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冷凍食品の概念を覆す「“レンチン”冷やし中華」の可能性、開発者に聞く“未来の食品”への責務
なぜいま冷やし中華? 開発の裏に“逆転の発想”と社会構造の変化
開発のきっかけには、冷凍食品の課題を逆手に取った“逆転の発想”があったという。「これまで我々が注力してきたのは、出来立て・作り立ての美味しさを閉じ込めた冷凍食品を、レンジ調理でいかに再現できるか。そこには“加熱ムラ”という問題が常に立ちふさがっています。では逆に、その“加熱ムラ”を何かに応用できないか、商品に落とし込めないかと考えたのが始まりでした」(蟹沢氏)
「そこで目をつけたのが、冷やし中華だった」と話すのは、同部商品グループリーダーの城戸俊治氏。「夏場、コンビニエンスストアやスーパーには、チルドの冷やし中華がズラリと並んでいます。でも、冷凍食品売場には、ぽっかり穴が空いていたんです。奇をてらうのではなく、メジャーメニューで勝負するならこれしかない。また“個食”(一人前規格の食事)としても適していると考え、開発が始まりました」(城戸氏)
この考えに至った背景には、社会構造の変化がある。日本は現在、従来からの女性や高齢者の就業率の高まりと同時に、世帯の少人数化や単身世帯の増加が進行している。そこへ来てコロナ禍に見舞われたことで、自宅での喫食機会が増えたことにより、パーソナルユースの需要がさらに高まっている。「夏に自宅で冷たい冷やし中華を食べたい人は多いと思いますが、麺を茹で、それを冷やし、具材を切る…などの面倒くさい工程がります。そもそも、夏場はなるべく火を使いたくないでしょう。これらを考えた時、我々の新技術でその手間や不満を解消できると考えたのです」(城戸氏)
構想5年、具現化までに3年…一筋縄ではいかなかった開発
開発当初はコンビニやスーパー、また外食の冷やし中華を食べ集め、皆で良さと課題をひたすら研究。ニチレイフーズとしてはどこを目指せばいいのか、何が求められているのかを模索した。だが、それこそコンビニでも人気商品であるチルドの冷やし中華に負けない、勝算はあるのだろうか?
「冷凍食品が圧倒的優位であることの一つに、麺の食感が良いことがあります。もちろん茹でたてが一番ですが、そこに最も近しい食感を出せるのが、冷凍であることのメリットなんです。チルドはどうしても、茹でてからの時間が長くなり、食べる際には茹でたてのコシが失われていきます。また、麺もくっつきやすくなりほぐす作業が必要になります。これまでは“それは仕方ない”とあきらめていたと思いますが、冷凍食品であれば解決できると考えたのです」(城戸氏)