつづける為に、お客さまが求める価値を提供していくことを目指しています。今後も多くの弊社商品の主原料である“小豆”の健康性をベースとした商品に注力し、弊社の特徴である多様性を活かした独創的な商品・サービズの提供を展開していきます」

豆腐のバイプロダクトとして総菜商品も検討 価値ある“副生産物”の販売も視野に

 同社の『大豆ミートまん』もそうだが、大豆や小豆といった豆を活かした商品への注目度が高まるなか、今後はどのような商品展開を考えているのだろうか。

「豆腐のロングライフ化は、当然ながら大豆を活用したロングライフ商品を考えています。また、豆腐のバイプロダクト(副産物)として、おからそのものやその総菜商品も検討しています。今後は、価値ある“副産物”としての販売も考えています」

 国連が定める持続可能な開発目標(SDGs)の取り組みとして、2030年までに食品ロスを半減させることが掲げられているなか、賞味期限切れによる廃棄物の削減やフードロスに対する関心が高まっている。そうしたなか、長期保存が可能となることで、豆腐を取り巻く環境も改善される。

「豆腐は賞味期間が短く、売れ残りは廃棄になります。豆腐以外もそうですが、多くの企業が作りすぎない努力や食べきりサイズ、賞味期間の延長等に尽力しています。当社の豆腐事業も賞味期間が長くなることで、売れ残り商品を削減し、フードロス問題を改善することに繋がると考えています。また、大豆価格の高騰を始めとする原料価格の推移についても、注視していきたいです」

 同社は、『美し豆腐 LONG SHELF LIFE 180』を始め、豆腐のバイプロダクトを通して市場の活性化や可能性を追求していくと言う。

「独自製法技術を活かし、おいしさとロングライフを両立した商品として、海外を含む販売ルート、開拓ターゲットに即して開発、展開していきます。『SDGs』12番目のゴールである“つくる責任つかう責任”の取り組みとして、家庭での買い置き需要として廃棄ロス削減、流通での食品ロス削減に貢献していきます」

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