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「悲劇的結末からハサウェイを救いたい」 モデラーが創造した“4機目”のユニコーンガンダム

小説版と劇場版、結末が異なるガンダムシリーズを背景に“希望のある話”を熟考

――ツイッターで発表された『ガンダム・ペガサス』が、1.3万いいねを獲得されました。本作はどのようなアイデアから、制作に至ったのですか?
トロンきっかけは、2年前に作った『ガンダム・ラプラス』という作品です。ア・バオア・クーで大破した『RX-78ガンダム』を、ユニコーンの予備パーツで改修したというオリジナル設定の機体です。その時にユニコーン3機の予備パーツを集めてひとつのユニコーンを作るアイデアを思いつきました。

――『4機目のユニコーンガンダム』が誕生する背景には、どういう物語をイメージして制作されたのでしょうか?
トロンそのアイデアが思いついた時に、『ユニコーン』『ナラティブ』『閃光のハサウェイ』の世界をつなぐ何かはできそうだと考えました。
 本作をこのタイミングで作るきっかけになったのは、昨年『劇場版 機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』を観たからなんですが、本当に鮮烈で。『逆襲のシャア』では迷惑千万だった男の子が、闇を抱えながらも素晴らしい青年になっていた。小説版は30年以上前の発売当初に読んで好きだったのですが、結末にかなりショックを受けていたので、今回映像として観たときに、小説と同じ結末はつらすぎると思いました。

――自分なりの結末をアナザーストーリーとして考えるきっかけになった。
トロンそうですね。富野由悠季監督も『新訳Zガンダム』で主人公の結末をはっきり変えています。また初代ガンダムも小説とアニメでは結末がだいぶ違っています。そういったことも背景にあります。
 もちろん、劇場版の『閃光のハサウェイ』が原作と同じ結末になるかはまだ分かりません。だた、ほぼ忠実に作られるとして、他に希望のある話があるかと考えたときに、『ナラティブ』で独自の活動をしていると思われるバナージ、ジンネマン隊なら何もしないはずはないと思えました。またカイ・シデンは、多くの作品で、表向きジャーナリスト、裏では諜報員的な活動をしています。彼がブライトのために動き、ハサウェイをペガサスまで導く役をしてくれそうだと思いました。あくまでハサウェイが、やり方に問題はあるものの民衆から支持されている、という点が重要なのですが。

SNSでたたかれるかも…蓋を開けたら、ハサウェイの最期に“救い”を求める声多数

――『ユニコーンガンダム』というと、白い1号機、黒い2号機、金色の3号機(本編未登場)の3機ですが、これらからどのようにアイデンティティを受け継ぎつつ、デザインやカラーリングに生かしていったのでしょうか?
トロンヒロイックで中立の立場である白いユニコーンガンダム1号機。Z以降の伝統でダークサイドに堕ちている黒い2号機バンシィ。『ナラティブ』では煌びやかで超越した存在であった3号機フェネクス。それぞれのキャラクターを考えながらパーツの配置を考えました。左から見ると神々しく、右から見ると悪魔的に見えるようにある程度のまとまりをもたせました。そもそも“テロリストを救う”という、決して正義とは言いがたい行為を行うことが前提なので、光と闇をあわせもつ存在として考えました。
 使用したキットは、『MGユニコーンガンダム3号機 フェネクス(ユニコーンVer)』と『MGユニコーンガンダム2号機 バンシィ・ノルン』です。

――特徴的なのは大きな羽ですが、これはどのようなアイデアからだったのですか?
トロン3体がまじりあっているだけでも十分面白そうだと思いましたが、重装甲、重武装以外の何かを模索していました。分かりやすく“馬”つながりで、神話に登場するペガサスをモチーフにしました。『UC』劇中でバナージの親友のタクヤがフルアーマー・ユニコーンガンダムを考案したことになってますが、彼ならこういうことは考えそうだと思いました。『ユニコーン』より後の『ナラティブ』でもバナージと行動を共にしていたこともヒントになってますね。あと、『UC』でラプラスの箱として登場する宇宙世紀憲章のシルエットとそっくりだったことが制作後に偶然分かったのが面白かったですね(笑)。

――既存のパーツを使うにしても、加工が大変そうですね。
トロンそうですね。形状、大きさ、方法を決める、可動をどうするのか構想で1ヵ月、制作でさらに1ヵ月くらいかかりました。ミノフスキークラフト、サイコフレーム、大気圏突入などができるユニットと考え、ユニコーンのデザインと馴染ませるためにアームドアーマーDEのパーツを利用することを思いつきました。多少パーツを切りましたが、あくまで設定としてもアームドアーマーを再構成したことにしたかったのでパーツ形状を生かし、足りないところはプラ板で補いました。

――その苦労も実り、SNSでは賞賛の声がたくさん届きました。
トロン実は当初、どちらかというと原作を大事に思っている方から叩かれるかもと思ってました。でもそういった反応はほぼなく、「映像が脳内で再生される」「アニメとしてペガサスが動いている」という方が多くて、とてもうれしかったですね。

――ガンダムを愛する人たちは、本編だけでなく、ファンたちが新たなに創作する世界観も、お互いに認め、称え、それを刺激にまた多彩なガンプラ作品が生まれ、SNS上で盛り上がっているような気がします。本作を作り終えて、あらためて、何か思うところはありますか?
トロン僕個人もそうですが、劇場版の『閃光のハサウェイ』の最期について、小説のままではなく、救いのある形を望んでいる人が多い気がしました。その雰囲気をプラモデルという形にしたことが、多くの人が共感してくれた理由だと思います。
 本作のように、自分が作る作品は、小説やアニメの設定やストーリーをもちろん大事にしますが、ファンアートとしての味付け、こういうストーリーもあるかも、こういう機体ならあり得たかもという遊びを取り入れるようにしています。これからも、こういった作品を作り続けていきたいと思います。

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